アリ@チャピ堂 お気楽本のブログ

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「新フランスワイン」より新しい世界のワイン事情

2010-08-19 21:46:26 | ワインの本
「ワインづくりの思想-銘醸地神話を超えて-」 “プロヴィダンス”はどうして生まれたか


「ワインづくりの思想」  麻井 宇介(著) 中央公論新社(中公新書) 2001年発行

「新フランスワイン」がもう古典になってしまって
第三世界のワインがボルドーに肩を並べてしまった
現在に至る世界中の醸造家の努力と意欲を紹介している良書

スペインワインはフランスに輸出され
そこでネゴシアンがボルドーやブルゴーニュという名前をつけて売り出す
安いフランスワインの大半はスペインワインだと揶揄されていたのに
今ではスペインワインがブランドとなって
値段は高いがたいしたことのないフランスワインよりも
ずっと美味しいワインがある
というよりもフランスが築いてきたAOC(原産地呼称統制ワイン)という販売戦略が
地域を問わず醸造家の努力によって世界中で同じレベルの品質の高いワインが生み出され
少なくともボルドーと名前がつけばという状況ではなくなっている

その新しい時代にも試行錯誤はあり
アルミタンクによる工業的な醸造手法で先鞭をつけたドイツワインが
その手法のみに頼ったために消費者から飽きられてしまう

気象予測やブドウ栽培への科学的な管理が
ブドウ自体の出来不出来と言う概念を覆して
同一品種だけでも十分に美味しいワインを安定して作ることを可能にした
ヴァライタルワインが経験の浅い飲み手にも
醸造家ごとのワイン造りの違いを比較しやすくしてきた

そして科学的な品質管理がワインの均質化を加速したことで
次の差別化のためには有機ワインでありながら
これまでと同等のワインを造り出すまでの哲学を求め実現させる
亜硫酸塩をまったく添加しない「プロヴィダンス」は
ワインが根強く土地と気候によって(いわゆるテロワールやミクロクリマ)だけ語られるのではなく
生産者の哲学によって生み出されるものだということを実証した
有機ワインを飲んだらアルコール添加ぶどうジュースだった・・
もうそうんなことはない・・新しい時代となって来たのだ

随分回りくどくなってしまった
結論を言えば「世界中で美味しいワインができるようになった」
その経過が良く分かる本である
ぜひご関心のある方は読んでみてはどうだろうか


ワインの新しい時代を知る良書!!

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