パンセ(みたいなものを目指して)

好きなものはモーツァルト、ブルックナーとポール・マッカートニー、ヘッセ、サッカー。あとは面倒くさいことを考えること

宗次ホール「第3回 弦楽四重奏コンクール」雑感

2016年09月19日 08時34分10秒 | 見てきた、聴いてきた(展示会・映画と音楽)

今年は、最初から最後まで頑張って聴いた宗次ホール
「弦楽四重奏コンクール」 

昨年はスタミナ・集中力切れで途中で退席した

しかし、低価格で真剣勝負がしっかり聴けるのと
聴いたことのない曲をまとめて聴けるのに誘われて
電車賃を払って出かけた(今年は聴く方も最初から気合が違った)

大正解!
先日の3000円で聴けた(見れた)「ラインの黄金」に引き続き
チケット代2000円でほぼ一日中の音楽三昧は
コストパフォーマンスがめちゃくちゃ良くてありがたい

でも、本当は途中で退屈して集中力が切れたり、お昼のご飯を食べた後は
眠たくならないか心配だった
ところがその心配は杞憂に終わった
(それでも最後は少し疲れたが)

一団体、持ち時間は45分、ハイドンの作品から一曲
その他自由に選択した一曲が演奏されて、そのトータルの評価で順位を決定
審査員はホールの2階席に陣取っていた

最後まで聴いたが、これらの曲を録音したものを同じように集中して聴けるか
といえば 、それは絶対無理で、やはり生演奏だからこそ聴き続けられたと言える

この日演奏された曲の大半は知らない曲
知っている方を数えるほうが速い
必ず演奏されるハイドンの作品でも知っていたのは「ひばり」「5度」
自由曲はベートヴェンの「ハープ」と4番のハ短調、ドボルザークの「アメリカ」
それからバルトークの3番(CDで聴いてるはず)くらいなもの
こうなると演奏の解釈がどうのとか上手い下手などはほとんど分からない
そこで素人の強みで楽しんだほうが勝ちということで
聴いてるときに頭に浮かぶ事を勝手に楽しんだ

ところで、審査員というのは大変な仕事だ
同じ曲ならまだしも全部違う曲で実質6時間聴き比べる作業をしなければならない
難しい作業だなと思ったりする

この日の順番は

1.ブロッサム・クヮルテット
2.カルテット・ダモーレ

ここで昼の休憩45分

3.ルボワ・カルテット
4.タレイア・カルテット

5.山田弦楽四重奏団
6.ソフィア・カルテット

7.エイム弦楽四重奏団
8.ロリエ弦楽四重奏団

コンクールと言うが、この順番は評価に影響するのだろうか
最初のグループはその後の比較の対象になる(?)
それは不利なのか、それとも得なのか
それに最後の方は疲れて飽きてきて新鮮に聴いていられない(?)
これも不利なのか、、、
でも、こんなことを幾度も経験してきた人たちが審査員
審査員って大変だ

さて頭に浮かんだ勝手な連想
最初のブロッサム・クヮルテット
冒頭の音を聴いた刹那「ウィーンの香りだ」と思った
奏者の音色のせいか、ハイドンの曲のせいか、どちらか分からないが
とにかく「ウィーンの香り」という言葉が頭に浮かんだ
「ウィーンの音」ではなく「ウィーンの香り」というのが少し不思議
この最初の印象が良かったせいで、この日一日はそのままの気分で終えられたのかもしれない

ハイドンはハマってしまう作曲家ではなく、どちらかと言えば
少し気の利かない真面目な音楽家の印象があったが
この分野(弦楽四重奏)については過不足なく、バランス・収まりの良い感じだ
感情過多ということもなく、品良く、それなりにかっちりしててウィーンぽくて

ハイドンでも作品番号が若い時と後半とはすこし印象が異なる
自分は真面目なかっちりした後期よりも自由な発想力に任せた(?)初期のほうが
聴いてて楽しい(かな)

