猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

黒衣の花嫁

2013-06-11 02:24:49 | 日記
1968年のフランス映画「黒衣の花嫁」。フランソワ・トリュフォー監督。
ある教会で結婚式が行われていた。花嫁ジュリー(ジャンヌ・モロー)と花婿が教会の
玄関から出てきた時、花婿は銃で撃たれ即死した。
近くの家に5人の男が集まっていた。彼らは狩りと女が好きというつながりで、時々
集まって騒いでいたのだった。酔っぱらい、教会の風見鶏を撃とうと話し合ったが、
狙いが外れて花婿に弾が当たってしまったのだった。
5人の男たちはそれきり会うこととはなかった。
事実を知ったジュリーは、男たちに復讐を始める。1人目の男はパーティで知り合った
ふりをして、テラスから突き落として殺した。
2人目の男は毒殺した。
3人目の男は、妻の留守中に、不便だろうから世話をしにきたと、子供の幼稚園の先生を
装って男の家に来た。子供を寝かしつけ、ジュリーは階段の下にある物置に男を閉じ
込め、出られないようにして、男を窒息死させた。
男は死ぬ前に、あの事件で銃を撃ったのは自分ではない、と、撃った人物の名前を言い
残していた。
ジュリーは次にその主犯の男に近づこうとするが、男は別の事件で警察に逮捕されて
しまう。
ひとまず置いておいて、ジュリーは5人目の男に近づく。男は画家で、モデルを装って
やってきた。その時男の友人に会い、友人はジュリーをどこかで見た覚えがあると思った。
1人目の男を殺した時のパーティで、ジュリーはその画家の友人に見られていたのだ。
友人がそれを思い出した時、画家の男はもう殺された後だった。
ところが、連続殺人の容疑者として、ジュリーが成り済ました幼稚園の先生が逮捕されて
しまう。

ジャンヌ・モローは私の好きな女優のひとりだ。ジャンヌ・モローが復讐のために淡々と
男たちを殺していく様子がいい。
ジャンヌってもう85歳なんだな。でも現役で映画に出演していて、喜ばしい。
トリュフォーは”脚フェチ”なのだそうだ。そういえばジャンヌの脚のアップが多かった気が
する。
ラストは「おおっ、そう来るかっ!」という感じ。おもしろかった。

冷たい熱帯魚

2013-06-08 02:45:30 | 日記
2010年の日本映画「冷たい熱帯魚」。
小さな熱帯魚店を営む社本信行(吹越満)は、妻の死後に妙子(神楽坂恵)と再婚したが、若い
継母と娘の美津子(梶原ひかり)は折り合いが悪く、家の中はいつも重い空気が漂っていたが、
気が弱い社本はどうすることも出来なかった。
ある日美津子がスーパーで万引きをしたとの連絡を受け、社本夫婦はスーパーに行った。
店長は警察に届けると激怒していたが、店長の知り合いの村田幸雄(でんでん)の取りなしで
許してもらえることになった。
村田に深く礼を言う社本。村田はスーパーの近所で大型熱帯魚店を経営しており、同業者の
社本に店を見にこないかと誘い、社本たち家族は村田に同行した。
村田の店はとても大きく、社本たちは驚く。村田は美津子を自分の店で働かせないかと提案
した。村田の店では数人の若い女性を雇い、寮生活をさせていた。皆問題のある女性だった。
家を出られることが嬉しくて、美津子は働くと言い出す。村田と妻の愛子(黒沢あすか)は
美津子を責任持って預かると約束し、社本夫婦は村田に押し切られる形になってしまった。
後日社本は村田にビジネスの話を持ちかける。同業者なのだから組んで儲けようと言う。
それは高級熱帯魚への投資だった。村田に恩がある社本ははっきりと断れず、吉田という男
(諏訪太朗)と村田との取り引きの場に同席させられる。これをきっかけに、社本はおぞましい
事件に巻き込まれることになる。

おもしろかったー!!かなりグロテスクだと言われていたが、たいしたことはない。
実際に起きた事件をベースに作られている。
とにかくストーリーがおもしろかった。主要人物である吹越満、でんでん、黒沢あすかの
演技がすごい。鬼気迫る演技とはこういうものかと思った。
最初の頃、後妻と娘の仲をなんとかしようとしない社本にイラついた。娘は後妻を暴言を
吐きながら蹴ったりしているのに、間に入ってやれよ、と思った。
まあ後妻の方も、食事は全て冷凍食品で、人妻なのに胸の谷間が見える服を着ているようじゃ、
娘は死んだ母親と比べて嫌になるかもしれないが。
でもこの娘は最後の最後まで憎たらしい。
村田に脅されて、言いなりになっていた社本が反撃に出る場面は圧巻。人間の怖さがよく
表現された映画だった。
繰り返すが、吹越満、でんでん、黒沢あすかの演技がすごい。もう1度見たい。

園子温監督は、ラストに近いある場面で終わらせてもいいと思った、と言ったそうだが、私も
その方が良かったかもしれない、と思った。

赤いアモーレ

2013-06-03 02:36:22 | 日記
2004年のイタリア映画「赤いアモーレ」。
外科医のティモーテオ(セルジオ・カステリット)の勤務する病院に、バイク事故で瀕死の
重傷を負った彼の娘アンジェラが運び込まれてきた。愕然とするティモーテオ。
手術を担当する医師は、必ず助けると言った。
動揺し、窓の外を見ていたティモーテオは、昔愛した女性の幻影を見る。
その幻影に、「娘を助けてくれ」と祈る。
15年前、才色兼備のエルサ(クラウディア・ジェリーニ)と結婚し、海辺の大きな家に住み、
幸せな結婚生活を送っていたはずのティモーテオは、何か満たされないものを感じていた。
ある日立ち寄ったローマ郊外の貧しい町で、イタリアという女性(ペネロペ・クルス)と
運命的な出会いをする。
初めて会ったその日に、ティモーテオはイタリアの家でレイプまがいに彼女を抱いてしまう。
後日謝りにいったティモーテオだが、また関係を持ってしまい、イタリアを深く愛するように
なってしまう。
やがてイタリアが妊娠する。ティモーテオはエルサと離婚してイタリアと一緒になることを
決心するが、帰宅するとエルサからも妊娠を告げられ、言うタイミングを逃してしまう。
そのことを察したイタリアは勝手に中絶し、故郷に帰るとティモーテオに告げるが、ティモー
テオは「君なしでは生きられない」と泣く。

すごくおもしろかった。恋愛映画は普段見ないのだが、これはおもしろそうな気がして見て
みた。いわゆる不倫の物語だが、感動的だった。
とにかくペネロペ・クルスがすごい。本当にペネロペ?と思う程、髪型、メイク、服装、
歩き方などで、貧しく品がなく孤独な女性を表現している。
このイタリアという女性、子供の頃には父親から性的虐待を受けていたり、最初から最後まで
それはそれは不幸なのだ。
だが、ティモーテオが求めることには必ず応え、彼を大きな愛で包む。言ってみれば聖母
マリアのような女性だと思った。この辺はイタリア映画らしい。
不倫はいけないことだ。けれどもティモーテオはイタリアを深く愛してしまった。彼のして
いることは確かに身勝手なことだ。だが、愛してしまった以上これはもう仕方がないのだ。
私はティモーテオを責める気にはならない。イタリアを愛したのは運命だったのだと思う。

ペネロペ・クルスとセルジオ・カステリットは、イタリアのアカデミー賞と言われるドナ
テッロ賞で、主演女優賞と主演男優賞を受賞したとのこと。
納得の熱演だった。かわいそうなイタリア。とてもいい映画だった。