米澤穂信
『王とサーカス』★★★★
引き続き読書会の課題本
(下記からのつながり ユーゴスラヴィア)
『さよなら妖精』が微妙だったため、この『王とサーカス』の完成度に納得
(みんながおもしろいと言っていた意味が分かった)
--------(抜粋)
2001年、新聞社を辞めたばかりの太刀洗万智は、知人の雑誌編集者から海外旅行特集の仕事を受け、事前取材のためネパールに向かった。現地で知り合った少年にガイドを頼み、穏やかな時間を過ごそうとしていた矢先、王宮で国王をはじめとする王族殺害事件が勃発する。太刀洗はジャーナリストとして早速取材を開始したが、そんな彼女を嘲笑うかのように、彼女の前にはひとつの死体が転がり……。
「この男は、わたしのために殺されたのか? あるいは――」
疑問と苦悩の果てに、太刀洗が辿り着いた痛切な真実とは?
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P395 「ラジェスワル准尉を殺したのが誰なのか、わたしは知っている。」
・・・うーん誰が犯人なんだろう?(途中で記載)
案外思いもかけない人が(八津田さんとか)犯人だったりして。
たくさんの推理小説を読んでいても毎度騙されるわたし。
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禿頭の男(とくとうと読)
あなたは悲しくないの、とは訊けなかった。かなしみは個人のものだ。
わたしのユーゴスラヴィア人の友人は、なぜ死ななければならなかったのか?
わたしの考え方のどこが甘いのかを指摘してくれた。これは並大抵の優しさでできることではない。こちらに考え違いがあった時、無償で叱ってくれるのは家族か学校の教師ぐらいのものだ。それ以外の人間はほとんどの場合、ただ怒りをぶつけてくるか、何も言わずに以降の関係を絶つかに留まる。彼はわたしに、優しくしてくれたのだ。
右手はひたすらペンを動かし続け、目はノートを睨んだまま首を背けてサンドウィッチにかぶりついて。二切れのサンドウィッチを食べてしまったことに気づかず空の皿に手を伸ばすと、この六日間で伸びた爪がカチリと音を立てる。その硬質の音と軽い痛みで、集中が解けた。
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