江國香織
『がらくた』★★★★★
心が平穏な時に恋しくなる。
文庫本にて再読
『アンナ・カレーニナ』も終盤でちょっと寄り道
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人は人を所有できるが、独占はできない。私が情事から学んだことの一つだ。そして、それでもどうしても独占したいと望むなら、望まないものも含めたすべてを――たとえばガールフレンドたちごと夫を――所有する以外にない。
すべての男の人はちがうかたちをしており、ちがう匂いがする。ちがう声を持ち、ちがう感じ方をする。それらを比較することはできない。
できるのは、一つずつ味わうことだけだ。
旅にでるといつもそうであるように、私は自分の生活からすっかり切り離されてしまったような気がする。東京に帰っても、もう居場所がないのだと感じる。
CONDRIEUという名のフランス産の白ワインをのみ終わるまで、私たちはそこにいた。二人がいなくなってしまうと、波の音が高く大きく聞こえた。海は黒々としており、私たちはとりたてて話すことがなかった。椅子を海の方に向け、足をのばし気味に座って、黙ってワインを啜った。月も星も遠く、ただつめたく光を放っている。
あとは闇、そして波。すぐうしろにはホテルがあり、人がいて灯りがある。でもこうして前を向いている限り、見えるのは海と空だけだ。
この男性に、東京で会うつもりはなかった。
はいこれ、と言って、ラムネの壜を手渡された。
「ありがとう」
呟いて、一口のむ。
「エキゾチックな味」
ラムネは、私に中華街を思いださせる。
「おかえり」
と言ってくれた。
「でも寝なかったんだね」
私はうなずいたのだったと思う。いまではもうはっきり思いだせない。これらはみな、何年も前に起きたことだ。
「それじゃあどこにも行ってないようなもんだな」
夫は言った。
「今度はもっと遠くに行っておいで、遠くに行けば行くほど、ほんとうのことがわかるはずなんだから」
もうわかったいる、と、反論することは無意味だっただろう。もうわかっている、私はあなたのものよ。そんなことはどちらも確信しているのだ。だからこそ新しくわかり続ける必要があるのだ。それが私の望んだことだ。度を失い続けること、渇望し続けること、独特の者同士として溶け合うこと。
手をのばし、煙草を一本ぬきだしてくわえた。ちり、と、紙の燃える音をさせて煙を吐く。
「幸福な話じゃなくても、幸福な思い出だわ。あなたとしたことは全部、私にとっては幸福な思い出になっちゃうのよ。おもしろいわね」
雨が続いている。私は秋という季節が好きだ。物がみな、あるべき姿に戻る季節という気がする。
摂取したものは血肉となる。事実は誰にも消せない。
「この人は、ちょっと目を離すと遠くに行ってしまうんだ」
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コメコのパンケーキ
17歳上と14歳上とのSMS
一般で言う浮気をする気がないとの会話
その理由として「性欲」をあげる彼女は36歳
元々持った欲は別として(それに良し悪しはつけられない)
もったいないなぁとわたしは思う。
接近してそろそろ三ヶ月