聴いてきた限りでですが、このコロナ禍の中、穏やか目だったり、
原点回帰風な作風の新作が多い感じがする中で、カントリー界の
超エンターテイナー、キース・アーバンが、このコロナ・ウィル
スを吹き飛ばさんとするかのような、勢いとポップ感に溢れた新
作「ザ・スピード・オブ・ナウ・パート 1」(日本盤も有)をリ
リースしてくれました。落着きはらったキースなど想像できませ
んしね。現在ヒット中の"One Too Many"では、なかなかアクの強
いポップ・スター、ピンクをゲストに迎えたり、オープニングの
"Out the Cage"ではナイル・ロジャースの名前もあったりで、話
題性にもぬかりは有りません。
そのオープニングの"Out the Cage"は高速なダンス・ナンバー、
バンジョーとリズム・ループのミックスは、これぞキース・アー
バン・サウンドという感じです。 "Tumbleweed"もイントロのバ
ンジョーがアクセントとなる同系統のギター・ポップで、50才を
超える年齢を感じさせません。さしずめ、既にシングル・カット
済の”Superman”を地で行ってるよう。歌詞の方は、゛君と一緒
だったころ、僕はスーパーマンだったのに゛てな感じなのですが
ね。
前作「Graffiti U」に比べると、本作は明らかにギターがサウンド
のキモになっていると感じます。それにしても、”Superman”のイ
ントロで聴かれる゛キュイン、キュイン(?)゛いう音、サム・
ハントの"Kinfolks"や、ケイン・ブラウンの"Cool Again"などでも
似た音が聴かれましたが、今流のカントリーらしさを出すトワン
ギー・サウンドなのでしょうか・・・ あと、一見地味ですが、サン
プリングによると思しきアコギのアルペジオがデジタルな響きを
醸す"Polaroid"が新鮮です。
ただ、全体を眺めると、アップテンポよりもミディアム、メロデ
ィアスだったりR&B風なナンバーに気を引くものが多いです。
ピンクとの共作"One Too Many"もその系統の、なかなか聴かせる
曲。とにかく、キースの声に感じるスムーズなソウルネスがこの
アルバムの聴きどころではないかと感じました。ファルセット・
ボーカルがキーになる"Say Something"や、先行シングルだった
"God Whispered Your Name”あたり、ソウル風の極みです。個人
的には ”Ain't It Like a Woman”が特にお気に入りです。
やはりどうしてもこの手は熱くなってしまうブルース・ロック調の
"Forever"。かつてのブリティッシュ・ロック好きがハマってしま
うタイプの曲でしょうかね。ここらオーストラリア出身のキース
ならではです。そういえばこんな感じの曲を以前やってなかった
かな、と思い返してみたら、2010年リリースの「Get Closer」の
"Georgia Woods"が良く似たイメージの曲でした。次の「Fuse」
で大幅にサンプリングを取り入れる前のアルバムだったのですが、
そう考えると、この「The Speed of Now, Vol. 1」は、キースなり
の原点回帰、「Graffiti U」などで見せていたヒップ・ホップ路線
からの揺り戻し的な意味合いがあるのではと思えてきました。
るキース。新しいヒーローを期待したいけど、キースの華やかさ
やパワーに敵う人はなかなかいなくて、まだまだ影響力強そうだ
と思いますね。
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