焼肉だァ! ステーキだァ! すき焼きだァ! と、今でこそ多くの日本人が牛肉を食べるようになったが、その歴史は意外と浅い。ペリーが横浜へやって来るまでの永い期間、日本では獣肉食を禁じていたのだ。 それは百済から伝来した仏教の教えに従ってのことだった。676年、天武天皇がウシやウマ、ニワトリの肉を食べることを禁じた。それ以来、日本人は1200年にわたって肉食を断ってきたのである。(まったく牛肉を食べなかったのかというと決してそうではなく、滋養のため薬として食べさせていたという話もある) ところが1859年、横浜が開港すると、外国人と一緒に牛肉食の文化が入ってきた。新し物好きな人間がさっそくこれを取り入れた。 1862年、横浜入船町(関内)の居酒屋「伊勢熊」が牛鍋屋を開業している。これが日本で初めての牛鍋屋だとか。 しかし、欧米の肉料理のように香辛料を使って調理するのはもっとあとのことで、最初は日本の調味料である味噌や醤油で煮込んでいた。外国のものを日本風にアレンジして取り入れるという、我が国得意のワザがここでも発揮されたのだ。 こうして、回避されてきた牛肉が1200年間の眠りから覚め、美味しい和食として蘇ってきた。 仮名垣魯文は『安愚楽鍋』の中でこんなことを書いている。 「牛肉はたいへん美味しい。この肉を食べたら猪肉や鹿肉は食べられない。西洋では1600年前から食べるようになったが、それ以前は、その国の王様や貴族でなければ、簡単に口へ入らなかったものだ。我国も文明開化といって開けてきたから、我々までが食べられるようになったのは、実にありがたい。それをいまだに野暮な奴らが食べないでいる。福沢諭吉の書いた肉食の説でも読ませたい。」 当ブログは仮名垣魯文や福沢諭吉にはかなわないので、美味しい写真入りで現代の牛肉料理を紹介していこう。 これは先日食べた「獅門酒楼」のランチ。「牛バラのココナッツカレー煮込み」(620円)だ。中華テイスト漂うカレーの奥からココナッツの香りがフンとしてくる、ちょっといい感じのカレーだった。 横に添えられている青菜が、通常の牛バラ飯のイメージを引き継いでいるようだ。 ジャイアントコーンのような大きな黄色い粒はヒヨコ豆。ヒヨコのような可愛い形をした豆で、インドのカレーではよく使っているらしい。 牛バラも柔らかく煮込まれていてホロホロと美味しい。カレーにまみれたバラ肉が口中でとろけていく。 《ああ、旨いなぁ~~~~》なんて感慨に浸っていたその時、重大なことを思い出した。 そーだ! 今日の夜は「太田なわのれん」で忘年会だったんだ! 牛鍋のコースだったのを忘れていた!! なんてことだ。忘年会で牛肉を食べるその日のランチでも牛肉を食べてしまうなんて… でもねぇ、「獅門酒楼」の日替わりランチは、そのときを逃すと今度はいつ同じものが出てくるのか分からないからね。夜のことはすっかり忘れてしまい、美味しそうな牛バラのココナッツカレー煮込みを注文してしまったというわけ。 忘年会! で、こちらはその夜行った「太田なわのれん」。2階へ上がる階段の途中にステンドグラスがあった。どことなく文明開化の雰囲気が漂っている。 “先付”。右の器は、小松菜にジャコと湯葉揚げの千切りをまぶしたもの。左の器は、名前も素材もよく分からない和風ムースのようなもので、カニ、トンブリ、ザクロの実がのっている。ソースはカニ味噌をあえたものだ。 上品で美味しい。早くもこれだけで日本酒が2本ほど空いてしまう。 2品目は“吸物”。汁っぽくない吸物で、酒粕の風味が! けっこう濃厚な味わいである。こういうの好きだなぁ。 この時点では、具が何なのかまだ分からなかったが… そのコロモを剥がしてみたら、タラ(?)の白子だった。これまた口蓋にまとわり付いてくるような濃密さ。 酒粕風味の汁とよく合う。これでまた日本酒が2本は空いてしまった。 3品目は“お造り”。イカ、マグロ、そしてもう一つは何だったかな、魚の名前を忘れた。というよりも、酔っ払って覚えていないのね。 もちろん、このイカも濃厚。ネットリとしていて、酒で口中をすすぎたくなるくらいだ。 これで日本酒がさらに2本。旨すぎる~。 続いて4品目の“焼き物”。もうこの時点になると、料理の名前も魚の種類もすっかり記憶にない。ただただ美味しかったことだけは覚えている。 あっ、そうだ、3枚の丸いものは、たしかクワイのチップだったと思う。 さらに5品目は“炊合わせ”だ。