雲の向こう

風任せシャッター任せ

小仙丈沢

2014-09-15 21:28:30 | 登山
その沢には誰もいなかった。
深い野呂川の深く刻まれた谷の奥へと3000メートルの稜線から豊富な水が流れ落ちていた。









【倒木に埋め尽くされジャングルジム状態の下部】





【大滝①】





【大滝② 左岸のルンゼから越えた】



出合こそ春先の大雪で薙ぎ倒された大木で埋め尽くされていたがやがて高山らしく明るく開けた渓相は幾つかの大滝を掛け、岳樺の中へ微かな踏み跡は続いて行く。
枯れそうで枯れない水脈が砂礫の中に消えて行く頃、静寂に包まれた小仙丈カールの底に着いた。




【荷物が重くてお疲れ気味】





【ちょうど良い平坦地に幕営する。もう最高】


濡れた沢靴を脱ぎ、広いカールの底にぽつんとテントを張る。
何の音もしない。誰もいない。自分達だけの時間。









翌朝、夜明け前の稜線に向けて急斜面をひたすら登る。
足元から崩れる砂礫とハイ松に喘ぎながら振り返ると東の空が赤く燃える。
もう少し、あと少し…





【静寂に包まれた小仙丈カール】






【朝焼けに燃える山稜】








稜線から仙丈ヶ岳の山頂に立つ頃、稜線はもう多くの登山者で賑わっていたが此処に至るまでの充たされた想いで足取りは軽かった。
これだから沢は止められない。








【賑やかな稜線】


こんな棒一本で?

2014-09-11 00:45:42 | 日記
こんな棒一本で?

”おまじない”みたいなモノだと思っていた。
腰高でユルリとした乗り味は良しとして何となくキレが無いステアフィールにもうすっかり慣れてしまっていたがレヴォーグだのS4だのとやや走りに振った新型が出ると気にならないでは無かった。
BE5レガシィの四隅に根を張ったような乗り味を懐かしい気持ちで思い出していた。
あの頃はドライブが楽しかった。


【出たてのS4 四本出しのマフラーがカッコイイ】


Webで読むタワーバーの効果は華々しい性能向上の羅列ばかりだった。
棒一本でそんなに変わるもんか。
そう思いつつもあんまり良いことばかり書いてあると何パーセントかは信じたくなる。
人間なんて暗示に弱いものだ。
3万円位なら試していいかも…

そんなときにスバルのI店長からそろそろ一年点検ですよと電話が入った。
思った時に決断しないとなかなか決められないのが性分。
「点検ついでにフレキシブルタワーバーを付けようと思いまして」
言っちゃったらもう付けるしかない。

この店はいつ来ても”カッチリ”した雰囲気だ。
カーディーラーの適当にいい加減なユルさがないのはスバルの特徴なのか店長の方針か。
そして何時も思うのはスバル車オーナーの独特さだ。

点検や修理の待合室に出入りするのはいかにも”オタク”そのもののユーザー。
スバオタなどと揶揄される独特の雰囲気を持ったスバリストだ。メカニック相手にかなり突っ込んだメカ的相談をぶってるのはトヨタ車ユーザーには絶対いないだろう。
私もそんな風に見えるのか?…イヤだなぁ。



【いつもお世話になってるスバル店】



【愛車点検中…】


愛想が良く信頼のおけるI店長に送られてR17に走り出た。
初めの信号でストップしたあと一気に加速する。
「あれ?」 確かに違う。
プラシーボ効果を大いに疑いながら強めのレーンチェンジ。
スパッと頭が入りピッタリ収まる。確かに違う。
心配した共振やノイズの増加は感じられない。だけど確かにフィールは変わった。
それが感じられない程鈍感では無い方だ…と思っている。

