その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

W.シェイクスピア/演出:鵜山 仁「終わりよければすべてよし」 @新国立劇場中劇場

2023-11-26 07:28:22 | ミュージカル、演劇

 (もう1月前の記録です。アップし忘れて、公演期間も終了してますが・・・)

「尺には尺を」に続けて、「終わりよければすべてよし」を観劇。

この2作品、ともにシェイクスピアの中でも単純なハッピーエンドでは終わらないダークコメディである点、女性が主人公である点、男性とベッドをともにする女性が入れ替わるというベッドトリックを使っている点など、共通点が多い。今回の企画は、それを交互に演じることで、類似性と相違性があぶりだし、作品理解を深めようとするもの。かなり凝っている。

前日に「尺には尺を」を演じた役者さんたちが、全く違う役柄で、違う芝居をやっている。そのキャパシティ/ケイパビリティ、切り替えにプロフェッショナルを感じ、驚嘆した。

キャスティングは前日の「尺」よりも、この日の「終わり」の方が、よりピッタリはまっていて、舞台がとっても安定しているように感じられた(前日が不安定だったわけではなく、相対的な話である)。主人公ともいえるヘレナを演じる中嶋朋子はさすがのベテラン。猪突猛進、思い込んだら一途に行動するヘレナを好演。若き処女の役柄との年齢差も感じさせず、自然で違和感ない。大したものだと感心した。

個人的には、軽薄男ぺーローレスを演じた亀田佳明も笑わせてもらった。こういう奴って、いる・いる。また、シェイクスピア劇のどの作品でも重要な「道化」であるラヴァッチを吉村直が軽妙に演じていたのも印象的だった。全体的に舞台を落ち着いて感じさせてくれたのは、フランス王の岡本健一、ラフューの立川三貴、ルシヨン伯爵夫人の那須佐代子らも堅実な立ち回りによるところも大きいだろう。

舞台造形は、舞台前方の草や池は「尺」とそのまま同じものが使われていたようだ。舞台中央には、大きなテントのような幕が吊られ、幕の形の変化や照明で、場の設定替えや舞台効果が演出される。舞台に集中出来る必要十分な演出で好感度高い。

「尺」と同じダークコメディなのだが、「終わり」は「尺」に比較すると「ダーク」度は薄い。戯曲を読んで不思議ちゃんと感じたヘレナも思いを遂げて結婚でき、この結婚相手が、正直、男としてどうかよと思うバートラムではあるものの、本願成就である。この結婚がうまくいくかどうかはわからないが、「尺」が罰としてのアンジェロとマリアナの結婚や謎の侯爵からイザベラへの求婚で終わったのと比較すると、後味もずっと軽やかだ。

この2作品、とっても良かったので、できれば期間中にもう一度観てみたい。

10月19日(木)



2023/2024シーズン
シェイクスピア、ダークコメディ交互上演

尺には尺を
Measure for Measure

終わりよければすべてよし
All's Well That Ends Well

公演期間:2023年10月18日[水]~11月19日[日]

予定上演時間:
『尺には尺を』約2時間55分(第1幕95分 休憩20分 第2幕60分)
『終わりよければすべてよし』約3時間10分(第1幕85分 休憩20分 第2幕85分)

Staff&Castスタッフ・キャスト

スタッフ
【作】ウィリアム・シェイクスピア
【翻訳】小田島雄志
【演出】鵜山 仁
【美術】乘峯雅寛
【照明】服部 基
【音響】上田好生
【衣裳】前田文子
【ヘアメイク】馮 啓孝
【演出助手】中嶋彩乃
【舞台監督】北条 孝

キャスト (役名:『尺には尺を』(左)/『終わりよければすべてよし』(右))
岡本健一:アンジェロ/フランス王
浦井健治:クローディオ/バートラム
中嶋朋子:マリアナ/ヘレナ
ソニン:イザベラ/ダイアナ 
立川三貴:典獄/ラフュー
吉村 直:バーナーダイン/紳士1、ラヴァッチ
木下浩之:ヴィンセンシオ/フィレンツェ公爵
那須佐代子:オーヴァーダン/ルシヨン伯爵夫人
勝部演之:判事/リナルドー
小長谷勝彦:ポンピー/兵士2
下総源太朗:エスカラス/デュメーン兄 
藤木久美子:フランシスカ/キャピレット
川辺邦弘:エルボー・紳士2/兵士1
亀田佳明:フロス・アブホーソン/ぺーローレス
永田江里:ジュリエット/マリアナ
内藤裕志:ピーター/紳士
須藤瑞己:召使い/従者
福士永大:使者/小姓
宮津侑生:ルーシオ/デュメーン弟 

 

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作:W.シェイクスピア/演出:鵜山 仁「尺には尺を」 @新国立劇場中劇場

2023-11-01 07:30:01 | ミュージカル、演劇

新国立劇場演劇部門の23-24シーズン幕開け公演。シェイクスピアの問題劇と言われる、「尺には尺を」と「終わりよければすべてよし」の交互上演という意欲的な取り組みだ。

まずは、「尺には尺を」を初日に観る。

事前に松岡和子訳に駆け足で目を通したので、大まかな筋は把握していたものの、観劇を通じてますますこの作品の奥深さが感じられた。強制的に結婚させられる幸せとは言えそうにない2組のカップル、最高権力者による突然の求婚による結末。劇中の各登場人物の科白にみる人間性や思想に加えて、謎めいた結末が意味するものは何なのか。戯曲を読んで感じた自分の疑問符が解けたところもあった一方で、ますます疑問が増えていく。そんな思いだった。