和風のロールキャベツが上品に盛り付けられていた。 中身は何だったっけ… ネギを退かすと、その下に黒いものがあった。これは海苔だ。 さらに菜の花と梅が脇を固めていた。これまた美味しい。 そして本日のメインイベント~。ファイナルマッチ60分1本勝負! 真打登場。 文明開化の音がする“牛鍋”だ! 味噌味でグツグツと煮込む。牛肉のほかには豆腐、椎茸、ネギ、春菊が参加しているが、なんだかセレブを取り囲む庶民のような気がしないわけでもない。 でも、セレブを盛り上げるためだけの役割だと侮ってはいけない。 セレブの旨み混じりの甘辛味噌ダレを充分に吸い込んだネギも結構美味しいぞ。 味噌にまみれた豆腐や春菊もうまい! それらを仲居さんが一人ひとりの器に取り分けてくれる。 すき焼きのように溶き卵に浸して食べる。 どえりゃ~うみゃ~だがや! うみゃ~て、いかんがや! 美味しさのあまり、突然、名古屋人になってしまったが、さして理由があるわけではない。 ただ、なんとなく味噌カツや味噌煮込みうどんを思い出しただけである。 鍋にはさらに肉などが投入され煮込まれていく。 いままでの5品を無しにして、もっと鍋を増やしてもらってもいいくらいだ。 そうだ、5対1の大型トレードね。 でも、あれかな、牛鍋だけだと飽きちゃうかな。こんなコースがいちばん美味しく食べられる陣容なのかもしれない。 最後は鍋に味噌ダレだけが残る。誰もいなければ、ここにご飯を投入して掻き混ぜて食べてしまうんだがな。たぶん、美味しいと思うよ。 食後のデザートは水菓子。ここまで来ると、もうほとんど感想はない。 それにしても美味しい忘年会だった。しかも、昼メシから牛肉が続くなんて、信じられない1日。ご馳走様でした。 翌日のランチ! そして翌日。ランチは「ショーラパン」のハンバーグ! 朝メシは軽く野菜サラダだったので、3食連続で牛肉となった。 しかも和洋中の揃い踏みだ。 ここ「ショーラパン」のランチでハンバーグが出たのは初めてだ。噂には聞いていたけど、うん、美味しい! ただ、脇役がグリーンピース・コーン・人参の温野菜とパスタというのが、ちょっと物足りない。ハンバーグ自体で勝負なのだろうが、もう少し変ったモノを添えてくれるとありがたいのだが。 それとライス。これも増量していただけたら… 食後のデザートとコーヒー。 前日の「獅門酒楼」に続く美味しいランチでした。牛肉に感謝! ←素晴らしき横浜中華街にクリックしてね |
『ざんぎり頭を叩いてみれば文明開化の味がする』
ってふっと思い出しました。
やっぱり牛肉ってどんな肉でも味が濃くて美味しいですよね~。
ペッパーランチのお肉でも美味しかったです。
最近思うのはセレブじゃなくてよかった^^
理屈いらないです。
それにしても美味しそうです~!
すばらしくおいしそうな画像を楽しませていただきながら
思いました。そうだ、今年も1年、精一杯いろんなことに頑張って
きたんだ。牛肉くらい食ってもいいじゃないか!!
夕食は、すき焼きにします!(キッパリ)
それにしても、太田なわのれんの忘年会を忘れるなんて
しんじられな~い!
やっているんですね。
メニューを見ましたが、牛鍋単品もあるようです。
機会があったら一度行ってみたいです。
私はペッパーランチはまだ食べたことがありません。
どんな味なのか、一度入ってみようと思っているんですが、なかなか…
まあ、それにして太田なわのれんは旨いです。
>ちゃめごん様
夕食はすき焼き!! いいですねぇ!
我家も、すき焼きは1年間食べていません。
ああ、喰いたいけど、我慢、我慢。
>本須さま
私は30年ぶりに行ったのです。
いや~、このブランクは大きい!
これからは節約して1年に1回ぐらい行きたい!
しっかし、「太田なわのれん」で忘年会って、かなりのセレブ職場ですね。
30年に1度行けるかどうかです。私らのような庶民が行くには、2年間ほど積み立てをしておかないとダメです。
いきなり、その場で会費徴収されたら、困っちゃう。
なんてヌシが義務教育の頃に行ったきりかも くぅ~
なんかプリンの器がデカくなっているような…
小中学生の身分で「太田なわのれん」に行ったんですかァ! すごいなぁ。
お零れちょうだい状態だったと思います(笑)
もちろん味などはもー覚えておりませぬ
あぁ食べたひ~
2年間、積み立てをすれば行けますよぉ。
毎月何かを我慢して貯金箱に貯めてください。