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43 ~二度目の恋~
一歩踏み込んだその部屋からはあなたの香りがした。
ふわっと包み込まれる錯覚に私は陥りそうになった。
「・・お邪魔します」
「どうぞ」
その声の中に私を歓迎する色が見てとれた。
後ろから囁くような低い声が私の背中を押すと、私はリビングに向かって進みゆっくり部屋を見渡した。
よくある間取りなのに整然と配置されたテーブルやソファー、本棚にインスのセンスが感じられ、
壁に掛けられたどこかの風景写真、その近くに置かれた大事そうなカメラやソヨンの分からないものがインスの生活を感じさせた。
インスssiが撮った写真かしら。緑がきれい。
飾られた写真に目を奪われながら、男性の一人暮らしの部屋に入ったのはこれで二人目だとソヨンは思った。
結婚前のキョンホssiのように雑然としたのが当然だと思っていたから、綺麗に掃除された部屋は思わず女性が・・と勘繰ってしまう。
私たちが離れていた少しの間、インスssiの側に誰かいても不思議ではないわ。
「あの・・・誰か付き合っていた人が?」
ソファーの横に立ち尽くしたソヨンが部屋を見渡しながら思わず聞いていた。
脱いだ上着をソファーに掛けて何か飲物を・・・と思っていたインスの動きが止まった。
「・・・誰もいないよ」
インスは笑っていた。
「付き合って欲しい人はどこにいるのかわからなかったし、仕事しか僕を相手してくれるのはなかったからね。淋しくて、よく我慢出来たと思うよ」
インスの柔らかい笑い声がソヨンの不安を払拭し、笑顔を引きずり出していた。
「それに引っ越してから君が初めてのお客様だ」
インスはワインとグラスを手にしながらソファーに座るようソヨンを即し、斜め横のスツールにインスが座った。
「この部屋にいつか‘ある人’が尋ねてきてくれる予定だった。そのための取って置きを用意していたんだが・・」
コトッとテーブルに置かれた二つのワイングラスに赤ワインが注がれる。
「埃を被るほど待たされなくてよかったよ」
インスの言葉にソヨンは思わずうつむいて笑った。
顔をあげると向き合ったインスの瞳はソヨンの心まで見透かしそうなほどまっすぐで、それが恐くもあり、惹かれていた。
ソヨンはちょっと視線をずらすと、薄っすら汗が滲んだ手でグラスを持ち、芳醇な香りのする赤ワインを少し口に含んだ。
「私・・本当はあまりお酒が強くないの。でも、これは美味しい。私のこと気遣ってくれてありがとう」
心遣いに感謝を述べながら次は何を話そうかと、味わうのもそこそこにしか出来ない。
インスはソヨンの様子を満足気に見ながら口元を緩めて笑顔を見せた。
「気に入ってくれてよかった。昨夜の君とはちょっと違うね。昨夜は・・・・。僕はすこし緊張してるかな」
インスの言いかけて消えた言葉は、昨夜の甘く切ないキスを思い出させた
「嘘よ・・緊張しているのは私のほうだわ。インスssiの部屋に入るのは初めてだし、それもこんな時間に・・」
口にした言葉の意味が二人の間に流れる空気を濃く染めると同時に、「本当だよ」とインスが優しく彼女の言葉に被さった。
「大切な人が今、目の前にいるから」
インスの手がゆっくりと動く。
指先で私の頬にそっと触れた。
温もりを確かめるように蠢くその指を追うように私の瞳が追いかける。
私の頬に掌を添えるようにしてあなたが立つと、誘導されるように私も一緒に立ち上がった。
頬に掛かった髪を優しく耳に掛けると、包み込むようにその広い胸へ私を引き寄せた。
インスssiのシャツから放つ香りは私の鼻孔をくすぐらせ、体の隅々を包み込まれるような錯覚を起こすと、私は軽いめまいに襲われた。
朧月夜の夜が、今 繋がり始めた。
僕が抱きしめるとあなたは昨夜よりも小さく感じた。
気持ちも体も昨夜から自制を残したままだ。
この細い体が悲鳴を挙げないだろうか・・・
そんな心配をしながら、いたわるように僕はあなたを抱きしめては唇を重ねた。