作品の難しさ、奥深さはこれからのお勉強課題にしておくとして、芝居としては実力派スタッフとキャストによる完成度高い上演だった。役者の中では、ソンミが演じる主人公イザベラの健気で一途な女性像が印象的だった。あらゆる男性からモテモテのイザベラであるが、修道女見習いとしての自説を能弁に語る姿は凛としていて魅かれる。ラストで、伯爵に突然の求婚をされ、戸惑いながら、伯爵と一緒に舞台を立ち去る姿はなんともユーモラス。観衆に笑いとともに、「イザベラ、これで良いんだっけ?」との疑問も生じさせる。戯曲のイメージともぴったりで、はまり役だと感じた。

原作で私が「男ならありうるよね」と感じたアンジェロの岡本健一も好演。権力をかさにイザベラの操を求める姿は想像以上に「最低の」男であったが、その悩める姿は味があった。

舞台に活気を与えていたのは、これまた口から生まれたようなチャラ男ルーチオを演じた宮津侑生。軽薄でお調子者なこの脇役を宮津侑生が生き生きと演じていた。

演出は大道具は刑務所や城門として使われる壁一つでシンプルだが、場を理解し、想像するのには十二分。照明も効果的だった。

「終わりよければすべて良し」への期待感が高まった初日だった。

 

2023/2024シーズン
シェイクスピア、ダークコメディ交互上演

尺には尺を
Measure for Measure

終わりよければすべてよし
All's Well That Ends Well

公演期間:2023年10月18日[水]~11月19日[日]

予定上演時間:
『尺には尺を』約2時間55分(第1幕95分 休憩20分 第2幕60分)
『終わりよければすべてよし』約3時間10分(第1幕85分 休憩20分 第2幕85分)

Staff&Castスタッフ・キャスト

スタッフ
【作】ウィリアム・シェイクスピア
【翻訳】小田島雄志
【演出】鵜山 仁
【美術】乘峯雅寛
【照明】服部 基
【音響】上田好生
【衣裳】前田文子
【ヘアメイク】馮 啓孝
【演出助手】中嶋彩乃
【舞台監督】北条 孝

キャスト (役名:『尺には尺を』(左)/『終わりよければすべてよし』(右))
岡本健一:アンジェロ/フランス王
浦井健治:クローディオ/バートラム
中嶋朋子:マリアナ/ヘレナ
ソニン:イザベラ/ダイアナ 
立川三貴:典獄/ラフュー
吉村 直:バーナーダイン/紳士1、ラヴァッチ
木下浩之:ヴィンセンシオ/フィレンツェ公爵
那須佐代子:オーヴァーダン/ルシヨン伯爵夫人
勝部演之:判事/リナルドー
小長谷勝彦:ポンピー/兵士2
下総源太朗:エスカラス/デュメーン兄 
藤木久美子:フランシスカ/キャピレット
川辺邦弘:エルボー・紳士2/兵士1
亀田佳明:フロス・アブホーソン/ぺーローレス
永田江里:ジュリエット/マリアナ
内藤裕志:ピーター/紳士
須藤瑞己:召使い/従者
福士永大:使者/小姓
宮津侑生:ルーシオ/デュメーン弟 

 

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ロンドン・デリー公演 「アンダーグラウンド」 @せんがわ劇場

2023-08-07 07:24:26 | ミュージカル、演劇

友人が出演したので応援観劇。

1991年に設立されたというロンドンデリーという劇団。ホームページはここ数年更新が無く、どうも休眠状態にあったようで、久しぶりの公演のようである。会場のせんがわ劇場には、初めて訪れたが、駅チカで、設備もシンプルだが綺麗。収容108名の小劇場で好印象。

芝居は、暴力団が看板を書き換え「企画会社」となって、そこに勤める元暴力団員たちとその周辺の人たちが織りなす地下社会(アンダーグラウンド)の人間ドラマ。社会系でもあり、人情系でもあるが、最後は悲劇である。主要テーマが絞りにくいが、テンポよく話が流れていくので、1時間45分の公演時間も長さを感じない。

役者さんも熱演で、特に主役のサブローを演じる津本泰雅さんと「社長」の連城力丸さんが緊張感ある演技で、舞台の中心軸がしっかりしていた。

役者の息遣いまで聞こえる小劇場は、その臨場感の魅力が素晴らしい。コロナ以降、下北沢の小劇場には脚が遠のいているので、機会を見つけて行ってみよう。

2023年7月21日

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今ここにある自分の差別意識は?:青年団 第94回公演『ソウル市民』(作・演出:平田オリザ)@こまばアゴラ劇場

2023-04-28 12:10:15 | ミュージカル、演劇

私としては2016年以来7年ぶりの青年団公演の観劇です。作品そのものは1989年初演ということなので30年以上前のものの再演。

1909年のソウルでの日本人商家のダイニングルームが舞台。「自由主義的な」篠崎家の面々、使用人、書生、訪問客の会話を通じて、植民地における支配する側の一般市民の差別意識が炙り出されます。

今となっては、この舞台で描かれるような、無意識なんだけど露骨な人種差別というのは少なくなっている気がします。むしろ、ヘイトスピーチのように正々堂々と表に出た形で攻撃的になっていたり、差別も姿や形を変えて複雑化し分かりにくくなるなど、二極化していると感じます。なので、「(初演の)1989年だと、こうした表現になるのかな」と初演時からの時間を感じるところがありました。(元森首相の性差別発言が家庭内に普通に飛び交っている印象で、今なら無意識/意識関係なく即OUTだよねという感じです)

一方で、本作品を通じて、自分が持つ認識・認知の世界観の限界、その外の世界からみた自分の差別って何だろうと考えさせられます。

小さな小劇場の最前列で観れたので、役者さんの息遣いまでわかる距離です。再演を重ねている舞台だからでしょうか。出演者は再演ごとに変わっているようですが、演技や動きが洗練されていたのが印象的でした。もう10年近く前になりますが、とあるワークショップでサポート頂いた石松さん(高井書生役)と立蔵さん(手品師の助手役)が出演されていて、はつらつとした演技をされていたのを拝見できたのも嬉しかったです。

平田オリザさんの演劇は、現代口語演劇として普通の日常を淡々と描くものをいくつか見てきました。私にとってはいつも不思議な気分になる舞台です。日常を描いているのだが、日常であるが故にドラマ性は高くなく、「演劇としては非日常」という落ち着かなさなとでも言うのでしょうか。今回も、その不思議さをたっぷり味わいました。

 

青年団第94回公演
『ソウル市民』
作・演出:平田オリザ

2023年4月7日(金)- 4月27日(木)

会場:こまばアゴラ劇場

出演      
永井秀樹 天明留理子 木崎友紀子 太田 宏 田原礼子 立蔵葉子 森内美由紀
木引優子 石松太一 森岡 望 尾﨑宇内 新田佑梨 中藤 奨 藤瀬のりこ 吉田 庸
名古屋 愛 南風盛もえ 伊藤 拓

スタッフ             
舞台美術:杉山 至
舞台美術アシスタント:濱崎賢二
舞台監督:中西隆雄 三津田なつみ
照明:三嶋聖子
衣裳:正金 彩 
衣裳製作:中原明子
衣裳アシスタント:陳 彦君
宣伝美術:工藤規雄+渡辺佳奈子 太田裕子
宣伝写真:佐藤孝仁
宣伝美術スタイリスト:山口友里
制作:太田久美子 込江 芳
協力:(株)アレス

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個性溢れる役者陣による和洋折衷「ハムレット」(作:W.シェイクスピア、翻訳:河合祥一郎、構成・演出:野村萬斎)

2023-03-19 07:42:07 | ミュージカル、演劇

2月、3月で3本のシェイクピア劇(1つは翻案ものですが)を見るという幸運に恵まれました。夫々個性豊かで質の高い公演でしたが、今回の「ハムレット」は、個性あふれるベテラン・若手役者陣の競演、かつ和洋折衷テイストが楽しめる、特に素晴らしいものでした。個人的にはここ数年のシェイクスピア観劇の中でも有数の公演です。

まず、役者さん達が素晴らしい。題名役の野村裕基さん(萬斎の実子)は初舞台と言うことで、構成・演出・出演する萬斎パパの「コネ」配役ではないかと多少の不安がありました。多少のせりふ回しの硬さは感じられましたが、流石、狂言役者です。佇まいが美しく、動きに無駄がないです。若さ一杯の演技も貴公子ハムレットに相応しい。「コネ」などと私が思ったのもおかしな話で、世襲制の日本の古典芸能の世界ではあって当たり前の世界なのですね。演技に不満があるならまだしも、むしろ初舞台に相応しい気持ちの入った演技が爽快で楽しませてもらいました。

若手で言うと、オフィーリアを演じた藤間爽子さんも印象的でした。NHKの朝ドラにも出演経験があるようなのですが、芸能界に疎い私はお名前からして全くの初めて。蒼井優さんと黒木華さんのイメージを併せ持ったような印象の方で、この方の佇まいもオーラが漂っていました。演技もオフィーリアの可憐さ、純真さがよく表れていて、素晴らしいと感嘆しました。公演後に知ったのですが、なんとこの若さで日本舞踊の家元さんでもあるのですね。ファンになりそうです。

ハムレットの無二の親友ホレイシオ役の釆澤靖起、オーフェリアの兄アーティーズ役の岡本圭人も存在感がしっかり印象に残る演技っぷりでした。

そして、舞台全体を低い重心で安定させるベテラン陣もお見事でした。ハムレットの敵である叔父クロ―ディアスと父の二役を演じた野村萬斎さん、母ガートルードを演じる若村真由美さんの夫婦は貫禄たっぷり。更に、オファーリアの父で宰相ポローニアスと墓堀り役の村田雄浩さんなどは味は流石です。

更に、「地球座」の座長役として河原崎國太郎さんが演じる劇中劇の場面は、歌舞伎と文楽が併せ持ったようなスタイルで目が離せませんでした。オペラの中にバレエが差し込まれるフランスもののグランドオペラのよう。

野村萬斎氏の演出も美しく、効果的でした。宇宙的な広がりや視点を感じさせる舞台装置や、舞台を二段にして空間を最大限に活用するなど、膨らみが出て効果的です。ハムレット父の能面を被った落ち武者のような風体の亡霊、女性陣の東アジア的な衣装、劇中劇やせりふ回しに時折感じる歌舞伎や文楽などの要素などから和テイストも感じます。和洋折衷の舞台は違和感どころか、「ハムレット」のユニバーサル性・グローバル性を感じさせるものです。

