長らく更新が滞っておりましたが、久々に更新させていただきます。
国鉄赤字の原因はどこに?
国鉄赤字の時期をどこで捉えるかといいますと、新幹線開業が原因で、それ故に昭和39年から赤字が発生したと言うのが一般的ですが、その原因を作った一つに、昭和31年から設けられた、地方納付金という制度も関係していると、個人的には考えています。
地方への交付金が不足していたこともあり、積極的に、公営ギャンブルを奨励していた訳ですが、不足する地方財源の一環として、国は、昭和31年、公社に対して課税を行うこととしました。
ここでポイントとなるのは、公社だけがその対象であり、郵便局など国営の機関は対象としなかったことでした。
当時、公社と呼ばれた組織は、専売公社、電電公社、そして日本国有鉄道であり、その理由は、市町村にその施設がある以上、消防署等の世話になることが、あるでしょうと言う理由で、市町村に税金を払えと言う制度でした。
それでは、国鉄以上に窓口などで利用者と接し、金融機関でもあって、警察などの世話になるであろう、郵便局はその対象から外れるというのも矛盾でした。
なお、郵便局は、郵政公社時代に、この法律に基づき、地方納付金を支払っています。
国が勝手に設けた制度に国鉄が巻き込まれたということは、前回までに書いたとおりです。
納付金とはどのような制度だったのか?
さて、納付金に関して、国鉄の部内誌により詳しく書いた資料がありましたので、その記事を参照しながら解説を加えていこうと思います。
その記事を引用させていただきますと。
国鉄が支払っていた税金は、大きく分けますと
固定資産税・・・遊休地や、病院などの福利厚生施設など
自動車税・・・・国鉄バスなどの営業用自動車、それ以外の自動車
地方納付金・・・直接、事業に供する線路。駅などの用地及び建物、及び車両が課税対象
鉄道車両は全て対象になる。駅舎もその対象、折尾駅にて
なお、地方納付金は、年2回に分けて、市町村に納付されることになっており、前年度中に、下記区分に従い本社経理局長に報告するように、なっていたそうです。
以下は、国鉄部内誌、「交通技術昭和42年4月号」に掲載されていた記事から引用したものです。以下、同一文献から引用
> このために固定資産の所管者である総括局所長(鉄道管理局長なと)は、自局の所管する固定質産を、
に分類する他、市町村ごとの軌道延長キロなどを調査し、経理局長へ報告することになっています。 ここで注目していただきたいのは、軌道もその対象であったと言うことです。市町村の一部区間でも、線路があれば、市町村にすればお金が入ってくるわけです。もちろん、軌道延長キロですから、単線よりも複線になる方が、その収入は大きくなる計算になります。 もう少し、市町村納付金の対象資産について詳しく述べたいと思います。
再び、「交通技術昭和42年4月号」から引用させていただきます。
と書かれています。例えば、鉄道工場や機関区、さらには操車場などがあった吹田市等は、国鉄からの地方納付金もかなりの金額になる訳です。
吹田観光ウエブから引用
また、地方のローカル線の場合、たとえ1日数本の列車しか走らなくとも、地方納付金が支払われる仕組みになっていたわけです。 なお、納付金の額のうち、軌道に関しては下記の通り、kmあたりの金額が定められていたそうです。再び、引用させていただきます。
したがって、大部分の資産は、軌道延長キロによって配分されるわけで、軌道延長キロは配分上最も重要なものとなります。例えば、市町村の区域内に軌道が少しでもあれば、本州:34万8000円、北海道;15万8000円、四国:24万4000円、九州:25万円(以上昭和41年度分)のように市町村納付金が納付されることになり、軌道延長の増減は市町村との利害と密接な関係にあることが理解されましょう。
一方、自治大臣は、市町村納付金を納付すべき資産について固定資産評価基準により評価を行い、軌道延長キロなどにより対象資産所在の市町村への配分価格を決決定し、市町村及び国鉄に通知され、納付額算定の基礎となる価格が決定されます。そこで市町村納付金の算式を示すと、固定資産価格x0.5x0.014となっています。
