なんだって。
朝、起きると、窓の外は雪景色だった。
どおりで寒いと思った。
億劫に思いながら、ベッドから這い出る。
長靴を履いて、大学へと向かう。
粉雪を踏みしめていると、少年のころを思い出した。
島根の山間は、豪雪地帯だった。
多い年は1メートル以上も積もった。
時には、学校が休みになることもあった。
子供たちは喜び、かまくらを作ったり、スキーをしたりした。
あの頃、明日のことなど何も考えていなかった。
世界は、村の境界で閉じていた。
貧しかったけれども、幸せでもあった。
手の届くところに生活があったし、食べ物はほとんどが自給自足だった。
今、街には、多くの食料があふれ、生活も豊かになった。
でも失ったものも多い。
毎日食べる食品の多くが、どこから来ているのかも知らない。
偽装食品などなかった。
なんでみんな競争をするのだろうか。
泳がないと沈んでいく社会。
本来はフェアな競争だったはずなのが、やがて勝つための競争となり、負けそうになるとごまかしたりする。
富の偏在が多くの競争を生み、勝つものはずっと勝ち続ける。
負けるものが勝ち上がるには、大貧民の革命しかない。
そして争いは続く。
雪道のように、時々、リセットをかければよいのに。
すべてを白く塗り替える粉雪は、転げたくなるほどふわふわだ。