18時半に始まって、終演が22時を回る(途中20分休憩あり)でしたが、全く長さを感じない強烈な磁力を持った公演でした。世田谷パブリックシアターの大ホールは初めてでしたが、(うろ覚えですが)シェイクスピアの故郷ストラットフォード・アポン・エイボンのグローブ座につくりが似てる感じがいいですね。最近訪れた埼玉会館や神奈川芸術劇場と比べてもこじんまりとしていて、舞台と観衆の距離が非常に近いのも集中力が途切れなかった一因だったと思います。

 

2023年3月6日~3月19日
世田谷パブリックシアター

スタッフ/キャスト
【作】W.シェイクスピア
【翻訳】河合祥一郎
【構成・演出】野村萬斎

【出演】
野村裕基/岡本圭人/藤間爽子
釆澤靖起 松浦海之介 森永友基 月崎晴夫
神保良介 浦野真介 遠山悠介
村田雄浩/河原崎國太郎/若村麻由美/野村萬斎

【美術】松井るみ
【照明】北澤真
【音楽】藤原道山
【音響】尾崎弘征 
【衣裳】半田悦子 
【ヘアメイク】川口博史
【アクション】渥美博 
【演出助手】日置浩輔
【舞台監督】澁谷壽久
【技術監督】熊谷明人
【プロダクションマネージャー】勝康隆
【制作】若山宏太 
【プロデューサー】浅田聡子 

【世田谷パブリックシアター芸術監督】白井晃

コメント (2)
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KAAT神奈川芸術劇場プロデュース「蜘蛛巣城」(演出 赤堀雅秋)

2023-03-08 07:30:49 | ミュージカル、演劇

元ネタの「マクベス」や黒澤「蜘蛛巣城」をイメージして出かけたら、印象は大きく違うものでした。

マクベスが変を起こしたのは何歳の時だったのだろうか?三船敏郎が演じた鷲津武時は何歳の設定だったのだろうか?早乙女太一さん、倉科カナさんが演じたのは、若くてナイーブな、私には新しい義時(マクベス)、浅茅(マクベス夫人)でした。二人の主人公がより身近に、戦国時代が現代に感じられます。最初は違和感を拭えなかったのですが、違和感は旧来のイメージに囚われているからということに気づきました。新しい見方を教わった感覚です。

芸能界に疎い私は、倉科カナさんはNHKのドラマ「正直不動産」で初めて知ったのですが、熱演でした。

雑兵たちや農民を被支配者層、武士を支配者層として対比し、社会の階層構造や人間の欲・幸せをあぶりだすのも、従来作品にはなかった視点です。戦争が身近なものとなっている昨今の世界情勢で、彼らの台詞は現実味を持って刺さります。

有名なマクベスのTomorrow Speech(第5幕5場で、有名な名言「人生は歩く影法師。哀れな役者だ」に繋がっていく"Tomorrow, and tomorrow, and tomorrow,"で始まる台詞)が妖婆(魔女)によって前半に語られたのも意外。台詞が始まったときは、「ここでお前がこれを言うか!」とかなりの驚き通り越した感じだった(黒澤「蜘蛛巣城」がどうだったかは忘れてます)のですが、これも如何に自分が勝手に「マクベス」像を創っていたかの例となりました。そもそも、これ『マクベス』じゃないし。

シカクイ頭をマルクしなくてはです。


<初めて訪れた神奈川芸術劇場>

KAAT神奈川芸術劇場プロデュース
『蜘蛛巣城』

日時2023/2/25(土)~2023/3/12(日)

【作・演出】
原脚本:黒澤明 小國英雄 橋本忍 菊島隆三
脚本:齋藤雅文 
上演台本:齋藤雅文 赤堀雅秋
演出:赤堀雅秋

【出演】
早乙女太一 倉科カナ
長塚圭史 中島歩 佐藤直子 山本浩司 水澤紳吾
西本竜樹 永岡佑 新名基浩 清水優 川畑和雄 新井郁 井上向日葵 小林諒音
相田真滉 松川大祐 村中龍人 荒井天吾・田中誠人(W キャスト)
久保酎吉 赤堀雅秋 銀粉蝶

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初・ナマ小栗旬/ 彩の国 シェイクスピアシリーズ 『ジョン王』(翻訳:松岡和子/演出:吉田鋼太郎)

2023-02-25 08:29:11 | ミュージカル、演劇

小栗旬さん目当てでした。昨年のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で主人公北条(小四郎)義時役でとっても印象的だったためです。日本史上とっても重要であるがキャラが分かりにくい義時の、青年期から晩年に至るまでの成長を見事に演じきってました。恥ずかしながら、私には名前こそ知っていましたが、小栗旬を主役として見たのはこのテレビドラマが初めてでした。そんな彼がシェイクピア劇を演じると知り、舞台ではどう演じるのか、埼玉・浦和に遠征しました。

演出と主人公のジョン王役は吉田鋼太郎氏。小栗さんは準主役と言える私生児フィリップ役で出演。物語は台本にもなっている松岡和子さんの訳本を事前に読んでおきました。

小栗さん、吉田さんはもちろんのこと、各役者さん達の熱演は素晴らしく、完成度の高い公演でした。シェイクスピアによるこの歴史劇の重み、面白さが浮きあがっていました。支配層の権力欲・名誉欲、家・家族の愛、人のご都合主義、そして支配層のご都合で右往左往し、虐げられる非支配者層たち。今も昔も変わらぬ人間社会の有り様です。演出では、劇の冒頭と最後に現代に空間・時間を持って来ていて、過去と現代との連続性を意識させるつくりになっていたのも説得感があります。