引用以上
ここで書いていますが、線路では1kmあたり、上記のように一律の金額が納付されるわけですから、地方都市にしてみればおいしい財源であったといえましょう。 何せ、毎年確実に入ってくるわけですから。
さて、こうした納付金ですが、国鉄が改良工事を施したりすれば、その分線路延長が増えて、車両も増えたりしますので、納付金も増えるという問題が生じました。
さらに、鉄道建設公団が建設する地方開発線と呼ばれる、AB線は、鉄建公団が建設して、国鉄に無償譲渡する路線ですが、これも国鉄にしてみれば線路が増えた分だけ納付金が増えるわけですから余り有り難くないわけです。 さらに、走らせるとなれば、それなりの経費も要るわけですから、国鉄としては譲渡してほしくない路線でした。 ちなみに、幹線区間と呼ばれた、CD線は、有償譲渡路線であり、鉄建公団から年賦で買い上げるもので、こちらも所有権は国鉄に移るため、納付金が発生しました。CD線の場合、鉄建公団への支払いが終わるまでは、鉄建公団の所有としておけば国鉄には納付金の分だけでも経費が浮くのですが、そのような仕組みにはなっていませんでした。
参考 鉄道建設公団が建設・開業した国鉄線 弊サイト、国鉄があった時代から引用
再び引用します
ところで国鉄は、昭和40年度から幹線の複線化、電化による輸送力の増強並びに都市圏通勤輸送の緩和のために第3次長期計画を実施し約3兆円にのぽる設備投資を行ないつつあるが、これに伴い納付金対象資産も急激に増加し、毎年の市町村納付金は急増して、完成時には現在の約2倍(約240億円)に達するものと見込まれている。このように市町村納付金は、今後ますます増加し。ひいては、国鉄財政に大きな負担となるので、これが減免について政府など関係機関に要請している。 ここで、国鉄は、減免について政府など関係機関に要請している。
と書かれていますが、実際に減免が認められるのは、分割民営化の方針が決定した頃であり、それまでは誰も責任を取らない体制のまま、形だけの再建計画が続けられ、地方納付金も引き続き国鉄は払うこととなりました。
国鉄赤字を、設備投資の利子払いなどが嵩んだことに求める論調が目立ちますが、仮にこうした地方納付金を廃止なり大幅な減免が行えていたり、過度な定期運賃の割引などが行っていれば、少なくとも、違った形で着地していたのではないかと思えるのです。
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国鉄は高額納税者だった。第1話
国鉄は高額納税者だった。第2話
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国鉄があった時代 JNR-era
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国鉄赤字の原因はどこに?
国鉄赤字の時期をどこで捉えるかといいますと、新幹線開業が原因で、それ故に昭和39年から赤字が発生したと言うのが一般的ですが、その原因を作った一つに、昭和31年から設けられた、地方納付金という制度も関係していると、個人的には考えています。
地方への交付金が不足していたこともあり、積極的に、公営ギャンブルを奨励していた訳ですが、不足する地方財源の一環として、国は、昭和31年、公社に対して課税を行うこととしました。
ここでポイントとなるのは、公社だけがその対象であり、郵便局など国営の機関は対象としなかったことでした。
当時、公社と呼ばれた組織は、専売公社、電電公社、そして日本国有鉄道であり、その理由は、市町村にその施設がある以上、消防署等の世話になることが、あるでしょうと言う理由で、市町村に税金を払えと言う制度でした。
それでは、国鉄以上に窓口などで利用者と接し、金融機関でもあって、警察などの世話になるであろう、郵便局はその対象から外れるというのも矛盾でした。
なお、郵便局は、郵政公社時代に、この法律に基づき、地方納付金を支払っています。
国が勝手に設けた制度に国鉄が巻き込まれたということは、前回までに書いたとおりです。
納付金とはどのような制度だったのか?
