その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

これは必見!:特別展「やまと絵-受け継がれる王朝の美-」 @東京国立博物館

2023-11-03 07:49:59 | 美術展(2012.8~)

東京国立博物館で開催中の特別展「やまと絵」。金曜日終業後に夜間開館時間帯に訪れた。

平安時代から室町期の逸品を揃えた質・量ともに充実の日本美術の展示である。何度でも足を運びたくなる素晴らしさだった。

屏風はややガラス窓で隔てた奥に設置されているので細部を見るには単眼鏡が欲しくなるが、絵巻系はすぐ手に取れるような距離で細部まで鑑賞できる。鑑賞者の流れを堰き止めては周囲に迷惑なのだが、どうしても見入ってしまう。

個人的には、当時の市井の人々や生活が描かれている画が好みなので、一遍聖絵、信貴山縁起絵巻、餓鬼草子、法然上人絵伝らは特に時間をかけた。当時の人々の様子や動きが生き生きと伝わってくる。ざわめきや歓声、話し声までが聞こえてくるようである。丁度、読みかけ中の網野善彦「日本の歴史をよみなおす」で、<一遍聖絵>を参照し、当時の賎視されていた乞食や犬神人が詳細に説明されていたのだが、展示されていた巻第七にはまさにそうした人々が描かれていた。今にも動き出すんではと思う程である。書籍の理解度もあがる収穫付きだった。

また、「風俗画」とは異なるが、日本の肖像画のキングともいえる絵に初お目見えしたのは感激だった。神護寺三像として「伝源頼朝像」「伝平重盛像」「伝藤原光能像」がそろい踏みしている展示は、鳥肌が立つほどのオーラ。各像とも横幅1メートルを超し、ほぼ等身大。歴史学的には、描かれた人物は源頼朝でないというのが今の定説らしいが、ここに描かれている人物の威容は只者ではないことは誰にでもわかる。歴史の教科書や資料集に載っている絵写真では到底伝わらない迫力が重くのしかかってくる。「これは凄いわ~」と思わず、唸ってしまう。

好きなものだけじっくり見ているだけであっという間に2時間経過し、閉館時間となってしまった。展示期間ごとにかなり展示が変わるようだし、まだまだじっくり見たい品も多い。再訪を期したいが、会期末に向けて益々込み合うこと必至だろうなあ。

(余談)

偶然にも、ミュージアムコンサートが閉館後に開催されるということで、残って聴いてきた。心地よい、秋の夜。本館前の特設ステージで、吉田兄弟による津軽三味線の演奏。初めて生で聴く津軽三味線だ。民謡だけでなく、オリジナルの現代曲、ロック調だったり、バラード調だったりで、テクニック、音の切れ、響き、激しさがとっても新鮮だった。なんか海外に観光に来ているよう。とっても幸運の金曜日夜であった。

2023年10月27日 訪問

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする