水俣地域では、他人の苦しみを放っておけない人を
「悶(もだ)え神さま」と呼ぶという。
被害救済を訴える集会などで患者が掲げた「怨」の旗や
「水俣死民」のゼッケンは石牟礼さんが考えた。
自身がまさに「悶え神さま」だった。
(京都新聞「コラム凡語」2018年02月14日掲載)
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石牟礼道子さんの『苦界浄土 わが水俣病』は、
教科書で「四大公害病の一つ」などと言ってスルーしてしまいそうな心を
ぐいと真正面に向け、水俣病を深く考えさせる力を持つ作品でした。
実は、私は若い頃それほど多くの文学作品を読まない愚か者でした。
(著名な作家や有名作品は特に!)
しかし、石牟礼道子さんの文章はすっと心に入り、深く根付きました。
水俣病についての価値あるドキュメントであると同時に、
石牟礼さんの言葉が、
深い沈んだ場所に私を連れていってくれたのを覚えています。
反公害闘争の内実は、
福島原発事故、沖縄反基地闘争が突きつける課題とあまりに重なり、
遠く過ぎ去った歴史に埋没させることはできません。
私にとって大切な宝物の作家の一人、石牟礼道子さんの死を悼みます。
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池澤夏樹さん個人編集の世界文学全集には日本の作家としてたった一人、
この石牟礼道子さんの作品が収録されています。
作家の石牟礼道子さん死去 90歳 「苦海浄土」
毎日新聞2018年2月10日
https://mainichi.jp/articles/20180210/k00/00m/040/225000c
人間の極限的惨苦を描破した「苦海浄土(くがいじょうど)」で水俣病を告発し、豊穣(ほうじょう)な前近代に取って代わった近代社会の矛盾を問い、自然と共生する人間のあり方を小説や詩歌の主題にすえた作家の石牟礼道子(いしむれ・みちこ)さんが10日午前3時14分、パーキンソン病による急性増悪のため熊本市の介護施設で死去した。90歳。葬儀は近親者のみで営む。喪主は長男道生(みちお)さん。
長い間、公害だと認められないまま苦しんだ人々と一緒に苦しみ、訴え、寄り添われた人生だったと教えて頂きました。
「悶え神さま」と言う言葉があるのですか?まさにその神さまだったのですね。