リアル小栗さんを初めて見た感想は、身体の切れが実に良いですね。演技も流石、堂々としていて華がある。第2幕の最後の権力者たちの私利私欲を嘲るモノローグには胸を打たれました。

シェイクスピア劇として少々驚いたのは、重要場面で役者さんのソロでの歌が入りました。それも日本のポップミュージック(私が知らなない、聴いたことのない音楽もありましたので、全て日本のものからは自信ないです)。「え、これってミュージカル?」と最初は仰天だったのですが、キーシーンに歌が挿まれます(全編で5曲ぐらいだった記憶)。皆さん(含む、吉田さん・小栗さん)しっかり歌われるし、劇効果を高めているのも確かなのですが、私自身は歌、要るかなあと感じたところはありました。(そういえば、蜷川「マクベス」ではクラシック音楽が挿入されていたことを思い出しました。あれも不要と思ったけど)

いずれにせよ、私にとってはシェイクピア劇を小栗旬とセットで観られたという非常に満足感の高い舞台でありました。(どうでもいい話ですが、観客の女性比率が7割以上(しかも若い)で、クラシック音楽コンサートやオペラとは全く違う観客層で、浦和という地域性もありかなりアウエイ感満載でした)。

 

日時 2023年2月17日(金)18:30 上演時間 約3時間(一幕 80分/休憩20分/二幕 80分)。
会場 埼玉会館 大ホール
作 W. シェイクスピア 翻訳 松岡和子
上演台本・演出 吉田鋼太郎(彩の国シェイクスピア・シリーズ芸術監督)
出演 小栗 旬 中村京蔵 玉置玲央 白石隼也 高橋 努 植本純米 櫻井章喜 間宮啓行 廣田高志 塚本幸男 飯田邦博 坪内 守 水口テツ 鈴木彰紀 堀 源起 阿部丈二 山本直寛 續木淳平 大西達之介 松本こうせい 酒井禅功/佐藤 凌(Wキャスト) 五味川竜馬 吉田鋼太郎
演奏:サミエル 武田圭司 熊谷太輔/渡辺庸介
<Wキャストスケジュール(子役)>
酒井禅功・・・18日 マチネ、19日、22日、24日
佐藤 凌 ・・・17日、18日 ソワレ、21日、23日

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笑いの中に考えるヒントあり: 演劇〈ロビー・ヒーロー〉 @新国立劇場

2022-05-19 07:30:17 | ミュージカル、演劇

シリーズ「声 議論, 正論, 極論, 批判, 対話...の物語」の第2弾。ニューヨークのマンションのロビーを舞台に、とある殺人事件を巡って、マンションの警備員2名とニューヨーク市警の警察官2名(一人は見習いの婦人警官の卵)の4名により繰り広げられる会話劇。第1弾の「アンチポデス」に続いて、完成度高く、笑いの中にいろんなことを考えさせられた芝居であった。

テーマは「正義の捉え方」「人種・性などによる差別」「コミュニケーションの相互作用性」など。観る人によって様々に取れるだろう。

私個人は、「正義」や「差別」観点よりも、「コミュニケーション」にこの芝居の面白さがあると感じた。チャラ男ジェフ(中村蒼)が、一見、相手を顧みず好き勝手に話してコミュニケーションが成立してないように見えながらも、聴くことで相手の話を受け止めていて、会話により相互理解を深めている。欠点だらけのジェフであるが、オープンであること、正直であること、相手を理解しようとすることが、人の関係性を大きく変える力を持っていることに気づかされれる。

4名で3時間近くを喋り倒す芝居だが、役者さん夫々が、役柄に完全に入り込み、夫々の際立ったキャラを演じきっていた。それが、舞台の安定感と集中度をぐっと高めていた。中でも、ジェフの成長物語とも取れる本作において、中村蒼の熱演は圧巻。しっかりとした軸を作っていたと思った。

台本はアメリカっぽく、ストレートで分かりやすく、テーマも明示的。ロビーの一場面芝居を様々な角度で見せる演出も良く出来ていると感心した。

いよいよ来月、シリーズ第3作。こちらも見に行くつもり。

 

 

ロビー・ヒーロー
Lobby Hero

日本初演

2022年 5月13日[金]

予定上演時間:2時間55分(1幕:85分 休憩:15分 2幕:75分)

 

スタッフ

【作】ケネス・ロナーガン
【翻訳】浦辺千鶴
【演出】桑原裕子
【美術】田中敏恵
【照明】宮野和夫
【音響】島貫 聡
【衣裳】半田悦子
【ヘアメイク】林みゆき
【演出助手】和田沙緒理
【舞台監督】野口 毅

キャスト

中村 蒼、岡本 玲、板橋駿谷、瑞木健太郎

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演劇〈アンチポデス〉 (作 アニー・ベイカー、訳 小田島創志、演出 小川絵梨子) @新国立劇場小劇場

2022-04-24 07:30:13 | ミュージカル、演劇

演劇についてはど素人ながら、小川絵梨子監督が率いる新国立劇場演劇部門はいろんな企画にチャレンジしていて、応援したくなる。今回は、シリーズ「声 議論, 正論, 極論, 批判, 対話...の物語」と称し、「ネットやSNSなど、他者との新しいコミュニケーション方法が増えた中で改めて、他者とどうように関わっていくのか」を3作品を通じて考えるというもの(小川監督)。今回はその先頭バッターである。

