発達障害の学生 就活苦戦 大学など支援で活路
2020年12月2日 07時16分 ・東京新聞
新型コロナウイルスの影響で先の見えない状況が続く就職活動に、発達障害のある大学生たちが不安を募らせている。もともとコミュニケーションがうまくいかず、計画を立てたり書類をまとめたりするのも苦手な学生が多い上、オンライン面接の導入など、採用方式の急激な変化にも直面しているからだ。「精神的に追い込まれる学生が増えるのでは」と大学関係者は危ぶむ。
「面接で返答に困っても、下を向いて黙ってしまうのは駄目」。愛知県長久手市の県立大長久手キャンパスで十一月中旬、障害者向けの公務員試験の最終面接を控えた同大四年の女子学生(22)に、障害学生支援コーディネーターの瀬戸今日子さん(60)がアドバイスした。女子学生は「計画を立てて行動するのが苦手。就活が始まった三月は、何をすれば良いのかも分からなかった」と振り返る。
コロナ禍で合同企業説明会は軒並み中止され、大学も休校に。例年なら説明会や友人の動き、大学職員との会話から、就活に必要な情報をつかめたが、今年はそれができない。瀬戸さんは「自分で情報を取り、計画を立てなくてはいけない。発達障害のある学生にはきつい状況」と指摘する。
女子学生には発達障害の特性の一つで、周囲の音が邪魔して相手の話の内容が理解できなくなるなどの「聴覚過敏」がある。就活当初は手当たり次第に十社以上に履歴書を送ったが、面接を受けることすらできないことも多く、ストレスで体調を崩した。四月から瀬戸さんにウェブ会議システムZoom(ズーム)などで相談。障害のことをどう説明するかや、企業側に配慮してほしい内容を一緒に考えるうちに前向きになり、面接の練習も繰り返した。
「人と向き合うのが苦手な人間に社会は厳しい」と女子学生。瀬戸さんは、同じようにつらい状況にある学生を把握し切れていないのではと心配する。今、以前から関わりのある学生を中心に約五十人とメールなどで連絡を取っているが、一人で対応することに限界を感じているという。
障害者手帳や障害の診断があれば大学四年生から利用できる民間の就労移行支援事業所にも、相談や利用申し込みが増えている。名古屋市中区の「NotoカレッジキャリアセンターNEXT」では、各学生の職業への興味や能力を分析して適性を把握し、書類添削や面接練習、職業訓練に取り組む。徳本孝之センター長(46)は「苦手な面接も、何度も練習を繰り返すことで克服できるように支援している」と説明。コミュニケーション力の向上のため、カリキュラムにボードゲームも取り入れている。
大学四年の時からNEXTに通った名古屋市の男性(23)は十月、愛知県内の企業に障害者枠で就職し、調査測量業務に励んでいる。今春に別の企業から一般枠で内定を得たが、辞退。NEXTで自己分析をするうちに「障害について理解してもらい、必要な支援を受けながら働く方が良い」と思うようになり、障害者手帳を取得して就活をやり直した。「適切な情報とアドバイスを得られたことが就職に結び付いた」と喜ぶ。
自分で時間割を組むなど主体的に動かないといけない大学生になってからや、就活をする過程で初めて、自身の発達障害に気付く学生もいる。瀬戸さんは「一人一人の学生にきめ細かな支援ができるよう、各大学が専門家を育て配置していくことも必要だ」と話す。
2020年12月2日 07時16分 ・東京新聞
新型コロナウイルスの影響で先の見えない状況が続く就職活動に、発達障害のある大学生たちが不安を募らせている。もともとコミュニケーションがうまくいかず、計画を立てたり書類をまとめたりするのも苦手な学生が多い上、オンライン面接の導入など、採用方式の急激な変化にも直面しているからだ。「精神的に追い込まれる学生が増えるのでは」と大学関係者は危ぶむ。
「面接で返答に困っても、下を向いて黙ってしまうのは駄目」。愛知県長久手市の県立大長久手キャンパスで十一月中旬、障害者向けの公務員試験の最終面接を控えた同大四年の女子学生(22)に、障害学生支援コーディネーターの瀬戸今日子さん(60)がアドバイスした。女子学生は「計画を立てて行動するのが苦手。就活が始まった三月は、何をすれば良いのかも分からなかった」と振り返る。
コロナ禍で合同企業説明会は軒並み中止され、大学も休校に。例年なら説明会や友人の動き、大学職員との会話から、就活に必要な情報をつかめたが、今年はそれができない。瀬戸さんは「自分で情報を取り、計画を立てなくてはいけない。発達障害のある学生にはきつい状況」と指摘する。
女子学生には発達障害の特性の一つで、周囲の音が邪魔して相手の話の内容が理解できなくなるなどの「聴覚過敏」がある。就活当初は手当たり次第に十社以上に履歴書を送ったが、面接を受けることすらできないことも多く、ストレスで体調を崩した。四月から瀬戸さんにウェブ会議システムZoom(ズーム)などで相談。障害のことをどう説明するかや、企業側に配慮してほしい内容を一緒に考えるうちに前向きになり、面接の練習も繰り返した。
「人と向き合うのが苦手な人間に社会は厳しい」と女子学生。瀬戸さんは、同じようにつらい状況にある学生を把握し切れていないのではと心配する。今、以前から関わりのある学生を中心に約五十人とメールなどで連絡を取っているが、一人で対応することに限界を感じているという。
障害者手帳や障害の診断があれば大学四年生から利用できる民間の就労移行支援事業所にも、相談や利用申し込みが増えている。名古屋市中区の「NotoカレッジキャリアセンターNEXT」では、各学生の職業への興味や能力を分析して適性を把握し、書類添削や面接練習、職業訓練に取り組む。徳本孝之センター長(46)は「苦手な面接も、何度も練習を繰り返すことで克服できるように支援している」と説明。コミュニケーション力の向上のため、カリキュラムにボードゲームも取り入れている。
大学四年の時からNEXTに通った名古屋市の男性(23)は十月、愛知県内の企業に障害者枠で就職し、調査測量業務に励んでいる。今春に別の企業から一般枠で内定を得たが、辞退。NEXTで自己分析をするうちに「障害について理解してもらい、必要な支援を受けながら働く方が良い」と思うようになり、障害者手帳を取得して就活をやり直した。「適切な情報とアドバイスを得られたことが就職に結び付いた」と喜ぶ。
自分で時間割を組むなど主体的に動かないといけない大学生になってからや、就活をする過程で初めて、自身の発達障害に気付く学生もいる。瀬戸さんは「一人一人の学生にきめ細かな支援ができるよう、各大学が専門家を育て配置していくことも必要だ」と話す。