13 ~背徳~
季節外れの海の家はがら空きだった。
僕は女主人に声を掛けて、部屋を開けてもらいながら背中に君の視線を感じていた。
・・・インスssi?・・・
部屋に入るまであなたは不安げな顔をして、どうするつもり?としきりに僕の顔を見ていた。
---どうするつもり?---
いいのか?
これからどうするつもりだ?
今なら・・・まだ間に合う・・・・・
気持ちを伝えたから、気が済んだろう?
彼女はどうなる?
覚悟してるのか?
溢れてくる質問に誰が答えを用意してくれている?
どこに答えがあるんだ?
部屋に案内した女主人は二人を夫婦と思い、「ご主人、これが鍵だよ。」と言ってインスに鍵を渡した。
狭いが、初めての二人だけの世界。
もう、インスから迷いは消えてなくなっていた。
向き合ったあなたの頬にそっと触れる。冷えてるね・・・
僕の手で暖めてあげたい。
「・・・寒かった?」
「・・・・」
「僕たちを夫婦と思ったようだね」
言葉がでないのか、じっと瞳を寄せて僕を見ている貴女。
この事がどういうことか、分かっていても君は言葉にすることを恐れているようだった。
「ソヨンssi・・・恐い?・・・」
「・・・・・」
あなたを感じるように僕は優しく抱きしめた。
「今は・・僕たちだけの事を考えよう。自分の心に正直でいたいんだ。
今夜はあなたを離したくない・・・」
・・・あなたが欲しい・・・
・・・心のままにあなたを抱きたい・・・
言葉を持たない僕の問いかけに涙が君の頬を伝っている。
あなたの瞳は僕から逃げていない。
そっと微笑んだ・・・それが答えだね。
「愛している」
居座る不安に引っ張られるように俯いていくソヨンの顔を、
インスはそっと受け止めるように口づけをした。
ソヨンの唇に、インスの唇がゆっくりと何度も重なりながら、心を重ねあわせていく。
お互いに出会った事の意味を探り合いながら・・・。
鼓動は早く打ち始め、不規則にリズムを鳴らし、重なった胸から二人の音楽が聞こえ始めていった。
静かな夜に行われる背徳。
罪の意識も、後ろめたさも夜の帳に隠しながら、二人は抱き合い、愛し合う。
・・・あなたを信じたい・・・
情熱が抑圧を破った。
絡めた指から伝わる思いに翻弄されながら、ソヨンはインスに感情を染上げられていった。
重ねた肌から放たれる熱情に二人は巻き込まれ、どこまでも続くかのような喜びと切なさに落とされていく。
遠く、深く、愛情の海に沈みながら、インスとソヨンは渇きのような愛の痙攣を覚えていった。
僕たちは、どこへ向かっていくのか・・・
行き着く先はどこなのか、誰にもわからない
それでも、ずっとあなたの側で会いたい・・・
あなたに愛を語りたい・・・
僕に愛を語らせて欲しい・・・。
漆黒の闇が二人の罪を覆い隠し、白い波が二人の愛のささやきを打ち消していく。
まるで、誰にも気付かれないようにと願うように・・・。
夜空に君臨する優しい月だけが、二人をそっと見守り続けていた。