新しい物語を創造するために集まった8名のメンバーの企画会議の描写を通じて、人間にとっての物語の意味合いを考えさせる物語。

「会議」で発せられる様々な問いや会話を通じて、自分自身の「物語」を振り返ると共に、自分にとって、人間にとっての「物語」の意味合いを考えさせられた。思い起こされたのは、よりマクロ的な視点でこのテーマを考えた『サピエンス全史』などの著作におけるハラリ氏のメッセージ。

「人間(サピエンス)がこの地球の支配的な力を得るようになったのは、協力する力と「物語」「虚構」を信じる力である」、「AI、データ処理などの情報技術(IT)とバイオテクノロジーの両輪が人類の未来を大きく変えてしまうであろう」とハラリ氏は言う。本劇もミクロ視点とマクロ視点の違いこそあれど、テーマ的につながる。物語の力がテクノロジーにとってどう変わるのか?それは、人間や地球をどこに導くのか。そんなことをぼんやり考えながら観ていた。普段、私として時間を最もかけている音楽・美術鑑賞とは、演劇鑑賞は明らかに使う脳の領域が違うとも感じた。

役者さんの優れた熱演、考えられた演出で完成度高い演劇だったと思う。台本が翻訳ものなので、Sexについての発言など文化的背景から来る多少の違和感は止むを得ないだろう。シリーズ2作目も大いに期待したい。

 

シリーズ「声 議論, 正論, 極論, 批判, 対話...の物語」Vol.1
アンチポデス
The Antipodes
日本初演

2022年4月22日

Staff&Cast

【作】アニー・ベイカー
【翻訳】小田島創志
【演出】小川絵梨子
【美術】小倉奈穂
【照明】松本大介
【音響】加藤 温
【衣裳】髙木阿友子
【ヘアメイク】高村マドカ
【演出助手】渡邊千穂
【舞台監督】福本伸生

キャスト

白井 晃、高田聖子、斉藤直樹、伊達 暁、亀田佳明、チョウ ヨンホ、草彅智文、八頭司悠友、加藤梨里香

 

Drama
The Antipodes

CREATIVE TEAM
Written by: Annie BAKER
Translated by: ODASHIMA Soshi
Directed by: OGAWA Eriko

CAST
SHIRAI Akira, TAKADA Shoko, SAITO Naoki, DATE Satoru, KAMEDA Yoshiaki, CHO Yonho, KUSANAGI Tomofumi, YATOJI Yusuke, KATO Ririka

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新国立劇場演劇部門 こつこつプロジェクト 「あーぶくたった、にいたった」(作・別役 実、演出・西沢栄治)

2021-12-20 08:15:29 | ミュージカル、演劇



1年間試演を重ね、その都度、演出家と芸術監督、製作スタッフが協議し、方向性や展望等を見極めていく新国立劇場演劇部門の「こつこつプロジェクト」の公演ということで楽しみにしていたのだが、残念ながら私の理解を超えた舞台で、首を傾げたまま終わってしまった。

昭和の「小市民」を10のエピソードで描いているのだが、どうも共感できるところが少ない。私自身、昭和の時代を相当年生きているのだが、どうも感覚が合わない(もちろん戦後だけをとっても昭和は40年以上あるからそれぞれいろいろあるのだろうけど)。これが昭和の小市民なのかなあ・・・という思いが最後まで抜けなかった。

脚本の別役実さんは「日本の不条理演劇を確立した第一人者」(Wiki)ということで、相当に高名な方のようだが、私には難しすぎた。個々のエピソードの位置づけ、話の展開、相互の関連がわかりにくい。さらに、「あれ」という指示語が多くの場面で連発されるのだが、確かに日常で使うことは場面は多いだろうが、舞台で多く使われるとかえって不自然さが耳についてしまう。脚本家の意図が良くわからなかった。

世の不条理を描いた不条理劇という分野があって、本劇はそれに該当するようだが、結局、何を描こうとしているのか私にはさっぱりわからずじまいで、消化不良感が大きい。役者さんはそれぞれ熱演だったので、違和感は作品そのものにあったのだろう。

演劇初心者の単なる感想なので、このコメントで不快に思う人がいらしたら、はなはだ申し訳ないのだが、私のストライクゾーンからは外れた舞台であった。

2021年12月8日観劇

 

あーぶくたった、にいたった
Bubbling and Boiling
公演期間:
2021年 12月7日[火]~12月19日[日]
予定上演時間:
1時間45分 (全10場 105分 休憩なし)

スタッフ
【作】別役 実
【演出】西沢栄治
【美術】長田佳代子
【照明】鈴木武人
【音響】信澤祐介
【衣裳】中村洋一
【ヘアメイク】高村マドカ
【演出助手】杉浦一輝
【舞台監督】川除 学

キャスト
山森大輔
浅野令子
木下藤次郎
稲川実代子
龍 昇

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演劇「イロアセル」(作・演出 倉持 裕)@新国立劇場 小劇場

2021-11-29 07:30:53 | ミュージカル、演劇



新国立劇場のフルオーディション企画は「かもめ」と「反応工程」を観劇してきたが、いずれも印象に残る舞台だった。今回は新国立劇場として4つめのフルオーディション企画の公演。企画に魅かれて、中身も良く分かってないまま劇場を訪れた。

