池波正太郎は『鬼平犯科帳』、『剣客商売』など戦国・江戸時代を舞台にした小説を数多く残している作家だが、そのかたわら旨いものを食べ歩く美食家としても知られていた。 『散歩のとき何か食べたくなって』、『むかしの味』、『食卓の情景』などを読むと、横浜中華街のお店がいくつか登場してくる。 先週、ランチを食べに行った「蓬莱閣」もそのうちの一つで、こんな風に書かれている。 店主の王宗俊さんが、この店を始めたのは昭和33年だそうな。王さんの父君は早く亡くなっている。 『外国人であるために、就職が大変にむずかしく、それで、おもいきって店を出した…』のだそうな。(中略) ところで、開店して、はじめはコックを雇っていたが、なかなかうまくゆかぬ。居つかないのだ。 そこで、王さん自身が調理場へ入ることになったわけだが、山東省に生まれた母上に教えられた餃子は、この店の売りものになった。 王さんに言わせると、餃子は、何といっても蒸し餃子と水餃子に、『トドメをさす』ということだ。蓬莱閣の餃子には、ニンニクが入っていない。そのかわり、ニラをつかって独自の味を出す。 ともかく王さんは、苦労もしたろうが、自分ひとりで(母上の助力もあったろう)自分の店の味を開拓した。そこには、日本に生まれ、日本に育ってきた王さんの味覚がものをいっているわけで、だからこそ、私たちが旨がるのだろう。 【むかしの味】(新潮社1984年)より 池波正太郎が言うように、ここの蒸し餃子は本当に美味しい♪ 平日ランチでは、それをお得な値段で食べることができるので、私はときどき利用させてもらっている。 注文すると、まずは水・皿・箸、そしてサラダが運ばれてきた。 このサラダは最初に食べてしまいがちであるが、餃子が来るまでは絶対に手を出してはいけない。 あとで餃子の合間に箸休め的に食べたいからだ。 サラダをジッと見つめながら、餃子が出来上がるのを待つ。 蒸すのにかなり時間がかかるので、単独ランチの場合は『鬼平犯科帳』でも読んでいるしかない。 15分ほど経過したころ、ご飯、スープと一緒に大きな蒸籠が登場♪ 中には巨大でムチムチした蒸し餃子が5個も入っている! さっそく1個をつまむと、箸先から重量感が伝わってくる。 かなり大きいので餃子の中ほどに歯を押し当ててムニュッと噛みきる。 すると肉の旨み、ニラの風味などが熱い汁とともに一気に溢れ出てきた。 せっかくの汁だ、一滴も溢さないようハフハフしながら頬張る。 いや~旨いね♪ 蒸し餃子1個で悶絶だ。 通常は4個で680円なのだが、平日ランチだとそれが5個になり、さらにサラダ、スープ、ご飯がついて750円! いやはや大満足のランチであった。 そして夜、家に帰ると待っていたのは自家製餃子の晩飯だった…… 「蓬莱閣」と比べるとサイズはかなり小ぶりであるが、旨さは同レベル♪ でも、もうしばらくは、餃子、いらないかな…。 ←素晴らしき横浜中華街にクリックしてね |
特に30歳を過ぎてからは、池波正太郎、藤波周平、山本周五郎ですね。
そんな池波正太郎の足跡を訪ねて、清風楼はシウマイを食べに行きましたが、徳記と蓬莱閣は未訪です。
中華街での宿題は、さっぱり減りません。
池波氏は、あまり刺激のないというか、クセがない旨さを推していた感があります。こちらも、そうかな。
序でですか、清風楼など、もうあのスタンスを、時代が許さないでしょうね。旨いかと言われても、微妙。
給仕のお母さん達の、時にしょっぱい接客は異国情緒的スパイスということにして(笑)。
池波正太郎の描く食風景には、食欲を刺激されます。
こちらのブログも同様で、いつもお世話になってます♡
酔華さん家ではいかがでしょうか?
昔は中華街では焼餃子を提供する店が少なかった様な気がしますが、近年になり様変りしてきたようですね。
作家の足跡を訪ねる訪問もいいですよね。
でも、現代の作家では誰がいるのでしょうか。。。
むかしながらの運営のようです。
もうすこし変わってほしいですけど・・・
でも、蓬莱閣の蒸し餃子は美味しかったぁ~
冬季限定のターロー麺を食べるのが好きです。
やや幅広の麺を使っている熱々の湯麺ですが、
具材には思いがけないものが入っていたりします。
いつもありがとうございます。
清風楼、徳記はあまり変わらないですが、
海員閣はずいぶん変化したと思います。
関帝廟通りの店ばかりですね。
大通りではどこに行っていたのでしょうかね。