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18 ~絡まった糸~
ソヨンssi・・何も答えられない君に僕は何が言えるだろう。
その沈黙が何よりも僕には痛いよ・・。
君を困らせたいわけじゃない。
あなたに伝えたい言葉がいっぱいあるのに、それらはあなたを苦しめるんだろうか?
喉の奥で痛いほど競りあがる言葉を僕はどんどん呑み込んでいくしかなかった。
「・・・インスssi・・そんなことをしたら周りの人が傷つくわ。そんなの、耐えられない・・。」
沈黙を破って言ったのは君だった。
「ソヨンssi・・・・僕たちは?こんな風に出会って、愛してしまった僕たちは何も傷つかないと思うのか? 」
「そんな風に言わないで! その問いに答えられるほど私は強くないわ・・・。」
「・・・・・」
「・・・ごめんなさい・・・」
「いいよ・・。」
「・・・・・」
インスは自分のため息さえも彼女を傷つけるのではないか、と臆してしまっている自分を感じていた。
長い沈黙が流れ、どうすることも出来ない悲しみが狭い空間に充満していく。
溜らずインスは車の窓を開け放った。
冬の名残と春の予感を知らせる風が、悲しみの風と少しずつ入れ替わっていく。
「キョンホssiの様子はどう?」
突然、あなたの口から夫の名前を聞いたときには全身に緊張が走った。
その気持ちはあなたもわかるかしら?
「え?ええ・・・今日普通病棟に移ることになったの。状態は安定してるから大丈夫だって。・・リハビリもしなきゃいけないの。だから・・・彼の看病に力を注がなきゃいけないのよ・・。」
それまで私はずっと口にするのを躊躇っていたその名前を言った。
「スジンssiは・・どうなの?」
君の口から妻の名前を聞く。
取り立てて普通のことだが、僕は胸の奥が痛んだ。
「ドクターと昨日話したよ。最初は記憶障害を気にしていたらしい。目覚めのとき少し様子がおかしかったんだが、もう大丈夫だよ。後は時間と共にだと思う。」
「・・そう・・・。」
「・・ソヨンssi・・」
「インスssi、看病に来たんでしょう?・・もう、行かなきゃ・・。」
「・・・ああ・・・行くよ。」
「・・ソヨンssiはもう少しここに居たらいいよ。車のキーを預けておくから、後で渡してくれたらいい。」
インスはそう言って、ソヨンを車に残して病院へ向かって一人歩き始めた。
途中、歩調を緩めて車の方を振り返ったインスはソヨンの様子を伺ったが、動かずにいる彼女の後ろ姿がインスには悲しかった。
ソヨンは車のルームミラーに映る小さなインスを見続けながら、留まることの知らない涙を一人流し続けていた。
インスは妻が目覚めてから毎日病院に通っていたが、「今は早く直そう」とだけ言っては事故について何も触れないでいた。
それは隣にキョンホがいることもあったが、‘そのこと’について4人で話し合うつもりもなかったからだ。
絡まった糸にもがいてるのはスジンたちだけじゃない。
僕たちもまた、お互い絡まりながらこの手に繋がった糸の先が誰なのか、わからずにいるんだ・・。
誰と誰が繋がっている?・・・。
インスは病室に着くと、今日、普通病棟へ移動すると言っていたキョンホの方へ目をやった。
まだ寝ていることの多いキョンホとは、一度も口を利いたことがないインスだった。
「インス・・来てくれたのね。」
「・・・スジン、どうだい?」
「長いこと意識不明だったって言われてもピンと来ないくらいよ。」
「顔色がいいね。昨日ドクターと話したけど、今日明日様子を見て普通病棟に移れそうだよ。」
「そう。」
「・・・・・」
「ねえ・・・聞かないの?事故のこと。」
「話せるの?」
インスの一言で、ただの交通事故ではないことをインスが知っているのだということが、スジンにはわかってしまった。
夫婦の間に冷たい風が通り過ぎていく。
“インスは彼のことを知ってる・・。”
スジンは暫く考えたあと、「もう少し待って・・ちゃんと話すから・・。」とインスの目を見ずに言った。
インスはそんなスジンに何も言うことはなく、ただ妻の着替えや彼女の体を拭いてやったりして時間を過ごしていた。
すると、暫くして戻ってきたソヨンが軽くインスに会釈をして、目に付きにくい所に車のキーを置いた。
僕はさりげなく行動してそれを取ると、ソヨンssiの手の温もりが残っているのに気付いた。
思わず、ぎゅっと握り締める。
・・・君の手のかわりだね・・・
・・・さっき握り締めたかったのに、できなかった。・・・
・・・いつまでも温もりが残ってればいいのに・・・
そんな僕の思いも片隅に追いやるようにキョンホssiの病棟への移動が始まった。
絡まった4人が向き合う、緊張と戦慄の瞬間。
移動するために開け放たれるカーテンは、まるで僕たちの切ない苦痛と悲哀の幕が上がったようだった。
あなたの夫に僕は何を言えばいい?
スジンの夫として? あなたを愛してしまった一人の男として?
だが、病室に僕たち4人の駒が散りばめられたのに、彼は僕らを見なかったし、スジンも彼のことをまったく目で追わなかった。
そう・・まるでまったく知らない他人のように・・・・。
・・・スジン?・・・
拍子抜けのように緊張の糸が切れた病室には、僕とスジンだけが取り残されていた。
それから、暫くしてスジンも好転して普通病棟へ移動することになり、お互い看病に明け暮れることとなった。
僕たちは会える機会を失っていった。
キョンホssiの病室は3階にあり、スジンの病室は2階になった。
男性は3階、女性は2階という風に別れただけのもので、どこにでもある病院と一緒だ。
たったそれだけなのに、君には会えない。
たまに用もなく、いや、用がある振りして3階に行っては、僕は偶然君に会えるかと期待して廊下を歩く。
彼の病室の前まで来た時、キョンホssiが「ソヨン」と呼ぶ声を聞いたことがあった。
・・・あなたはそこにいるんだね。・・・
会えないのに、確実にそこにいるのが嬉しかった。
会いたかった。
声が聞けるだろうか。
病室の前をゆっくりと通り過ぎながら、部屋の中にいるあなたを瞬時に探してみる。
僕があの夜、指ですくった覚えのある君の黒髪。
・・・ソヨンssi!・・・
彼女を呼びたい気持ちを押し殺し、何とか体を前に押しすすめては気付かれないまま通り過ぎていく。
・・・歩くことがこんなに辛いなんてな・・
廊下の突き当たりには大きな窓があって光が差し込んでいる。
その光は僕に何を示しているのか、わからないまま導かれるようにただ足を前に突き出していくしかなかった。
ところで、私のブログのチェジュ話なんですが…今の所ヤフーにブログ持っている人しか見られない限定記事にしてあるんですm(__)m 2月位には誰でも閲覧可能なブロコリブログの方にもUPしようと思っております♪ミアネ~
チェジュ話をすごく楽しみにしてます~~~♪
韓国は近いけど、私にとっては遠い国。
行けるのはいつやら・・・
なので、せめてりーふさんの話を読んで、疑似体験したいな。
ガレリア ヨンジュン☆の方にお邪魔しに行きますね~~