この夏休みは、中村文則やカズオ・イシグロをせっせと読んでいるうちに
もう中国に戻らなくてはならなくなり、
既に買ってあった目取真俊(めどるま・しゅん)『眼の奥の森』は
スーツケースに入れて中国まで運んできました。
目取真俊さんと辺見庸さんの対談集で辺見さんが、
「ホンドも自分ももう、腐れ果ててだめかも知れない。
しかし、目取真さんの作品の言葉には、一縷の希望がある」
といった内容のことを言っていたので、
急ぎ取り寄せたのが『眼の奥の森』でした(フェイスブック友達の推薦書でもあり)。
こちらは大阪と違い、昼間32℃まで気温が上がっても、
朝晩は20℃に下がる快適な気候で読書にはもってこいなのですが、
目取真俊さんのこの小説は胸が張り裂けそうになる辛さを伴い、
すいすいと気楽に読み進むわけにはいきませんでした。
それでも、やはり読まずにはいられない圧倒的な力に導かれて
2日間で読み終わりました。
帯の紹介文は以下のようなものです。
「米軍に占領された沖縄の小さな島で事件は起こった。
少年は独り、復讐に立ち上がる ―――
悲しみ、憎悪、羞恥、罪悪感……
戦争で刻まれた記憶が60年の時を超えて交錯する。」
この帯文を読んで(よし、この小説を読もう!)と思う人は
そんなに多くないかも知れません。
しかし、ふとこの本を手に取って1ページ目を開き、
いったん文を読み始めたら、もう最後まで読むしかない、
この『眼の奥の森』はそんな小説でした。
アメリカと日本の権力に暴力的に服従を強いられ、
煮え湯を飲まされつつ生きてきた沖縄の庶民の心の奥を、
こんなにも深く伝えてくれる小説と初めて出会えた気がします。
私は読後、自分が今まで目取真俊さんの作品を読んでこなかったことを
本当に悔しく思いました。
又吉直樹さんのような「吉本芸人」といったプラスワンがないと
いくら芥川賞作家でも、ホンドでは話題に取り上げられないのかと
一瞬、勘ぐったりもしましたが、
目取真俊さんが芥川賞以外にも、
川端康成文学賞、九州芸術祭文化賞、木山捷平文学賞、
琉球新報短編小説賞など数々の賞を受賞し、
その小説が映画にまでなっているのを知るに及んで、
(なんだ、自分が知らなかっただけだったんだ……)とガックリしました
↓下はちょうど私も参加していた8月9日朝(翁長さん急逝の翌朝)、
キャンプシュワブゲート前で、
カヌーチームの一員として話す目取真俊さんです。
彼は現在、最も執筆に油の乗るはずの五十代であるにもかかわらず、
連日カヌーでの基地建設工事の抗議行動に追われて、
エネルギーを使い果たし、
家に帰るとくたくたで作品を書くことができないと
何かで言ってらっしゃいました。
抗議行動参加者は、みんな自分の本来の仕事を犠牲にして、しかも、手弁当で、
現場に駆けつけている方々ばかりです。
目取真 俊さんのブログ
「海鳴りの島から」https://blog.goo.ne.jp/awamori777
影書房という出版社を検索すると、他にも興味深い本をたくさん出版していました。
影書房トップページ http://www.kageshobo.com/main/001.html