ストーリーはとてもユニーク。とある島の住民たちの言葉にはそれぞれ固有の色がついていて、それが空を舞いあがり漂う。誰が何を発言したかが住民たちに共有されるので、隠し事はできない。ある日、島の丘に刑務所が設置され、島外から囚人と看守がやって来るが、なぜかそこだけは言葉に色がつかない。島民たちは囚人を訪れて胸の内を明かす。そんな村人の思いを囚人が代弁して公開したことで、事件が起こっていく・・・。特異な状況を設定したブラックコメディだ。

匿名性ある言葉(囚人と話すときの無色透明の言葉)と匿名性のない言葉(色がついて全ての島民に公開される言葉)が対比されるが、そこに優劣はついていない。また、匿名性のない世界においても誹謗中傷の対象となりうるナラという登場人物の存在も意味深である。

正直言うと、なかなか難しい作品だと感じた。一度見ただけでは、作・演出を手掛けた倉持裕さんの意図をどこまで読み取れたかは、甚だ自信ない。匿名性が幅を利かせる日本のネット世界において、言葉の暴力が社会問題化しているだけに、現代社会のテーマとして考える価値は大きいと思うのだが、それがシャープに訴求出来ていたかというと疑問符がついた(私だけかな?)。例えば、後半の囚人に対する憎悪、看守の官僚的行動などなど、色んな解釈が可能で、それこそこの作品の狙ったとこかもしれないのだが、腹落ち感がもう一つ。

囚人役の箱田暁史さんの飄々とした演技が好感度高い。物語のシリヤスさ、ブラックさを和ませて、柔らかく不思議な舞台の雰囲気を作っていた。看守役伊藤正之さんとのコンビもユーモラス。その他のオーディションで選ばれた役者さんたちも熱量高かった。

2時間10分、休憩なし。時間を忘れるほど舞台から目が離せなかったが、観劇後には微妙な不完全燃焼感が残った。

2021年11月11日~28日

スタッフ
【作・演出】倉持 裕
【美術】中根聡子
【照明】杉本公亮
【映像】横山 翼
【音響】高塩 顕
【音楽】田中 馨
【衣裳】太田雅公
【ヘアメイク】川端富生
【振付】小野寺修二
【演出助手】川名幸宏
【舞台監督】橋本加奈子

キャスト
伊藤正之、東風万智子、高木 稟、永岡 佑、永田 凜、西ノ園達大、箱田暁史、福原稚菜、山崎清介、山下容莉枝

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完成度高いフルオーディション企画 「反応工程」 @新国立劇場小劇場

2021-07-20 07:30:32 | ミュージカル、演劇



 久しぶりの演劇鑑賞。太平洋戦争終戦直前の九州の軍需工場(もともとは染料工場)で働く職工、管理者、動員学徒たちを巡る人間ドラマ。日本必勝の世間的空気の中で、個人としての思考の深さ、信念、政治感覚、倫理観が問われる。

 作品自体、重く、考えさせられること多いが、フルオーディションでキャスティングされた役者たちの熱演、名演が特に光った。知性・人間味に溢れながらも、若さゆえ正論と建前の狭間で悩む主人公の田宮を演じる久保田響介、おちゃらけ系の見習工矢部を演じる八頭司悠友の二人が特に舞台にエネルギーを与えていた。そして、世情に関わらず、自分の仕事を黙々と遂行する責任職人の有福正志の台詞にも魅かれる。彼らの「動」「静」織り交ぜた迫力ある演技に加えて、登場人物夫々が個性を発揮し、3時間近い上演中、片時も舞台から目が離せなかった。

 場の変化は一切ないが、日や時間の経過が推し量れる設定や舞台を効果的に活用した演出で、完成度高く質の高さを感じる舞台だった。結末もハッピーエンドにはならないが、「やっぱり、演劇はいいわ」としみじみ噛みしめられる作品である。

2021年7月13日 @新国立劇場 小劇場

スタッフ
【作】宮本 研
【演出】千葉哲也
【美術】伊藤雅子
【照明】中川隆一
【音響】藤平美保子
【衣裳】中村洋一
【ヘアメイク】高村マドカ
【アクション】渥美 博
【方言指導】下川江那
【演出助手】渡邊千穂
【舞台監督】齋藤英明 清水浩志

キャスト
天野はな、有福正志、神農直隆、河原翔太、久保田響介、清水 優、神保良介、高橋ひろし、田尻咲良、内藤栄一、奈良原大泰、平尾 仁、八頭司悠友、若杉宏二

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W.シェイクスピア/野田秀樹 潤色「真夏の夜の夢」(演出:シルヴィウ・プルカレーテ)@東京芸術劇場プレイハウス

2020-11-04 07:00:00 | ミュージカル、演劇

新国立劇場のオペラに続いて、演劇の「真夏の夜の夢」を東京芸術劇場プレイハウスにて観劇しました。

シェイクスピアの「真夏の夜の夢」をベースにしつつ、野田秀樹が潤色。原作のアテネの宮殿を日本の割烹料理屋に、アテネ近くの森を富士山麓に置いて、所々、登場人物の台詞も読み替えています。テンポ良く、洒脱で、言葉遊びたっぷりなところは原作と同じですが、全体を通して受ける印象は全く別の芝居になっていて、「おーそう来るか~」と驚きの連続で、あっという間の2時間でした。

役者陣もそぼろ(ヘレナ)、ときたまご(ハーミア)役の鈴木杏、北乃きいの両女優を初め、皆さんの熱演、怪演たっぷりで、私の2階席にも熱量が一杯伝わってきました。

演出のシルヴィウ・プルカレーテはルーマニアの舞台演出家で、随分有名な方のようですが、私は初めて。私が持つ原作の「森」のイメージとは異なる世界観でしたが、映像を効果的に取り入れた舞台は、現代的で不思議な「富士山麓」が表現されていました。

新国での「リチャード2世」も女性客が多いと思ったけど、この公演も8割近くは女性客。シェイクスピア劇ってこんなに女性ファンに偏っているのでしたっけ?

