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ベルトー VS サンマルティーニ(ディスコグラフィー 2)

2017年05月27日 | 今日聴いたCD
(承前)
鈴木秀美もベルトーを録音していた。コワンより3年早く日本での録音である。ベルトーが第1番と第3番の2曲が入っているのはうれしい。どちらも装飾が控えめで誠実な演奏である。そして、中庸、繊細なベルトーである。
第3番(ト長調)第1楽章は淡々とたおやかに進行するが、カデンツァでは見事な素早いボーイングが見られる。第2楽章は憂いを含みながら、たゆたうようにゆっくり進む。時折、細かい装飾音が動きを与えている。動きの速い第3楽章も突っ走ることなく穏やかで余裕がある。第4楽章も上品でゆっくりした動きとなる。繰り返される旋律を聴いていると無常観さえ感じるほどである。

このCDは、タイトルのとおり、「知られざる作品」を集めている。いずれも佳品ぞろいで美しいが、このような同時代作品といっしょに聴くと、テクニックが前面に出ているという特性はうかがえるが、ベルトーも正当な居場所を得ている感じがする。その意味では、このCDはベルトーの時代をスキャンしているような体験ができると言えるかも知れない。まさに「再発見」であり、鈴木氏の慧眼と言えようか。

リーフレットには、ベルトーの「再発見」の経緯も簡潔に書かれている。おそらく、日本語では唯一の文章かも知れない。

Les Charmes de la redecouverte〔再発見の歓び~18世紀前半の知られざるチェロ作品集〕・ペルゴレージ:シンフォニア ヘ長調・ベルトー:ソナタ ニ長調 op.1-1・ベルトー:ソナタ ト長調 op.1-3・ランゼッティ:ソナタ 嬰へ短調作品1-10・ジェミニアーニ:ソナタ ニ短調 op.5-2鈴木秀美(チェロ), 山本徹(チェロ), 上尾直毅(チェンバロ).録音:2010年7月, Arte dell'arco Japan, ADJ031



"Baroque Cello Music" と題されたシムカ・ヘレドによるバロック期のチェロ・ソナタを収録したアルバム。バロックチェロではなくモダンチェロによる演奏。作曲者の表示も、もちろん、G. B. サンマルティーニ。

モファットの楽譜出版(ショット)以降、このソナタの譜面は4種類は出版されているというが、スズキ教本のそれがどの版に依拠しているのかは分らない。また、4種類の異同を調べられるわけもないのだが、オリジナル以外はどこかしら改作されているのは間違いないだろう。このヘレド盤の版はよく分らないが、ほぼオリジナル版と思われ、第1楽章のカデンツァもオリジナルどおり、第2楽章も重音付きであるが、指定以外の装飾は行っていない。ただし、第3楽章の最後が一部異なっている。第4楽章はない。そういう意味では、オリジナル志向ではあるが、基本的にモダンな演奏と言える。だが、録音が1997年で、アダスの論文から8年を経過していても、リーフレットは終始サンマルティーニの作品として解説しているあたりが面白い。

ト長調ソナタの演奏は、モダンで元気溌剌としたものである。速いところは速く、甘いところはより甘美にといった塩梅で、3楽章を通して淀みなく流れる。ピアノではなくハープシコード伴奏によるが、かなり控えめ(遠め)で、あくまでもチェロが主役。だが、雰囲気は出している。バロック音楽を現代感覚でお料理、という風情だろうか。実は、この演奏の方が現代の私たちには受け入れやすいようにも思う。第3楽章までだが、全体のバランス、細部の繊細さ、スピード感など申し分ないと思う。これは録音されている他の曲、エックレスのソナタ、ヴィヴァルディのソナタなどにも言える。

Baroque cello music: Sammartini, Vivaldi, Marcello, Handel, Eccles, Couperin. Simca Heled, violoncello, Ed Brewer, harpsichord, etc. recorded in 1985, 1997. CLASSICO, CLASSCD 203.

(つづく)


ベルトー VS サンマルティーニ
ベルトー VS サンマルティーニ(続)
ベルトー VS サンマルティーニ(付録)
ベルトー VS サンマルティーニ(ディスコグラフィー1)
ベルトー VS サンマルティーニ(ディスコグラフィー2)
ベルトー VS サンマルティーニ(ディスコグラフィー3)
ベルトー VS サンマルティーニ(ディスコグラフィー4)
ベルトー VS サンマルティーニ(エピローグ)


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