ステアの切り始めから応答するまでの時間が確かに早くなっている。”逃げ”が無い感じ。
これは…良いんでないかい?なかなか。



【イマイチ地味なパーツ】





【STIの文字が華々しい】



”こんな棒一本で?”と半信半疑だったが値段からするとコスパが非常に高い買い物だった。
ドライブが少し楽しくなりそう。



娘の彼氏

2014-09-10 16:28:36 | 日記
娘から3年近く付き合っている彼が正式に挨拶に来たいと言い出した。
娘はこの春、銀行の総合職から損害保険会社へと転職したがその銀行入社時の同期の男の子と付き合っていた。
実は車で迎えに来た彼と何度か顔を合わせていたしニョーボと一緒に食事をしたこともあったので何となく覚悟はしていたが、いざ「結婚」という現実的なキーワードから眼をそらしていた。
でも今ハッキリとこういう事態を迎えていわゆる娘の父親として「来るときが来た」と腹を括る時が来たと思った。




何だか娘の顔が急に遠い思い出のように思えてきて無性に寂しさがこみ上げてきた。
でもこれは娘を持つ父親の誰もが通過しなければならない「儀式」なのだ。




当日その「爽やかすぎる」笑顔で娘の彼氏は堂々と「○さんと結婚する事をお許しください」と言った。
これほど晴れやかに何の衒いも無く言ってのけるそのアッケラカンな無邪気さにチョット笑いそうになったが、むしろその子供っぽいの素直さに何だか胸のつかえがスッと落ちた気分になった。
ニョーボは単純に「カワイイわねぇ…」と感想。
男親と女親の違いだろうか。





もうあまり昔を振り返るのは止めようと思う。
楽しかった思い出を振り返るのは悲しいだけで前向きじゃない。
どうせニョーボと二人っきりになるなら新しい思い出を作ることだけ考えるしかない。

WG-4

2014-09-10 16:08:37 | 日記
後生大事に一眼レフを抱えて山に登っていた。
OLYMPUSのE-5という全天候型に近いカメラだったが所詮「防塵防滴」であって「防水」では無い。
水圧が掛かれば浸入するしそうなったら修理代もバカにならない。
以前、埃だらけになったのでキッチンでまる洗いしたら背面ボタンが誤作動し焦ったことがあった。
たぶんボタンの内側の接点に水が入り悪さをしたのだろうがしばらくして完全に乾燥したら正常に戻った。



つい最近沢登りにE-M1を持ち出したが、滝の前でパチリ→すぐにビニールに入れてザックにしまい、次の滝でまたパチリ。これでは全く捗らない。
やはり沢では「完全防水」でアチコチぶつけてもタフなカメラが良い。
私は根っからのOLYMPUSユーザーなのでTG-3を狙っていたのだが値段が高い。
たかが「コンデジ」に大枚を叩くのもシャクなので値段が下がるのを待っていたが、このテは次期機種が出る頃には店頭から姿を消してしまい結局買いそびれることになる。
それでToughシリーズに負けない機能を持った機種が出ているならWebで性能比較をしてみることにした。

「WG-4」
モノはPENTAXのWG-3と同じらしいがRICOHブランドだからかGPS機能を付けても諭吉が2.5枚程度。
カラビナ付…と言ってもこれは「ナスカン」というオモチャではあるが。
だけど見た目がアウトドアっぽくしかもレンズが本体の真ん中にあるのが気に入った。
カメラはやはりド真ん中にレンズがなければいけない。

使ってみるとコンデジ共通の背面液晶を見ながらでOVFに覗くのに慣れた身にはイマイチ馴染めなかったが沢で記録を撮る程度ならこれで十分だとおもった。
オモチャのカラビナでもハーネスにぶら下げれば携行も楽そうだし。

お盆休みに一泊程度の沢登り山行を企画してが今年は例年になく悪天が続いた。
仲間達は剣の合宿に出掛けていて私は何だか置いて行かれたような気分になってニョーボと何処か山の空気に包まれてシュラフにくるまりたくなったので計画を温めていたのだがこの天気ではしょうがない。


水根キャンプ場先より入渓




水量が多く水も冷たい







一日だけ好天が予想されたのでWG-4の試写を兼ねて奥多摩の水根沢に出掛けることにした。
今年の大雪の影響からか沢は倒木で荒れていたが水量の多いこの渓は夏の暑さを忘れるには恰好の山行となった。
一箇所だけ巻くのに急斜面の泥壁でヒヤヒヤしたが後は何の問題も無く沢登りの楽しさを満喫した。
ついでにWG-4の試写だが、まぁ所詮コンデジなので画質は期待していなかったがやはり「それなり」の絵を吐き出せるに過ぎなかった。まぁ記録用のカメラと思えばそんなモノだろう。


