『チケ』 フリオ・デ・カロ6重奏団
”Chiqué” Julio De Caro 【YOUTUBEより】
初期のバンドネオン奏者リカルド・ルイス・ブリニョーロが1919年に発表したタンゴの古典的名曲です。
タイトルの”Chiqué”はフランス語の「シック(chic)」から転じた言葉で上品で洗練されているさま、あるいは「粋」という
意味合いです。
ブリニョーロがタンゴ喫茶「T・V・O」の美人ダンサーに贈った曲なのですが本来の「粋」というよりも、「粋がった」とか
「見栄っ張り」という意味合いも込められているようです。
アルゼンチンにレコード会社が生まれたのが1900年で、それまでの筒型から円盤型のSP盤(当時は片面のみ)へ進化
して家庭にも蓄音機によって音楽を楽しめる時代に入るのですが、1926年まではアコースティック録音の時代でした。
当時の録音技術ではヴァイオリンの音色は拡散されてまともに捕捉できなかったたため、シュトロー・ヴァイオリン
(コルネットヴァイオリン、ホーンヴァイオリン)が発明され、デ・カロもこのシュトロー・ヴァイオリンで録音したことは
あまりにも有名です。
フリオ・デ・カロ6重奏団のこの演奏は1930年前後と思われますので、アコースティック録音から電気録音の時代に
入ってからの録音なのでしょう。かなり音質が悪いようですが、逆にそのために枯れた演奏を感じることができて
ある意味でデ・カロらしくも思えます。
参考までに↓の画像がシュトロー・ヴァイオリンです。
かなり重そうなのに加えてラッパが弓の動きを邪魔しそうで演奏するのも大変だったことでしょう。
ブレイクとかジャズ的な手法がふんだんに使われ、デカロとの作風の違いが感じられます。
フランシスコ・ロムートといえば1925年頃のデビューがオデオンでした。
1930年代になってからヴィクトルに移っており、この頃から西洋風なハーモニーや
アクセントによる新感覚の演奏スタイルでさらに大きく開花し、
彼の『ラ・クンパルシータ』は名演中の名演といわれました。
ジャズ・ピアニストの経験を生かした音楽的にも優れたアレンジで
デ・カロとはある意味対照的な位置にあったといえるのかもしれませんね。
コメントありがとうございました。