Boruneo’s Gallery

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4月の雪 22

2007年02月16日 10時27分59秒 | 創作話




      22 ~道の向こう~


ここのところ寒い日が続いているな。
上空に寒波がきているって、天気予報で言っていた気がする。

午前中に仕事を終えたインスは車に乗り込み、朝に降った雨で濡れている道を特にスピードを出すわけでもなく、サムチョクへ向かって走らせていた。

あの午後にスジンと話し合ってから、病院に向かう足取りが重い。
正直、会うのが辛かった。
あの時、スジンを突き放せなかったのは、愛情からだろうか?
それとも哀れに思ったからか?・・・

もし、哀れに思ったのなら、僕たち夫婦はもうおしまいだろう。
それじゃ、あまりにもスジンが可哀想だ。
哀れに思うなんてことは・・・もう愛じゃない。

ただ、僕たちが過ごした夫婦の時間がある。
それを無視できなかった・・・。

インスはここまで考えると、シートに頭を預けた。

スジン、こんな僕たちが結婚生活を続けてなんになるだろう? 惨めになるだけだ。
いや、その前に・・・僕がそれを望んでいるのかも知れない。

あの公園の日からあなたを病院で見掛けなくなって心配だった僕は何度もメールをしたけど、あなたから返信がない。
電話をするのはキョンホssiの側にいるあなたに気遣って今まで避けていたが、もう限界だった。

「何故、連絡をくれないんだ。ソヨンssi、どうか、一人で抱え込まないでくれ・・」

ハンドルを握る手に力を加えては、僕は見えないあなたに話しかける。
遠くに見える鈍よりとした雪雲を見つけて、その下にソヨンがいればいいのにと僕は願った。

「雪が好きだって言っていたね」

今までは迷いや、恋しさ、情熱に現実といったパズルのピースをバラバラに埋めてきていた。
どんな絵が浮かび上がるのか、わからないものにただ突き進むだけだったが、ようやくその全容が僕の中ではっきり見えてきたのだ。

心から愛している。あなたが欲しい。あなたと一緒にいたい。 僕たちはお互いの一部になりたがっている。

・・・スジンにすべてを話すときがきた・・・

インスの車は大きなカーブに差し掛かり弧を描きながら、その雪雲に向かって少しスピードを上げて走らせて行った。