置かれた場所で咲く

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夕闇

2007-08-29 01:19:15 | インド旅行記
ふと目を下に移した。座っていた石段を五段ほど降りた斜め左側に、ここまで連れてきてくれたリクシャーワーラーのおっちゃんが独りぽつんと座っている姿が見えた。
その背中は少し淋しそうで、小柄なおっちゃんがよけいに小さくみえた。
時計をみると、既に8時近かった。3時間もここにいたのだ。


「あたしちょっと、おっちゃんのところ行ってくる。」

マリオネットみたいにぎこちなく、やや痺れた身体を動かして、わたしはおっちゃんの隣に腰を下ろした。
どうしても、一言伝えたかった。


「連れてきてくれて、本当にありがとう。長い時間、拘束しちゃってごめんなさい。あなたとの出逢いに、心から感謝しています。」

大丈夫だよ、だってわたしたちは友達じゃないか。

虫歯だらけの歯を覗かせて、再度トモダチーと言い、わたしたちは笑い合った。


家族のこととか、日本のこととか、またたわいのない話が始まった。
心なしか、肌を取り巻く熱い空気が、少しずつ覚めてきている気がした。
じゃあ・・・と友人の隣に戻ろうとすると、おっちゃんの声に引き止められた。



「・・・・・・・くれないか?」




      ・・・え・・・・・・?

聞き違いかと思った。聞き違いであってほしかった。
おっちゃんの青いシャツが、まだ点いている蝋燭の明かりに怪しく照らし出されていた。



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