今年4月、嬉しいニュースが入った。大浦湾中央部で、消息を絶っていたジュゴンの鳴音が何回も確認されたというのだ(第25回環境監視等委員会資料 4月10日)。
本年2月11日、23日、24日の3日間、計11回にわたって工事施工区域内のK4地点でジュゴンの鳴音が確認された。いずれも工事のない(土砂運搬船の往来のない)日だった。工事さえなければ、ジュゴンは大浦湾に戻っているのだ。
さらに第26回環境監視等委員会(5月15日)では、3月6日、9日、13日、25日、29日の5日間、計23回にわたって同地点でジュゴンの鳴音が確認されたと報告された(議事録はまだ公開されていない)。このうち、6日、25日は工事実施日であったという。
(第26回環境監視等委員会資料より)
沖縄県は第25回環境監視等委員会(4月10日)の報告を受け、4月17日、防衛局に対して、「事業を停止して、ジュゴンの来遊状況や生息環境等を改めて確認する等、事業によるジュゴンへの影響を再評価すること」、「再評価の後、ジュゴンの保護策について沖縄県等関係機関との協議が終了するまでの間、事業を再開しないこと」という行政指導を行った。
さらに第26回環境監視等委員会(5月15日)で、その後もジュゴンが確認されたとの報告を受け、工事の停止を求める再度の行政指導を行った。そこでは、「現在は工事が停止されている状況だが、事業による影響を再評価することなく工事を再開することは、絶滅が危惧されるジュゴンを保護する機会が失われる可能性があり、危惧している」として、5項目の質問を行っている(回答期限:6月11日)。
防衛局は、大浦湾にジュゴンが確認されたにもかかわらず、監視用プラットフォーム船を1隻増やす、海草調査範囲を一部増やす等の対応をとっただけで、「作業船は、衝突の回避が可能な速度で航行する」、「見張りを励行する」等と繰り返し、工事は続けるとしている。(しかし、今回は2日間で11回、海上作業がある日にも鳴音が確認されている。監視用プラットホームの監視が行われていたはずだが、何故、チェックできなかったのか? 防衛局の監視体制そのものが問われている。)
環境監視等委員会では、「水中録音装置を増やす。水中カメラを設置する」、「調査範囲を拡げ、調査頻度を上げる」、「くれぐれも衝突に注意すること」、「食跡を調べるための海草の調査は水深5mまでしか行っていないが、水深10mより深いところでも分布している」等、指摘されたが、防衛局は「検討してまいります」と、ほとんど無視してしまっている。
防衛局は、「見張りを励行する」というが、そもそも、ほとんどの運搬船は夜間航行しており、見張りなどできない。ジュゴンは夜間に浅場にきてエサを食べることが多く、衝突の恐れも強い。
工事停止期間はまもなく2ケ月近くになろうとしている。防衛局は、県議選後にも工事を再開させようとしているようだが、コロナ禍が収まれば工事を再開できるのではない。当然、県の行政指導に従い、ジュゴン保護策を県と協議するため、土砂運搬船の航行を再開させてはならないのだ。
今は、3月末までのジュゴン確認状況しか公表されていない。防衛局は、その後の工事停止期間中のジュゴン確認状況を早急に公表しなければならない。ジュゴンがさらに頻繁に確認されておれば、工事再開など論外となる。
本部塩川港沖には現在、土砂を積んだ運搬船が19隻も停泊している。羽地内海には数隻のガット船も待機している。これらの土砂運搬船、ガット船が頻繁に大浦湾に往復するようになれば、せっかく戻ってきているジュゴンはどうなるのか? しかも、変更申請書では、今後、海上からの土砂運搬量は飛躍的に増えていく。
今回、提出された変更申請書には、環境保全図書の変更も含まれている。ジュゴン保護はその中でも最重要の課題であるから、現在のような内容では、それだけで変更申請不承認の理由となる。