去年の暮れに放送した高倉健さんのドラマ「チロルの挽歌」前・後編(NHKBSプレミアム)を録画していました。
なかなか見る気になれず放っておいたのですが、ハードディスクの容量が残り少なくなってきて見ることにしました。
「チロルの挽歌」は今見ると今は亡き名優ばっかり出ていて、なつかしいのとこんなドラマはもう見られないなーという思いとともに見ました。
「チロルの挽歌」は山田太一脚本なので山田太一ワールドなのでした。
1992年放送のドラマで、北海道の炭鉱町が「チロリアンワールド」というテーマパークを開発をする話です。
高倉さん演じる立石は関東の鉄道会社から責任者として派遣されて、その町で駆け落ちをした妻志津江(大原麗子さん)と再会します。
駆け落ちの相手はかつて立石が鉄道自殺をしようとしていたところを助けた男菊川(杉浦直樹さん)です。
この奇妙な三角関係の行方をテーマパークの開発と絡めて、ドラマは展開します。
えーどうなるの。結局、立石が身を引くんだろうと予想しているとついに3人で今後を話し合うことになります。
ところがここで市長やら商店会長やら牧場主やら立石の娘やら関係者なんだかわからない人々を巻き込んで3人の今後について話し合いをすることになります。
山田太一ワールド全開の展開です。
予想どおり、立石が町を去ると言うと、菊川が自分が身を引くと言い出します。
二人が言い合いをして回りが騒ぐと、志津江が「私の意見を聞いてほしい」と声を上げます。
志津江は「3人で一緒に暮らしたい」と提案します。すごい展開。おどろきました。
で、チロリアンワールドはオープンして、立石と志津江が一緒に暮らすようになって、菊川の店で働くようになったのだと娘のナレーションがあってドラマは終わります。
当時の北海道の状況がよくわかるドラマでした。
国が補助金を出して、北海道各地がテーマパークの開発を進めて、その結果、ほとんどのテーマパークが失敗に終わってしまったことを今のわたしたちはわかっています。
しかし、ドラマのラスト、町のメインストリートを炭鉱労働者のまぼろし(亡霊)が大きな足音と共に歩いていき、市長が「だからと言ってどうしたらいいんだ。私に何ができるって言うんだ」とまぼろしに絶叫するシーンが、すでにテーマパーク開発が将来失敗に終わることを示唆していて、見ていてぞっとしました。
そんな見方がほぼ30年経つとできるんですね。