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平将門の講演を聴く

2021年10月09日 | ぼくのとうかつヒストリア
平将門(延喜3年(903)?-天慶3年(940))に関する講演会を聴くために、湖北(千葉県我孫子市)へ出かけました。
この郷土の英雄とも言われる人物への関心はあるのですが、実は古代史はかなり苦手です。
講師はアメリカの研究者、カール・フライデー氏。日本史上解釈が難しい人物の一人をどう位置付けるのか、期待しながら会場に向かいました。

演題は、「ファースト・侍! 平将門さま」。「最初の侍」という表現は、いくら古代史が苦手と言っても引っかかるものがありますが、これは講師の著書 "The first Samurai" に由来するもので、映画「ラスト・サムライ」のもじりとか。アメリカではこの方が「受け」がいいのでしょう。それだけ、"Masakado" がまだ認知されていない証拠でもあると言えます。

外国人から見た日本というと、私はルース・ベネディクトの『菊と刀』を思い浮かべますが、フライデー氏も難しい古代史上の人物を客観的な手法で評価しているようです。我々は将門に対しては、典型的な悪者、あるいは英雄としてそれぞれの足場に寄っていて自明のこととしがちですし時代とともに振幅しますが、氏はそれからはフリーであるようです。


将門は、偶発的に国衙を攻め、謀反人となります。その代償は大きく、かつて、都に出仕したことのある将門は犯罪を承知のはずです。従って、旧主でもある藤原忠平に宛ててとりなしを願うのです。これは英雄の姿ではなくネゴシエーターとしての将門であり、当時の関東の地方豪族がいかに中央との関係を重視していたかが分かります。

それは、以後の武士の時代の人々も同様で、地方で武士団を組織しながら中央とのパイプも重要視しています。将門はその魁という意味では「ファースト・サムライ」というタイトルは正当なのかも知れません。


願いも空しく、将門は追捕されて敗死します。
中央は、反旗を翻した人物としてネガティブキャンペーンをはり、逆に自分たちを正当化しようとします。「新皇宣言」が作り出され、将門の罪は最大化されます。

しかし、実際の経緯はどうであったのでしょうか。将門は本当に極悪人だったのか。藤原秀郷・平貞盛による追討は本当に正義だったのか。そして、その後の当該地域はどうなったのか。
前述のとおり、古代史にあまりにも無知な私にはどう考えたらよいのかすら分かりませんが、最新の研究成果を終始、興味をもって拝聴することができました。


演題 『「ファースト・侍! 平将門さま」とは:王になろうとしなかった男』
講師 カール・フライデー氏(米ジョージア州立大学名誉教授、埼玉大学教授)
   Karl Friday (1957- ), PhD(History)1989, Stanford University.
著書 The first Samurai: the Life & Legend of the Warrior Rebel, Taira Masakado. John Wiley & Sons, 2008. 他多数
日時 2021年10月9日(土)14:00~16:00
場所 コホミンホール(千葉県我孫子市 湖北地区公民館)
主催 我孫子カルチャー&トーク・将門プロジェクト共同企画




会場の我孫子市湖北地区公民館



講演会前後の時間を利用して、会場近くの将門ゆかりの場所を見学しました。
これだけの将門関係史跡が狭い範囲に集中しているのも示唆的です。関連する史跡は隣接する柏市にもあるようです。


コホミンに近い日秀(ひびり)観音寺と首曲がり地蔵。首曲がり地蔵は将門調伏を祈願した成田山に通じる旧成田街道(現国道356号線)脇にあり顔を背けています。観音寺は平将門の守り本尊と伝えられる観世音菩薩がご本尊。観音堂の屋根には将門の紋、九曜紋が輝きます。


おそらく、永遠に顔を背け続けるであろう首曲がり地蔵。右目をつぶっているように見えるのは、成田方向を嫌っているとも右こめかみを射られた将門を表しているとも言われています。二人の童子(脇侍)を伴っています。江戸時代頃の建立とか。




将門が軍用に作った井戸と伝えられる。左側の崖といい、城(館)や合戦の雰囲気があります。


覗き込むと、僅かに水が溜まっていました。




将門を祀る日秀の将門神社正面から拝殿、本殿を望む。平将門は天慶3年(940)2月に戦没し、その霊がここに運ばれ祀られたとされます。


奥に鎮座する本殿(石祠)。村の人々により代々守られてきたのでしょう。

Nikon Z 6 / NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3
撮影日 2021/10/9


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