ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

現代カントリー・ミュージックのアルバム・レビューや、カントリー歌手の参考になりそうな情報を紹介しています

The Band Perry バンド・ペリー - Pioneer

2013-04-23 | カントリー(女性)
 2010年のデビューアルバム「The Band Perry」からの珠玉のカントリー・バラード"If I Die Young"で大ブレイク。2011年CMAアワードでは、堂々New Artist of the Yearをゲットし、カントリー・フィールドで一定の地位を築いた、Perry家姉弟3人組です。その軽やかなポップセンスに裏打ちされたオーガニックなサウンドは、我が国の洋楽リスナーにもかなり注目されたよう。そんな彼らの3年ぶりの、まさに待望のセカンド・アルバムです。その音楽の変化は一”聴”瞭然。サウンドはヘヴィーなギターがふんだんにフィーチャーされた、アリーナを想定したパワーサウンドにスケール・アップしているのが注目でしょう。タイトルどおり、時代の”パイオニア”として先頭を切り開こうとすうる、彼らの若々しいパッションがパッケージされた意欲作です。


 このサウンドの変化は、カントリー界のヒット・メイカーであるプロデューサー、ダン・ハフによってもたらされたもの。リード・シングルでオープニングを飾る、強力な"Better Dig Two"のパワー・サウンドで、バンド・ペリー・サウンドの新たな方向性が早速打ち出されます。バンジョーのイントロに導かれ、クラシカルな伝承歌(バラッド)のような雰囲気をプンプンさせておいて、コーラス部でシンセを隠し味にしたヘビーなビートを展開。そしてなによりキンバリー・ペリーKimberly Perry のエモーショナルなボーカルが素晴らしい。この新旧サウンドと曲想を的確に織り交ぜた画期的な音楽は、ずばり!リトル・ビッグ・タウンの"Tornado"の影響大ですね。続くセカンド・シングル”DONE."はアップビートでダンサブルな失恋ソング。ヒネリの効いた前曲とは好対照にストレートね。聴き手をグイグイと引っぱる勢いに満ちています。

 どこかで聞いたことのある、オペラ風コーラスの響きで幕を開ける"Forever Mine Nevermind"。これ、あのクイーンのゴージャスなコーラス・サウンドのパロディですね。途中、ブライアン・メイ的ギター・フレーズも飛び出しニンマリ。ライブで盛り上がること間違いなしのユニークでファンなナンバーです。"Night Gone Wasted"は、キャッチーなギター・リックが曲のポイントとなるシャッフル・チューン。デビュー・アルバムでも感じられたメロディックなポップ・センスをアリーナ・サウンドとブレンドしたって感じかな。


 ハンク・ウィリアムスの名曲と同名の”I Saw The Light"は、運命の人との出会いをスピリチュアルな神の啓示になぞらえたミディアム曲。オープニングはアコースティックなカントリー・スタイルで始まり、コーラス部分からギター・サウンドで盛り上げるという、このアルバムで多く使われているスタイルの1曲。途中ブリッジ部での3人のコーラスが、まさに啓示的な厳かさに溢れていて、この曲のハイライトになっています。

 そして、タイトル曲"Pioneer"。ここでも曲はアコースティックなバラード・スタイルで始まり、歌い手は第三者にささやきかけるようにこう歌います。”パイオニアよ/貴方の使命は困難なものだわ/でも、私達全ての未来は、貴方のその肩にかかっているのよ”しかし、バンドが入りサウンドが自信たっぷりに盛り上がる頃には、そのパイオニアは自分自身だと歌うのです。”私は弾丸が追いかけてこようとも逃げないわ/皆が私を嫌っても、私は皆を愛する/私は黙らないし、貴方達にも黙らせる事はできないでしょう/貴方達が私を変えようとしても、けして私は変わらない/私達は何処に向かうの?/私にはわからない/でも私は進まなきゃならない/私達はどこへいくの?/そんなこと気にしない/私にわかるのは、私はどこかにいくのだろうと言う事だけ/パイオニア”多くの聴き手に挑戦する勇気を与えると同時に、バンド・ペリー自身の今後の活動に対する決意表明と言える、感動的なナンバーです。


 このアルバム、つまるところ何が聴きどころかというと、もうキンバリー・ペリーの歌声に尽きるのだと思います。ハスキーで、ブルージーなテイストもチョッピり感じる唯一無二の声。ココで聴かれる彼女のシンガーとしての成長、とてつもなく広いレンジ~切々と歌う情感からソウルフルで飛躍するようなエナジーまで~の表現力は、実力派ぞろいのカントリー・フィールドにあってトップ・レベルの歌唱力を持つ事を強く感じさせるのです。だからこそ、このアルバムで多く展開されるアコースティックとパワー・サウンドがミックスした楽曲群がモノに出来た。キンバリーが大物シンガーとしての第一歩を踏み出し始めた作品と言えます。その一方で、センチメンタルで感傷的な"If I Die Young"のようなスタイルが聴けなくなったのは残念でもありますが、成長の結果として前向きに受け止めるべきなのでしょう。


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