さて、納付金に関して、国鉄の部内誌により詳しく書いた資料がありましたので、その記事を参照しながら解説を加えていこうと思います。
その記事を引用させていただきますと。
国鉄が支払っていた税金は、大きく分けますと
固定資産税・・・遊休地や、病院などの福利厚生施設など
自動車税・・・・国鉄バスなどの営業用自動車、それ以外の自動車
地方納付金・・・直接、事業に供する線路。駅などの用地及び建物、及び車両が課税対象
鉄道車両は全て対象になる。駅舎もその対象、折尾駅にて
なお、地方納付金は、年2回に分けて、市町村に納付されることになっており、前年度中に、下記区分に従い本社経理局長に報告するように、なっていたそうです。
以下は、国鉄部内誌、「交通技術昭和42年4月号」に掲載されていた記事から引用したものです。以下、同一文献から引用
> このために固定資産の所管者である総括局所長(鉄道管理局長なと)は、自局の所管する固定質産を、
- 固定資産税が課されるもの
- 自動車税などが課されるもの
- 市町村納付金が課されるもの
- 税の対象外のもの
に分類する他、市町村ごとの軌道延長キロなどを調査し、経理局長へ報告することになっています。 ここで注目していただきたいのは、軌道もその対象であったと言うことです。市町村の一部区間でも、線路があれば、市町村にすればお金が入ってくるわけです。もちろん、軌道延長キロですから、単線よりも複線になる方が、その収入は大きくなる計算になります。 もう少し、市町村納付金の対象資産について詳しく述べたいと思います。
再び、「交通技術昭和42年4月号」から引用させていただきます。
- 軌道延長キロ(単線換算)により按分して配分するもの(一括申告資産といい、全納付金対象資産の94%を占めている〕……線路・駅区などの用地及び建物・線路設備・電線路・工作物・停車場設備・車両及ぴ機器がこの区分に入る。
- 固淀資産所在の市町村へ配分するもの(個別申告資産)……局の庁舎・宿舎などの用地及び建物・自動車施設・工場施設・船舶及ぴ石炭積込施設などがこれiこ該当する。
と書かれています。例えば、鉄道工場や機関区、さらには操車場などがあった吹田市等は、国鉄からの地方納付金もかなりの金額になる訳です。
吹田観光ウエブから引用
また、地方のローカル線の場合、たとえ1日数本の列車しか走らなくとも、地方納付金が支払われる仕組みになっていたわけです。 なお、納付金の額のうち、軌道に関しては下記の通り、kmあたりの金額が定められていたそうです。再び、引用させていただきます。
したがって、大部分の資産は、軌道延長キロによって配分されるわけで、軌道延長キロは配分上最も重要なものとなります。例えば、市町村の区域内に軌道が少しでもあれば、本州:34万8000円、北海道;15万8000円、四国:24万4000円、九州:25万円(以上昭和41年度分)のように市町村納付金が納付されることになり、軌道延長の増減は市町村との利害と密接な関係にあることが理解されましょう。
一方、自治大臣は、市町村納付金を納付すべき資産について固定資産評価基準により評価を行い、軌道延長キロなどにより対象資産所在の市町村への配分価格を決決定し、市町村及び国鉄に通知され、納付額算定の基礎となる価格が決定されます。そこで市町村納付金の算式を示すと、固定資産価格x0.5x0.014となっています。
引用以上
ここで書いていますが、線路では1kmあたり、上記のように一律の金額が納付されるわけですから、地方都市にしてみればおいしい財源であったといえましょう。 何せ、毎年確実に入ってくるわけですから。
さて、こうした納付金ですが、国鉄が改良工事を施したりすれば、その分線路延長が増えて、車両も増えたりしますので、納付金も増えるという問題が生じました。
さらに、鉄道建設公団が建設する地方開発線と呼ばれる、AB線は、鉄建公団が建設して、国鉄に無償譲渡する路線ですが、これも国鉄にしてみれば線路が増えた分だけ納付金が増えるわけですから余り有り難くないわけです。 さらに、走らせるとなれば、それなりの経費も要るわけですから、国鉄としては譲渡してほしくない路線でした。 ちなみに、幹線区間と呼ばれた、CD線は、有償譲渡路線であり、鉄建公団から年賦で買い上げるもので、こちらも所有権は国鉄に移るため、納付金が発生しました。CD線の場合、鉄建公団への支払いが終わるまでは、鉄建公団の所有としておけば国鉄には納付金の分だけでも経費が浮くのですが、そのような仕組みにはなっていませんでした。
参考 鉄道建設公団が建設・開業した国鉄線 弊サイト、国鉄があった時代から引用
再び引用します
ところで国鉄は、昭和40年度から幹線の複線化、電化による輸送力の増強並びに都市圏通勤輸送の緩和のために第3次長期計画を実施し約3兆円にのぽる設備投資を行ないつつあるが、これに伴い納付金対象資産も急激に増加し、毎年の市町村納付金は急増して、完成時には現在の約2倍(約240億円)に達するものと見込まれている。このように市町村納付金は、今後ますます増加し。ひいては、国鉄財政に大きな負担となるので、これが減免について政府など関係機関に要請している。 ここで、国鉄は、減免について政府など関係機関に要請している。
と書かれていますが、実際に減免が認められるのは、分割民営化の方針が決定した頃であり、それまでは誰も責任を取らない体制のまま、形だけの再建計画が続けられ、地方納付金も引き続き国鉄は払うこととなりました。
国鉄赤字を、設備投資の利子払いなどが嵩んだことに求める論調が目立ちますが、仮にこうした地方納付金を廃止なり大幅な減免が行えていたり、過度な定期運賃の割引などが行っていれば、少なくとも、違った形で着地していたのではないかと思えるのです。
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国鉄は高額納税者だった。第1話
国鉄は高額納税者だった。第2話
国鉄は高額納税者だった。第3話
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国鉄は高額納税者だった。第3話
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