山靴の思い出

2014-08-10 08:48:35 | 登山
今まで沢山の山靴を履いてきたが登り込んでいる人に比べて多い方では無いかも知れない。
山を始めた頃は手軽に登山靴が手に入る時代では無かったし値段もそれなりだったので山行形態に合わせて使い分けるなどという器用な事は出来なかった。
初めて山靴を買ったのは大学で山岳系のサークル(サークルと言っても殆ど体育会系だった)に入ったときで当時15,000円位だったと記憶している。新入生分をまとめてお店に行き簡単にサイズを測って購入した。
水道橋あたりの「アイガー」という山道具屋で一緒に72㎝のキスリングや雨具替わりのポンチョなども買わされた。
この靴はそのサークルを辞めて社会人山岳会に入ってからも使い、雪の有る無しに関わらず縦走も岩場もこれ一足で済ませていたのであっという間にすり減りビブラムを二回張り替えたところで皮の防水がダメになって次の靴を探すことになった。
今思うとこの靴で屏風の一ルンゼなどよく登ったものだと思う。


山友が「安い店があるから行ってみないか?」と誘われ登山用品の卸かなにかで格安のノルディカを購入した。
赤に染色された裏出皮のお洒落な靴でこれも夏冬構わず岩や氷で酷使した。気に入った靴だったがこれも二回目の張り替え頃には防水も効かなくなり、アイゼン合わなくなったので役目を終えた。

この頃から岩場は底の固さで小さなスタンスに乗るスタイルから、軟らかいフリクションを効かせて登るのが流行りだした。ヨセミテのアメリカンスタイルが輸入されたからだと思う。

私も重い重登山靴より軽くてフリクションの効く、今で言うローカットタイプで無雪期を済ますようになったがこの手は底の張り替えが出来なくてすぐに買い替えなければならなかった。



【30年以上履き続けたゴローの靴とガリビエールのヘルメット】


輸入品も安く手に入るようになり布張りGore-Texのザンバランを夏用に、ゴローの重登山靴を冬用に揃え、岩と沢はクライミングシューズとフェルトシューズの体制となった。
このゴローの重登山靴は結婚前に買ったもので冬専用に使っていたので底は殆ど減らないままビブラムが硬化する度に張り替えて履き続けてきたシロモノだったが、流石に30年近く経つといくらワックスをすり込んでも防水が効かなくなりアチコチひび割れてきたのでお役御免となった。


【たぶん最後の冬靴となるであろうゴローのエグリーは凄く重い】





とうに世の中はプラブーツの時代を経て化繊全盛となっていたがこの手は履き続けても足に馴染んでくれないと聞いていたのでイマイチ触手が伸びなかった。
友人が「今、良い冬靴を作っておくと棺桶まで履いていけるぜ」と言うで思い切って人生最後の重登山靴としてゴローでエグリーをオーダーした。インナーの付いたダブル仕様だ。
値段はオーダー料やら何やらで6万近くしたがそのピッタリした包まれ感と皮の味わい深い感触は眺めているだけでも楽しくなる靴となった。
持ってみるとかなりの重さで肉厚のアイゼンと併せると足運びがやや辛くなったが保温性は抜群だった。

ニョーボ用にと冬靴を選びに池袋の秀山荘へ行ったらガルモントのエピックプラスが在庫処分で並んでいた。
革靴に比べとても軽く、Gore-Texデュラサーモで保温性もあって買ってみたが幅広甲高のニョーボの足に合わなくて一回の山行でダメ出しとなった。ところが私が履いてみるとヒョロ長の私の足型にピッタリで冬壁、氷用に使うことにした。








【同じ足でこれほど違う。重い訳だ。】



現有装備はアプローチ用にモンベルのハイキングシューズ、登攀はお馴染み5.10のスパイア、沢は秀山荘、冬用にゴローとガルモントの二足体制となって当面は補強の必要が無くなった。
これで残りの岳人人生を何とか賄えそうな状況である。


【フェルトを張替済み、仕上げが雑です。】