近所の公園でね。
お子様方が、やってたんです。
ごっこ遊び。
ん~。
正確には、ごっこ遊びじゃないかな。うん。
『ラララライ体操』を、延々とやってた。
強いて言えば、『藤崎マーケットごっこ』
「らぁ、らぁ、らい、らい、らい、……」
「ラララライ!? ラララライ!? ラララライ!? ライ!? イケイケゴーゴー……」
◇
そんなお子達を、ぼくは微笑ましく見ながら、通り過ぎてたんだ。
『あぁ、こんな子達が、いつか日本を背負って、立っちゃうんだな』
そんな、暖かい瞳で。
でも。
……………………。
そんな穏やかな感情は、五秒で過去へと流れた。
◇
フツフツ。
メラメラ、メラメラ。
わき上がってく、一つの感情。
ぼくの心を、みるみる染めていく、紅蓮の熱情……。
それは。その名は。
嫉妬心。
「……いいなぁ。こんな平和な夕暮れ時に、誰の目も気にせず、ラララライ体操をのびのび出来るなんて……」
「あぁ。ぼくだって、そんなフリーダムな心を持てていたなら……」
「いっそ、ぼくも、あの二人に、混じっちゃおうか……」
◇
ぼくは、公園の前で、いつの間にか立ちつくしていた。
「ラララライ!? ラララライ!?」
「ラララライ!? ライ!? ライ!?」
お子達は、ぼくなど眼中にないように、ひたすら、ラララライ体操に、青春をぶつけていく。
幾度も、幾度も。
ぼくは、爪を……噛んでいた。
「ぼくの方が……、上手い……っ!!」
「確かに、この子達、ラララライ体操をやり込んでる!! でも……でもね!?
ぼくが、一番……ラララライ体操を、うまくやれるんだ!!(cv:古谷 徹)」
嫉妬心が、ぼくの心の中で、激しくバーニングしたんだ。
あと少しで、ぼくは公園に飛び込んで、三人目の藤崎マーケットになるところだった。
ぼくを内側から、衝動という名の黒い獣が突き上げる。
「上着を脱げ!」
「そしてTシャツの袖を破り取れ!! そうすれば、なんちゃってタンクトップ姿だ!」
「汝、タンクトップ姿となって、あの公園に降り立つべし!!」
「貴様は使徒だ! 聖地に降臨する、三人目の藤崎マーケットだ!!」
いや。
危なかった。
上着の、第3ボタンまで、外しかけた。
ホントに。
危なかったよ。
でも。
――だめだ。ぼく! 今ここでラララライ体操をやっちゃダメだ! ――
周りを見るんだ! このトワイライト!! 夕飯の買い出しから帰ってく奥様方が、わんさと居るこの商店街沿い!!
今ここで、藤崎マーケットになりきること。
それは、
ぼくが培ってきた全てが、台無しになるってことなんだぞ!?
何とか、ぼくは。
近年希に見る自制心で、ラララライ心を抑え付けた。
ぼくは、自分自身に勝ったんだ……。
自己評価が低いぼくだけど。
今日は、思いっきり褒めてあげたい。
……褒めてあげたいのに。
何故だろう?
このぼくの胸をちりちりと焦がす、微かな切なさは……いったい何だろう?
◇
あぁ。分かったぞ。
ぼくは……いつの間にか……
恥とか。
外聞とか。
周囲の耳目に縛られる……
そんな、
そんな、ツマンナイ……オトナに、なっちゃってたんだね……。
さよなら、ネバーランド。
ぼくは、ピーターパンには、なれなかったよ。
さよなら。
まだ見ぬ、ぼくのティンカーベル。
次のピーターパンに、よろしく。
きっとその子は、……ラララライを、誰が見てようと、演じきってくれるはずさ。
~fin~
細分化しちゃってて……、みんなが知ってる
方っていうのは少ないのではないでしょか?
だから、知らなくても全然、普通だと思いますですよ? うん。
ラララライ体操。
一回きりの弾けた感覚と引き替えに、
全てを……失いそうですけど、
やってみたいです……。
この間、エンタの神様を見て「あーー これか」って納得。確かにこれを思い切りやれたら楽しそうですねえ。
早速のコメント、有り難うございます~。
>変な人
間違いなく、変な人ですよね!?
ぼくは、危ないところで常識人側に
留まったんですね~。
まさか、あんな場面がぼくの分水嶺になっていたとは。
人間って、分かんないもんですね~(遠い目)
笑っていただけて、めっちゃ嬉しいです!
今後とも、宜しくお願いします!!
いいなぁ。ああいう風に、自由に生きて
いきたいわぁ~、って。
笑っていただけると、ホント、嬉しいです♪
て・・・・・、すっっっごく吹いてしまったんですが!!
そんな状況でラララライを演じきってくれるそのピーターパンは、私が思うに変な人として世の中に認められてしまうのではないですか;;でも・・・・・もしいたならば尊敬しますね^^;
とても面白く読ませていただきましたwww
また伺いますね^^b
そして綺麗に締めたーっw
近年稀にみる自制心で吹きましたw