ゆっくりと触れた唇はワインの味が少ししていた。
唇を離しても額が触れ合ったまま・・・僕はあなたを見ている。
「酔いそうだ・・・」
小さく囁くインスの声にソヨンは体の震えを覚え、情熱を含む優しいキスが何度もソヨンに落とされていった。
雨で冷えたのか、固く冷たい自分の体にインスの温もりが伝わってくる。
「ん・・」
ソヨンはインスのキスに酔いそうになっても喪服に隠された影を抱いている自分をどこからか冷静に見ている気がしてならなかった。
その戸惑う心はインスにも伝わっていった。
やっと唇を離すとソヨンはインスの腕の中で思わず俯いてしまった。
「インスssi・・・私・・・」
「ソヨンssi、僕はもう待つつもりはないよ」
インスはソヨンの手を引いて寝室のドアを開けた。
薄暗い寝室に大きな窓があり、そこから外はまだ雨が降っていることを知らせている。
インスは向き合ったソヨンを前に彼女を見つめながら黒のネクタイを引き抜き、シャツのボタンを外していく。
ソヨンは感情の熱が高まっていくのを感じ、ゆっくり背中を向けるとワンピースのファスナーに手を掛けた。
途中まで降ろしかけたファスナーはインスの指によって続きが行われ、白い背中があらわになると、そこにインスの唇が押し当てられた。
ソヨンはそっと目を閉じた。
そして黒い影から解放される音を耳で確かめながら 足元にその残骸を残してインスの愛を受け止めた。
インスssiの香りが沁み込んだシーツに背中を押し付けて、初めて知るあなたの日常に私の肌が少し緊張を覚えている。
被さるインスの重みにソヨンの何かが微笑んで疼いた。
シャワーを浴びていないわ・・・と小さな声でソヨンは呟いた。
「いいよ。このままでいい」
インスに求められるまま唇を何度も、何度も奪われ続け、ソヨンは意識が遠のいていきそうだった。
触れ合う頬の温かさに安らぎを覚え、重なる胸は鼓動を早めていき、そのリズムをインスに伝えていく。
インスの熱くなった手に触れられる所すべてが溶かされていった。
そして、互いの肌の上を滑らせては目に見えないものを確かめていた。
「ソヨン」
切なげに囁きながらインスの熱い手はソヨンの豊かな胸を包んでいた。
インスの柔らかい唇が、追いかけるように這っては道標を残していく。
そして胸の頂を赤く染めた。
ソヨンから切ない声が漏れ、白い喉元の稜線が闇の中で浮かび上がった。
世界中の誰にでも訪れるこの闇に、どこかである人は夢を見ているのだろう。
泣いているのか、笑っているのか・・・
朝になれば忘れるような夢や、起きたくないほどの幸せな夢に決別しては一日の始まりを覚えて、新しい時を刻んでいく。
それは当然のように訪れる日常だけど、当たり前じゃない。
平凡だけど、それは奇跡の連続だとあなたが僕に教えてくれた。
平等に降り注ぐこの夜も、僕たちにはとっては特別な夜なんだと・・・。
静寂の中で二人は時を重ね合わせ、漏れる吐息に流れる時間を濃く色づかせていた。
自分の体の下で小さく震えるソヨンの体を余すことなく、
情熱の赴くまま唇を。
体を重ねるのは2度目なのに、まるで初めてのようだ・・・とインスは思った。
初めてあなたを抱いた時は、全身を攻め立てるような情熱で罪の意識を夜の帳に隠しては抱いていた。
一夜の幸せはどこか脆くて、この手からこぼれぬようにと必死に掴もうとしていた。
やっと掴んだと思ったあなたは僕の腕の中から消えて、抜け殻と温もりが残っただけだった
幾夜、叫んだだろう
何故消えたんだと・・・
何度もあなたの名前を呼び、その度に暗闇が飲み込んでは僕を孤独にしていった。
切なさに身を焦がすことしか知らない、まるで月のないあの夜空のように・・・
「インスssi・・・・」
愛しい人が僕の名前を呼ぶ。
「もうあなたから離れたくない。私をずっと摑まえていて・・・」
「愛している」よりも、もっと切実にインスssiに言いたかったこと
私の胸の中でずっと疼くまるように殻に閉じ込めていたこと。
言葉にしたらなんて簡単なことなの?