ブロッサム・クヮルテットの自由曲はフォーレの後期の弦楽四重奏曲 ホ短調 作品121
フォーレは好きな作曲家
特にピアノが入った室内楽曲はなんとも言えず美しい瞬間がある
この弦楽四重奏曲はハイドンの時代のおおらかな気分から、
近代の難しい感情の世界に入ってしまったようで、はやり後期のピアノ三重奏を
連想させる瞬間があった

このフォーレの後に聴いたカルテット・ダモーレの「ひばり」は
緊張感から開放されてホッとした

ハイドンには申し訳ないが、やはり自由曲のほうが興味深い
ベートーヴェンの「ハープ」は曲中に例の運命の動機がでてきて
吉田秀和が「ベートーヴェンを求めて」で書いていたように
彼は一生あるテーマを追い続け(使い続け)ていたのだと感じる
ベートーヴェンの曲のほうが感情的な流れの必然性が感じられる

昼ごはんの後は(結局関心があったのは自由曲ばかりだった)
ルポワ・カルテットの「アメリカ」
タレイア・カルテットのメンデルスゾーンの2番 イ短調

アメリカはよく聴く曲で、リズミックなところとメロディアスのところ
特に2楽章が心地よく、この日も堪能できた
メンデルスゾーンは初めて聞く曲
彼らしく感情表現を強く表に出すことはなく節度の中に収まっている
(4楽章では不気味というか効果的な音形もあったが)
そのなかで気に止まったのは、あのヴァイオリン協奏曲を思わせるフレーズが
時々聴こえたこと
やっぱりメンデルスゾーンも癖とか好みとか個性とか
そういう音形があるのもだと思ったりした

この作曲家独自の癖とか個性とか好みは
あとで聴いたチャイコフスキーやバルトークにもあった
チャイコフスキーは、「またやってる、いつのもあれ」という瞬間があったし
バルトークは「弦チェレ」を彷彿とさせる瞬間があった

あと少し頭に浮かんだこと
ベートーヴェンの作曲能力の凄さ
感情に伴う流れの必然性、そしてそのまとまり、更に聴衆の気持ちを捉えて
離さない魔力  これは本当にすごい(弦楽四重奏4番 ハ短調を聴いて)

興味深いものに日本人作曲家の作品があった
矢代秋雄の弦楽四重奏だ
武満みたいな音楽かな?と予想したが
武満と言うよりはシェーンベルクを連想した
畳み掛けるリズムは西洋というよりは日本を感じたが
この曲を聴く事によって武満の凄さ・独自性を再確認した

あとは、、、、
やっぱり疲れてしまった 
でも勝手にあれこれ想像することは楽しい

そうだもう一つ現場で感じたことがあった
それは男性の奏者が少ないということ
最後の最後、ロリエ弦楽四重奏団だけ男4人だったが
あとは男がいても一人で、中心となる第一ヴァイオリンは女性

男の感性による演奏は女性とは違うはず
と思い、バルトークを選んだのは男ならではと思ったりしたが
実際に出てきた音も筋肉質のたくましい音だった
スピード感もどこか女性中心のグループとは違う
ただ、これがドイツの男性による演奏だったらもう少し違う音色
なのではないかな?と勝手に想像した

ところで、コンクールと言うだけあって最後には順位がつけられた
曲が全部違う、しかも知らない曲ということで、
聴衆者のアンケートとしては自分は「もう一度聴いてみたいグループ」
という判断で2つのグループを選択した

素人だから、演奏能力よりは選曲の良し悪しが左右してしまった感はある

ところで、プロと聴衆が選んだ結果は

◆第1位 Quartet ame(エイム弦楽四重奏団)
◆第2位 Thaleia Quartet(タレイア カルテット)
◆第3位  Quartet d’amore(カルテット ダモーレ)

◆聴衆賞 ロリエ弦楽四重奏団

◆ハイドン賞 Quartet ame(エイム弦楽四重奏団)
◆宗次賞 Sophia Quartet(ソフィア カルテット)

弦楽四重奏コンクール 次は再来年だそうだ
次も行こう! 

 

 



 

 

 


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