生きるために、食べることは重要なことだ。
しかし、何を食べるかは、もっと重要なのかもしれない。
そこには、嗜好とか選択とかが働く。
人間の文化は、
何を、どのようにして、食べるのかで進歩を遂げてきた気がする。
例えば、「養う」という漢字は、「羊を食べる」と書く。
羊を食べることが、「家族を養う」ことを意味していた時代の名残である。
「割烹」の「割」は、「肉を割く」ことを意味している。
肉を上手に割いて調理するということは、皇帝に献上する上品な食事だったのだ。
したがって、食にこだわりを持たないのは、文化を知らないことでもある。
浦先生にゴチになったタイラギという貝も、見た目ではわからないほど美味だった。
これは、高級食材らしい。
「生きる」ということは「食べる」ということであり、この日常的な行為が人間に「文化」をもたらした。
だから、日本人が日本の文化を維持するためには、日本食にこだわりを持って食べ続けることだ。
そういう意味で、私はTPPに反対している。
画一的な食材や、スタンダードな調理法からは、うまい食は生まれないし、文化は向上しないからだ。
ほぼ毎週東京に来て外食を強いられている人間にとって、この地の食が私を文化から隔離し始めている。
困ったことだ。
私たちは、とても大切なことを失いつつある。