翁長知事の埋立承認取消しに対して国が行政不服審査請求と執行停止の申立を行なったことが大きな問題となっている。しかし、国によるこうした行政不服審査法の趣旨を逸脱した脱法措置は今回が初めてのことではない。
今年初め、防衛局が大浦湾の工事施行区域(臨時制限区域)に沿って、フロート等のアンカーとするため、最大45㌧のコンクリートブロック(以下、「CB」)を大量に投下した。昨年8月、埋立本体部分については岩礁破砕許可が出されていたが、これらのCB投下は許可区域の外で県の漁業調整規則違反となる。ヘリ基地反対協のダイビングチームが臨時制限区域の外側から潜水調査を行ってCBによってサンゴ礁が壊されている事実が明らかとなり、大きな問題となった。県は、昨年8月の埋立本体部分の岩礁破砕許可の際、「本申請外の行為をし、又は付した条件に違反した場合は、許可を取消すことがある」等の許可条件を付している。許可条件違反で埋立本体部分の岩礁破砕許可を取消すべきだとの声が湧き上がった。
しかし県は、「これらのCB投下によってサンゴ礁破壊の事実があるかどうかをまず確認する」として、米軍に臨時制限区域内の潜水調査を許可するよう求めた。
そして、翁長知事は本年3月23日、防衛局に対して「県の調査が終わるまで全ての海上作業の中止」を指示した。しかし、防衛局は翌日、農水大臣に行政不服審査請求と執行停止の申立を行い、農水大臣は3月30日、その執行停止の申立を認め、知事の指示書の効力は停止されてしまった。
その後も沖縄県は、臨時制限区域内でのCBの潜水調査をするため、米軍との協議を続けてきた。一度は不許可とした米軍もやっと立入を許可し、県は本年8月31日から9月11日にかけて現地での潜水調査を行なった。
(本年8月31日から始まった県の臨時制限区域内での潜水調査)
翁長知事は本年10月13日、埋立承認の取消しを行なった。基地の県内移設に反対する県民会議は8月21日の県交渉等でも、埋立承認の取消しと同時に昨年8月の埋立本体部分の岩礁破砕許可も取消すよう求めていた。県も、「根拠法令が異なるので時期はずれるかもしれないが、適切な時期に対応したい」と答えていた。しかし、埋立承認の取消後、岩礁破砕許可の取消しは未だ行われていない。
現地での潜水調査が終わってからすでに2ケ月以上が経過している。調査結果の公開には防衛局や米軍の確認が必要だというが、県としてその後の経過を明らかにしていないのは納得できない。この問題はいったいどうなったのか? 県はただちに、立ち入り調査の内容を明らかにしなければならない。許可条件違反で取消すことももちろん可能だが、埋立承認取り消しに伴う措置として埋立本体部分の岩礁破砕許可許可の取消に踏み切るべきである。
県が岩礁破砕許可を取消した場合、国は「埋立、浚渫、ブロックの設置等の海底を改変させる行為」ができなくなる。知事の埋立承認取消しが国によって執行停止されてしまった今、国の埋立工事強行を阻止するためには、一刻も早く、埋立本体部分の岩礁破砕許可を取消さなければならない。
もちろん、その場合も国は行政不服審査請求、執行停止の申し立てをしてくるだろう。しかし、国が「私人」を装って行政不服審査請求を行うことの違法性は、ますます明らかになっている。国がこうした違法行為を繰り返す度に、国への批判が高まっていくに違いない。