三密を避けた席割り当てで、両隣は空席のためゆったり。贅沢な観劇体験となりました。

 

日程:2020年10月29日
会場:東京芸術劇場 プレイハウス
原作:ウィリアム・シェイクスピア 小田島雄志訳「夏の夜の夢」より
潤色:野田秀樹
演出:シルヴィウ・プルカレーテ

出演
鈴木杏、北乃きい、加治将樹、矢崎広、今井朋彦、加藤諒、長谷川朝晴、山中崇、河内大和、土屋佑壱、浜田学、茂手木桜子、八木光太郎、吉田朋弘、阿南健治、朝倉伸二、手塚とおる、壤晴彦

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演劇 シェイクスピア「リチャード二世」(演出:鵜山仁)@新国立劇場 中劇場

2020-10-26 08:00:23 | ミュージカル、演劇

8か月ぶりの演劇は、シェイクスピアの『リチャード二世』。シェイクスピアの喜劇、悲劇はそこそこ観ているのですが、歴史劇は初めて。事前に小田嶋訳で読んでおきましたが、長台詞が続くリチャード二世を岡本健一さんがどう演じるのかとっても楽しみでした。

公演は役者さんたちの熱量がほとばしる素晴らしいもので、上演時間3時間15分を全く感じないものでした。岡本さんが演じるリチャード二世は、王というより人間的で、驕り、迷い、悩み、諦め、悲しみ、あらゆる感情を自然に表出させており、自分とは全く違う人物ながら感情移入してしまいます。脇役陣も重厚な演技で、舞台がとっても安定していました。

舞台演出も派手過ぎず、簡素過ぎずで、物語の世界を忠実かつ美しく表現してあり、役者や台本の素晴らしさを最大限活かすものだと思いました。

支配者の栄枯盛衰、権力から落ちた人間の無力さや孤独を余すことなく伝えるシェイクスピアの原作も流石です。

硬派の歴史劇にも関わらず、観客の8割ぐらいが女性だったように見えたのは、岡本さん、浦井さんお目当てなのですかね?いずれにせよ、満足感一杯で劇場を後にしました。

こんなのを見てしまうと、他の歴史劇も見たくなってしまいますね。ただ残念ながら、本作品は、新国立劇場で足かけ12年かけて上演されたシェイクスピアの最終上演とのこと。過去作品の「ヘンリー六世」と「リチャード三世」を映像上映してくれるようですが、ちょっとスケジュール的に無理そうで残念です。気長に他の上演を待つことにしたいと思います。

2020/2021シーズン
演劇『リチャード二世』
Richard II
中劇場

予定上演時間:3時間15分(1幕:90分 休憩:20分 2幕:85分)

スタッフ
作 ウィリアム・シェイクスピア
翻訳 小田島雄志
演出 鵜山 仁

キャスト
岡本健一 浦井健治 中嶋朋子 立川三貴 横田栄司 勝部演之 
吉村 直 木下浩之 田代隆秀 一柳みる 大滝 寛 浅野雅博 
那須佐代子 小長谷勝彦 下総源太朗 原 嘉孝 櫻井章喜 石橋徹郎 清原達之 
鍛治直人 川辺邦弘 ⻲田佳明 松角洋平 内藤裕志 椎名一浩 宮崎隼人

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綾ベン企画 VOL.14 『川のほとりで3賢人』  @下北沢 駅前劇場

2020-02-29 07:30:00 | ミュージカル、演劇

私の下北沢演劇祭の第2弾として、綾田俊樹 、ベンガル、広岡由里子の3人劇『川のほとりで3賢人』 を見てきた。東京乾電池ゆかりの芝居を見るのは初めて。

多摩川の河川敷で暮らすホームレスの男2人と市の「福祉課」の女性1名が織りなす会話劇である。時たま、多摩川沿いをジョギングし、河川敷のテント小屋やホームレスの方を見かけるので、個人的にとっても身近に感じる設定である。ストーリーは、河川敷と言うのどかな環境の中で、リアルと非現実的世界の境界を渡るような緊張感を伴ったもので、次の展開が気なるままにあっという間に95分が過ぎ去った。

小劇場での芝居をここ数年いくつか見てきているが、やっぱり役者が違うなあと感じた。綾田俊樹、 ベンガル、広岡由里子というベテラン役者が織りなす演劇は、醸し出す雰囲気、間と言い、プロを感じる。自然体だが味がある。舞台がしっかり安定している。

結局最後まで「福祉課」の馬場マチコの謎は私には解けなかったので、観劇後にちょっと残尿感があったが、楽しい祝日の午後のひとときとなった。

 

綾ベン企画 VOL.14
『川のほとりで3賢人』

日程:2020年2月21日(金)~3月1日(日)<2月24日観劇>
会場:下北沢 駅前劇場

作:てっかんマスター
演出:平山秀幸
出演:綾田俊樹 ベンガル/広岡由里子(ゲスト)
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