胸の奥にしまっていたのは何故?
あの夜にあなたと愛し合ったことを後悔なんて一度もした事がないのに、
思い出す度に私を不安にさせていった。
あなたから離れて一人で生きていくのだと突っぱねる気持ちがあのときの私の支えだったといってもいい。
スジンssiの気持ちもわかるの・・・と言いながら何よりも私自身がインスssiを求めていたこともわかっていた。
嘘と煩悩に身を焦がし、常識と理性でバランスを保とうとしては自分が何者か見失いそうになって、嫌気をさしていたこともあった。
昨夜、あなたに出会わなかったら。
一瞬で身を焦がすほどの激情が体を走りぬけた瞬間。
あの時ほど運命を感じたことはないの。
私は体をあなたの上に重ねると、鼻先が触れそうなほど顔を近づけた。
「・・・ソヨン」
「あなたに愛されたい」
ソヨンがインスに唇を重ねた。
小さく触れては少し離し、再び重ねる。
インスは甘んじてソヨンのキスを受けていた。
「インスssiを愛したい」
キスの合間の告白がインスを孤独から解き放った。
インスはソヨンの手を掴んで絡め合わせた。
僕の唇がソヨンの細い指を濡らす。
「僕のものだと言ってくれ」
「・・愛しているわ。私はあなたのものよ」
インスの指がソヨンの髪をすくように入れると、そこから細い首へと滑らせ指で愛撫していく。
そして喉元に唇を押し当てると、そのまま体を滑らせ柔らかい唇も滑っていった。
「もっと君が欲しい。心も体も 誰にも渡したくない」
私を見上げながらそう言ったあなたの瞳は切なげで、そこから言葉は要らなかった。
互いを求め合い 激しく重ねた体に心を重ねあう。
闇の中で混じりあう吐息は、二人の情熱を、感情を加速させた。
陶酔しながら、与えながら、言葉のない思いが絡まっては伝わっていく。
ソヨンの肌が朱に染まりだしたころ、インスは白い膝を割ってソヨンの海に深く沈んでいった。
太古から刻み込まれたリズムをソヨンの体に刻んでいく。
ほとばしる熱は 荒い吐息に変わり、ソヨンは愛される喜びを抱いていた。
会えなかった間に育まれた愛が光を求めて疾走を始めていった。
焼き尽くしそうな情熱の波がに二人を呑み込み、絡めたインスとソヨンの指が強く握り締められた。
告白するよ・・・
2度目の恋を、僕はあなたにしている。
100%BYJ展では、わざわざ田舎から出かけ、あなたの絵に、ぞっこん。あなたに会いたくて2日間ずっ~と、かなり待ったのですが、会えませんでした。残念でした!原画も良かったのですが、横に添えてあるコメントが、またステキ。あなたの魂の高みが・清らかさが、私の心を揺さぶりました!「この方は、お絵かきさんなんだ~。」と思っていたら、「作家さん」でもあるのですね!多才な方で、うらやましいかぎりです。これからも、私たちに感動を与えてくださいね。
かしこ
展示会会場に来てくれたんですか?
ありがとうございます~~!!
京都会場でしょうか?それとも東京?
展示会で待っててくれてたんですか!
ええ~~それも2日間通ってくれたの!?
うわぁ、それはごめんなさい
京都会場では初日前半と最終日で、東京会場では最終日の1日しか居れなかったんです。
私もyonn loveさんにお会いしたかったな。
横のコメント<キャプション>ですね。
短いけど、飾り気がないぶん正直な言葉だけを書かせて貰いました。
yonn loveさん、受け止めてくれてありがとう。
お絵描きと呟きだけの手前勝手なブログですが、これからいつでも遊びにいらしてくださいね~~
来てくれてありがとう~
まぁ、ご本人からお返事なんて感激です!
私は、東京会場に行ってました。
2日目は帰りの飛行機の時間のため、長くはいられませんでした。(4.1)
盛況でしたね。
「韓国プラチナ」への掲載、おめでとうございます。どの作品も「JOONへの愛」に満ちていますよね。
いよいよ「太王四神記」のMBC放送も9.10~放映が始まりますね。
今度は、どんな姿を見せてくれるのでしょうか?
JOONの演技大好きだから、期待しているんですよ~!