ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

現代カントリー・ミュージックのアルバム・レビューや、カントリー歌手の参考になりそうな情報を紹介しています

James Otto (ジェームス・オットー) 「Sunset Man」

2008-07-13 | カントリー(男性)
 リード・シングル"Just Got Started Lovin' You"がカントリー・チャートの1位を獲得し、遂にブレイクしたJames Otto。彼としては2枚目。Big & Richを中心としGretchen Wilsonも所属している事で有名で、チョッとハード・エッジなナッシュビルのセッション・チーム、MuzikMafiaに名を連ねているシンガー・ソングライターです。ルックスはご覧のとおり、MuzikMafia一派らしく長髪、髭面でなんとなく荒くれ者風でサウンドを・・・・と思いきや、案外プリミティブなカントリー・ロックやメロウで洗練度の高いスローがバランス良く配されており、抑制の効いたダウンホーム・ミュージック集になっています。

 

 さすがにオープニングはご挨拶として、ハードなギター・コードがフィーチャーされるロック曲"Ain't Gonna Stop"で軽く景気づけ。そのギター・サウンドはしかし軽く爽快です。そして続くシングル"Just Got Started Lovin' You"で早速ペース・ダウンしミディアムに。フィドルやスティールもフィーチャーされたサウンドも含めて、けして派手な曲ではないと思うのですが、Jamesの適度にネットリ感のあるソウルフル・ボイスによるクールな歌唱が、なかなかに味があり耳に残ります。これが1位になったと言うのは、ヒット・チャートも侮れないな。私のお気に入りが、ビートの効いた"These Are the Good Ole Days"。これいいですね。リード・ギターが滑らかに紡ぎ出す、とてもソウルフルなギター・リックとミディアム・テンポと絡み合いが何とも言えず見事で、体が自然に動いてしまいます。Jamesもよりエモーショナルに高揚しますが、けしてハメを外さないその包容力のある声は魅力的。タイトル曲"Sunset Man"もハイライト・チューン。ここでの注目は、マンドリンもフィーチャーした、アコースティック色強いトラディショナル・カントリー・サウンドで、素晴らしいです。Jamesが、けして勢いだけのロッカーなどではなく、正統カントリーを理解し愛しているアーティストである事が、ここからは伝わってきます。

 穏やかな手触りのスロー・ナンバーの逸品も幾つか配されていて、メロウでモダンな"For You"や"Where Angels Hang Around"を情熱こめてこなす一方、オーガニックなカントリー・バラード"Dawn Right"がドラマティックで耳を引きます。ここでも、後半で燃え盛るJamesのソウル系の歌声は感動的です。ラストの"The Man That I Am"では、打ち込みリズムがフィーチャーされ、彼がやはり先進性を志向するアーティストである事をさり気なく主張して、アルバムは幕を閉じます。

 

 サザンロック気質溢れる彼は、ワシントンの軍事基地で生まれた軍人家族の息子。その後はアメリカ全土を転々として育ちました。早熟で4歳で歌い始め、ギターを弾く13歳以前にすでにフィドルとサックスを始めていました。父や祖父は、パートのミュージシャンもこなしていたので音楽には当然のように親しんでいましたが、カントリーに目覚めたのは母親の影響です。高校卒業後2年間、海軍での兵役を果たした後、1998年にナッシュビルに。クラブで多くのソングライター達と交流した後、MuzikMafiaに参加。その甲斐あって、2002年にマーキュリーから「Days of Our Lives」によってアルバム・デビューにこぎ付けますが、2004年には切られてしまいます。しかししぶとくメジャーのワーナーとの契約を獲得、従兄弟でラスカル・フラッツのメンバーJay DeMarcusのプロデュースを得た今作でたくましく復活したのです。

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