
原発事故による放射能の健康への影響を調査する福島県の県民健康管理調査を巡って、「検討会」が、どう事実を秘匿し、議論を誘導しようとしたかを生々しくレポートしている。
考えさせられるのは、彼らは一体、誰に向いて仕事をしているのかということ。あるべきは、福島県の役人であれば福島県民であろうし、医師であれば患者であるはずである。だが、ここで報告されるのは安心重視やパニック防止という名のもとの、隠ぺいや偽りでしかない。悲しいが、これが日本のシステムだし、「組織人」の現実なのだ。
お役所の保身文化、根回し文化を考えれば、きっとこんなことがあるのだろうなあと、誰もが漠然と思っていることが、本当に起こっているというのに驚き呆れる。その事実を明白に白日の下に照らしたという点において、このレポートの意義は非常に大きいと思う。もちろん、将来、本当に健康被害が出るかどうかは今の時点では分からない。しかし、大事なのは将来の結果よりも、ここでお役人や検討会が取っている行動であり、その意図である。
一般市民は賢くなるしかない。玉石混合であるかもしれないが、今の世の中は昔とは全く違った質と量の情報がネットを通じて手に入る。「政府が行っているから・・・」「県が言っているから・・・」「専門家が言っているから・・・」ではなく、自分で情報を取って自分の頭で考え、行動する。それしか、自分を守る方法はないと思う。
福島県民の人たちはこの本をどう読むのであろうか。