先日、早稲田大学のキャンパス内にある、村上春樹ライブラリーを初めて訪れた。正式名称は“早稲田大学国際文学館村上春樹ライブラリー“。元々旧4号館だった建物を、建築家の隈研吾によってリノベーションされたものだ。僕は村上春樹の大ファンなので、前からライブラリーを訪問したいと思っていたし、建築も好きなので、隈研吾が手掛けた建物という意味でもチェックしたいと思っていたので、今回ついに念願を叶えることが出来た。
今回早稲田大学を訪れるのも初めて。僕は慶応卒なので早稲田に行く機会がなかなかこれまでなかったが、友人の多くは早稲田出身でもあり、いつかは訪れたいと思っていたので、今回村上春樹ライブラリーを訪れることがきっかけとなって、早稲田に行けたのも良かった。東西線の早稲田駅で降りて、早稲田大学のキャンパスまでは徒歩7分ほどと近い。
暫く歩くと、正門近くにあの大隈講堂が見えるが、なかなかインパクト大だ。キャンパスは慶応にも似て、行き交う大学生を見ていると、何だか大学時代が懐かしく思い出されてしまった。
村上春樹ライブラリーは、正門からも近い場所にあり、昨年の10月にオープンしたばかり。さすが隈研吾設計の建物だけあって、かなり斬新でオシャレ。隈研吾は、『村上春樹さんの文学は、我々が生きている日常の世界から、突然違う世界にポンと入ってしまう、トンネルのような文学。その世界観を形にしたかった』とコメントしていたらしいが、まさにそんなワクワク感を演出した見事なデザインだ。
ライブラリーは事前予約制。一日4回の枠があり、毎回定員は最大40名。無料というのが驚きだ。
まずは一歩中に入ると、このライブラリーのメインとなる巨大な吹き抜け空間の“階段本棚”が目に飛び込んでくる。階段に座りながら、本棚にある本を読んだりも出来る設計になっていて何ともオシャレだ。
1階には、村上春樹作品全てが並べられたギャラリースペースがあり、その殆どが村上春樹自身が寄贈した初版本。更には世界で出版された翻訳本も所蔵されており、約1,500冊が並んでいるのが圧巻だ。
そして一角には、村上春樹が描いた“羊男”のイラストが壁に描かれており、ここは絶好の撮影スポットだ。
階段本棚を地下に降りて行くと、地下1階にはオレンジキャットというカフェ、ラウンジスペースがある。そしてここに、昔村上春樹が経営していた喫茶店の『ピーターキャット』に実際置いてあったグランドピアノも展示されているが、椅子も年季が入っていた。
地下1階には村上春樹の書斎を再現した部屋も展示されていたが、ジャズレコードに囲まれた何とも羨ましい、オシャレな空間!
カフェでお茶するのは後にして、続いて再び1階へ。階段本棚を挟んでギャラリーの反対側には、こだわりのオーディオルームがあった。村上春樹は無類のジャズマニアで、多くのアナログレコードを所蔵しているらしいが、その一部がオシャレに展示されている。高級な音響設備と一緒に展示されており、オーディオマニアにはたまらない部屋である。実際に村上春樹の喫茶店、ピーターキャットで使っていたレコードも多くあり、本人が描いたという可愛い猫のロゴもあった。
そして、今度は展示スペースのある2階へ。8月までは“ジャズと文学”と題して、村上春樹に所縁のあるジャズ関連の貴重な資料や、レコードが展示されていて、かなり興味深かったが、この展示スペースはこれから色々な趣向で開催するらしい。何だか今回訪れて、久々にマイルズ・デイビスやジョン・コルトレーンの上質なジャズをレコードで聴きたくなってしまった・・・。
中には入れなかったが、2階には本格的な放送スタジオルームもあった。
2階から最後はまた地下1階のカフェ、オレンジキャットへ。ここはなんと早稲田大学の大学生たちが運営しているカフェで、とてもオシャレで落ち着く空間だ。店員の女子大生に聞いたら、午後は授業だと言っていた。可愛い現役早大女子がコーヒーを用意してくれるなんて、それだけでも最高に幸せな空間で、何とも癒される(笑)。
ここで売られているホワイトチョコドーナツとアイスコーヒーを注文し、村上春樹の書斎を眺めながらコーヒーを飲んで寛げるという何とも贅沢で、癒しの空間である。
記念に村上春樹ライブラリーの階段本棚がデザインされたトートバッグを購入したが、普段使いに良さそうなバッグだ。
全体的にそんなに広いライブラリーではないが、斬新でオシャレな建物と内装はそれだけでも価値のある空間だし、“ハルキスト”にはたまらない施設であった。ジャズが好きな人にもリッチな空間である。早稲田大学の敷地内にありながら、一般に開放されていて、しかも予約制だから混むことなくゆっくり無料で観賞出来るのがまた最高である。次回はもう少しゆっくり滞在し、所蔵している村上春樹の本をカフェで読みながらゆっくり過ごしたいものである。