ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

現代カントリー・ミュージックのアルバム・レビューや、カントリー歌手の参考になりそうな情報を紹介しています

Keith Urban キース・アーバン - Graffiti U

2019-02-06 | Keith Urban キース・アーバン レビューまとめ

2018年のCMAアワードで、13年ぶりに最高の栄誉であるエンター
テイナー賞を受賞したキース・アーバンの、その受賞をアシストした
9作目です。いわゆる”保守的”と言われるメインストリーム・カン
トリー界において、自身のギター・プレイを武器に、常に一歩先を行
くクロスオーバー・サウンドを取り入れ続けて来た人というイメージ
です。

近年も、2013年の「Fuse」アタリから率先してサンプリング、プログ
ラミングの類を導入してきてましたが、「Ripcord」を経て、さらに
その比率を拡大、ほぼほぼEDM(エレクトロニック・ダンス・ミュ
ージック)集と言えるくらいの作風になってます。ただ、そこはカン
トリー、音の手触りはマイルドです。

それに、カントリーの伝統へのオマージュも隠し味的に織り込まれて
いて、まずはシングルにもなったオープニング曲"Coming Home"。全編
にわたって背後で響くトゥワンギーなギターの下降フレーズや、かす
かに右に聴こえるアコギのアルペジオ、実はマール・ハガードの名曲
"Mama Tried"のイントロのサンプリングなのです。また、レイドバッ
ク気味のミディアム"Texas Time"は、こちらも今は亡きレジェンド、
ドン・ウィリアムスのクロスオーバー・ヒット"Tulsa Time"(クラプト
ンでも有名)をベースにしてるそう。トークボックスが効いたギターが
いかにも70年代です。ただ、いずれも芸が細かくて、教えてもらわなけ
れば気づかなかったですが。。。



ゲスト陣も多彩で、"Coming Home"では、リオ・オリンピックの閉会
式で、EDMアーティストKygoと"Carry Me"で共演したジュリア・
マイケルズ Julia Michaelsのクールな歌声をフィーチャしてます。
あとはラッパーのShy Carterが"My Wave"でラップを披露。カントリ
ー・アーティストでは、若手女性のKassi Ashton("Drop Top")、
Lindsay Ell("Horses")を招いてます。

2019年のグラミー賞でノミネートされたスロー曲"Parallel Line"が
わりと以前からのキースらしいロマンチックなバラードと思います。
実はこれも仕掛けが有り、イギリスのロック・バンド、コールドプレ
イの"Everglow"をサンプリング。だから、ソングライターがバンド・
メンバーも含めて11人にもなってます。



以上、話題性が満載のアルバムですが、カントリー・チャートでは
既にトップ50から姿を消してしまったようです。「Ripcord」が
再チャートインしてる始末(ビルボード1/26時点)。カントリー・
ファンには、合わなかったったんでしょうかね。私も積極的に聴く
タイプの音楽ではないですが、シングルになった"Coming Home"や
"Never Comin Down"は、ライブでカッコイイだろうなと思います。
カントリー・アーティスト、キース・アーバンの目指す新たな音楽、
と捉えましょう。




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