その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

ボブ・ウッドワード (著), 伏見 威蕃 (翻訳) 『FEAR 恐怖の男 トランプ政権の真実』(日本経済新聞出版社、2018)

2020-04-18 07:30:00 | 

 世界最大の影響力を持つ国ではこんな男が最大の権力を行使しているのかを知り、身の毛がよだつ一冊である。メディアや本人のツイート(私もフォロワーの一人)である程度は知ってはいたものの、想像を遥かに上回るモンスターだ。

 大統領選挙戦での様子から始まって、アフガニスタン撤兵問題、北朝鮮核兵器開発への対応、TPP離脱、税制改革、人種差別抗争(シャーロッツビル事件)への対応、ロシア疑惑等、ホワイトハウスに居合わせているような感覚で、トランプ政権におけるアメリカの政策決定過程をビビッドに知ることができる。政策決定論等の理論テキストを読むよりも、ずっと勉強にもなる。イラン、アフガニスタン、北朝鮮等、なかなか日本にいると見えにくい国際政治のダイナミクスの一面も理解が進む。

自分勝手、無教養、 傲慢、品性下劣・・・人として見習いたくない殆どの要素を満たしている人間が、側近には服従する者を配置し、国を導く。政権の中枢が、ここまで迷走し、機能喪失していながらも、この3年間、アメリカが崩壊しないでいたのも不思議な気がするぐらいだ。私自身は、安倍首相の支持者ではないが、トランプ大統領に比べればどんなに良く見えることか。

「トランプは午前11時ごろにならないと、仕事をはじめない。1日に6時間か8時間、テレビを見ている。テレビばかり見ていたら脳がどうなるか、考えてみるといい、とバノン(2017年1月20日~2017年8月18日 大統領首席戦略官)は疑問を投げた。」(p419)

国防長官のジェームス・マティスは、「近しい補佐官に、大統領はまるで、“小学校5、6年生”のようにふるまい、理解力もその程度しかないといった。」(p431)

500頁に及ぶ長編で冗長に感じるところもあるが、ドキュメンタリータッチで読み易いので、本の厚さは気にならない。秋の大統領選に向けても、コロナ禍のStay Homeの肴としても、お勧めです。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする