安倍首相はなぜ国会を開かないのか これほどの独裁は戦後初めて(日刊ゲンダイ2013/10/1)
安倍首相はきょう(1日)午後6時から記者会見を開き、来年4月から消費税を8%にアップさせることを正式に表明する。わざわざテレビの夕方ニュースの時間にぶつけ、生中継させるのだから、いい度胸だ。
そこで安倍が打ち出すのは、庶民への大増税だけではない。大企業には復興特別法人税の前倒し廃止の検討や投資減税などのメニューを揃えて優遇する。それがデフレ不況を回避する経済対策だというのである。まったく冗談じゃないが、安倍は涼しい顔だ。
国会を開かないからである。
秋の臨時国会は10月中旬ごろ召集とみられているが、まだ日程も会期もハッキリしない。野党5党が早期の国会開催を参院議長に要望しても無視された。議運も国対も野党はあまりにも無力、非力で存在しないに等しい。だから、安倍は余裕しゃくしゃく。臨時国会の日程や期間も、安倍の号令一下で決めてしまう。こんな楽は話はない。
「重要な問題をいつも審議できるように『通年国会』にすべしという議論もありました。それなのに、安倍首相は国会を開かない。野党の言うことに耳を貸さないどころか、最近は与党の言い分も聞かず、なんでも官邸で決めてしまう。ねじれ解消で驕り高ぶっているのでしょうが、これは政党政治、議会制民主主義を無視する行為です」(法大教授・五十嵐仁氏=政治学)
国会が開かれないから、大企業優遇のデタラメ減税の追及ができない。新聞報道によれば、麻生財務相は減税に反対したとされる。だったら、閣内不一致だが、それをただすチャンスもない。
国民が知りたいことは山のようにあるのにフザケタ話だ。国民は指をくわえて見ているしかないのである。
◆安倍の手法は官邸主導ではなく強権政治
ダダ漏れ状態が深刻な福島原発の汚染水問題にしたって、IOC総会前は閉会中審査を拒否し、ようやく、総会が終わって開いたと思ったら9月27、30日の2日間でオシマイだった。それも一番真意を問いただしたい安倍は、外遊中で欠席である。
「汚染水対策は東電任せにしない」とかカッコつけて、470億円の国費投入を勝手に決定し、IOC総会では「汚染水はコントロールされている」と大見えを切ったくせに、説明責任を果たそうともしない。安倍の無責任、身勝手、傲岸、野党の非力、メディアの無力はホント、嫌になってくる。
こんな調子だから、たとえ臨時国会が開会しても、国会は安倍官邸の独裁政治の追認機関になるだけだろう。
そんな中、安倍がもくろむ戦前回帰のような悪法が自動成立していくのだ。戦前の治安維持法のような「秘密保護法案」や、米国追随の「日本版NSC(国家安全保障会議)」の設置法案である。
いずれも国民が望んだわけでもないし、選挙公約でもなければ、争点にもならなかったのに、安倍はどんどん、勝手に決めてしまう。これほどの独善的、独裁的な首相は戦後初めてじゃないか。
「自民党は長らく一党支配で政権に君臨していましたが、首相=自民党総裁にこれほどの権限はなかった。当時は派閥の力が強く、領袖に有力者や実力者がいたからです。実力者の意見を聞きながら、党内で合意形成をしていく。そういう政治文化があったのに、今は野党が無力なだけではなく、政高党低とかいって、官邸の独断ばかりが目立つ。あまりにも乱暴なやり方です。今となっては小泉さんや森さんの方がマトモに見えるくらいです」(五十嵐仁氏=前出)
庶民は飼いならされて、声も上げないが、今の安倍政権の政治手法は前代未聞の強権政治だ。官邸主導といって評価する風潮は大間違いである。
◆党内抗争にうつつを抜かす税金ドロボーの野党
安倍の悪政をのさばらせている野党もヒドイものだ。
「民主、維新、みんなの主要野党3党が党内で内向きな抗争をやっているのですから、安倍さんを利するばかりです。民主党は小選挙区で負けた海江田さんが代表で求心力ゼロ。維新は堺市長選で敗北して、党内の亀裂がますます拡大しそうです。みんなはいまだに渡辺代表VS.江田氏の対立が続いている。これでは与党は野党をまったく相手にしないでしょう」(政治評論家・浅川博忠氏)
日本の国会議員は世界一高い歳費をもらっている。給料だけでも年間2100万円、使途を問わない1200万円の「文書通信費」も支給されている。ほかに1人当たり4500万円の「政党助成金」、780万円の「立法事務費」が税金から交付されている。
さらに公設秘書3人分の給与も国費負担だ。豪華な議員宿舎、JRパス、公用車……と、あれやこれや合わせると、1人の国会議員にざっと年間2億円もの税金がつぎ込まれている。
それなのに、野党議員は党内抗争にうつつを抜かし、国民のために汗をかかない。これじゃあ、タダの税金ドロボーだが、彼らは議員バッジをつけて、大金をもらえればいいのだろう。国民のためではなく、自分の生活のため。志も何もない。そんな腐った連中ばかりだ。
日経の最新の世論調査では政党助成金をもらわない共産党の政党支持率が6%で、自民党に次ぐ2位になった。民主(5%)や維新(3%)は共産に抜かれた。もう解散した方がいい。
だらしないのはメディアも同じで、長期政権をもくろむ安倍の前に完全沈黙。安倍の右傾化、消費税増税のデタラメ、汚染水をめぐるウソ、国会を開かない身勝手を全く書かない。これでは、安倍がますます、図に乗るだけである。
◆健康不安のトラウマで国会から逃げる安倍
国会を開かなければ、これほど政権にとって、おいしいことはない。権力を使いたいだけ使って、検証、追及されなければ、何でもできる。不正、癒着、裏取引となんでもアリだ。安倍が国会を開かないのは、その背景に隠したいことや、ゴマカしたいことが山ほどあるからだろう。汚染水対策に国費を投入する背景、経緯、首相の外遊に腰巾着のようについていった財界人たちの思惑、安倍のトップセールスの見返り、魂胆など、ネタはいくらでも思いつくのだが、政治評論家の野上忠興氏は別の見方を付け加えた。
「国会を開かないのは健康不安もあると思う。安倍さんには、第1次政権でお腹を壊して退陣せざるをえなくなったトラウマがある。国会はなんだかんだいって大変なストレスになる。なるべくそういう環境をつくらないようにしているのでしょう。暇さえあれば、外遊に出かけるのも商売だけではない。海外ではチヤホヤされるし、それを大義名分にすれば国会を開かなくてすむ。一石二鳥なのです」
この調子だと、安倍長期政権が本当に現実になってくる。この政権の怖さは、国会も開かず、知らない間に国の形を変えてしまうことだ。麻生が言ったナチスの手法だ。いまこの瞬間にも政府内で何が行われているのか。国民は知る由もないところが恐ろしい。
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