『世界(3月号)』の沖縄特集に、「辺野古新基地はいずれ頓挫する」として20頁ほどの論考を書いた。4日の名護市長選が残念な結果となり、「もう辺野古の工事は止まらない」というキャンペーンがさらに強まるだろう。しかし、名護市長選の結果にかかわらず、今後、県民が決して諦めず、知事が毅然と対応する限り、辺野古新基地建設事業はいずれ頓挫することに変わりはない。辺野古の工事は止められるのだ。
名護市長選の結果を受け、『世界』には書ききれなかった、辺野古新基地建設事業を阻止するための今後の方策を、シリーズでいくつか提案していきたい。
政府は、今年6月頃から埋立工事を開始すると報道されている。現在は護岸工だけだが、いよいよ土砂の投入が始まろうとしている。土砂の投入が始まれば、もう原状復帰することはできない。知事は、土砂の投入までになんとしても埋立承認の「撤回」に踏み切らなければならない。
そして同時に、沖縄県土砂条例(「公有水面埋立事業における埋立用材に関わる外来生物の侵入防止に関する条例」)の改正が急がれる。
(2015.7.14 琉球新報)
今回の辺野古新基地建設事業では、1640万㎥もの埋立用土砂が西日本各地等から持ち込まれる。そこで深刻な問題となるのが、アルゼンチンアリやセアカゴケグモ等の特定外来生物の侵入をどう阻止するのかという問題である。そのため沖縄県では、2015年11月、公有水面埋立の際の県外からの土砂持込みに関して、「土砂条例」が施行された。この条例では、予定日の90日以前に知事に混入防止策等を申請させ、県が現地調査して採石場等に特定外来生物が発見された場合、知事は、防除の実施、あるいは持込みの中止を勧告することができるとされている。
この条例の最初の適用例となった那覇空港第2滑走路埋立事業では、奄美大島から石材搬入が行われた。条例に伴う業者の申請書では「特定外来生物は確認されていない」とされていたが、県が調査した結果、全ての採石場や積出港でハイイロゴケグモ等の特定外来生物が発見された。そのため、知事は、石材をダンプトラックに積んだ状態で120秒間(水量:600~800ℓ)洗浄するなどの駆除策を指示したという経過がある。
石材の場合は洗浄等の対策もあり得るだろう。しかし、辺野古で予定されているのは、「岩ズリ」(土砂)である。洗浄すればほとんどが流れてしまう。そのため、『世界』にも書いたが、防衛局は現在、アルゼンチンアリやセアカゴケグモ等の特定外来生物を飼育し、高熱処理等で死ぬかどうかの実験を実施している。しかし、これだけ大量の土砂を高熱処理することは経費の面でも時間の面でも不可能である。特定外来生物が発見された場合、持込みそのものを中止する以外に方策はないのである。私が、『世界』で、「辺野古新基地建設はいずれ頓挫する」と指摘した理由の一つが、この県外からの土砂持込みの問題であった。
しかし、この点に関して大きな問題がある。県の土砂条例には罰則規定がないのだ。知事が土砂の持込み中止を指示しても、それはあくまでも「勧告」にすぎないという問題がある。
菅官房長官は常日頃、「日本は法治国家ですから」と強調している。防衛局は当然、条例に従う義務があるのだが、罰則規定がないことから、知事の持込み中止指示を無視し、形だけの対策を立てたから大丈夫だとして持込みを強行する恐れもあるのだ。条例が制定された当時、防衛省幹部が、「県外土砂規制条例案には罰則がない。ダメだと言われても埋立承認を得ているのだから土砂投入にためらいはない」と言い放ったという(2015.7.8 沖縄タイムス)。
こうした強行策を阻止するためには、土砂条例に罰則規定を追加する必要がある。知事の指示に従わない場合に、懲役・罰金という罰則規定を定めるのだ。西日本各地の砕石場では、何らかの特定外来生物が必ず見つかる。土砂条例を改正し、罰則規定が追加されれば、知事が持込み中止を指示することによって、その採石場からの土砂持込みは完全にできなくなる。
土砂条例の改正は、辺野古新基地建設事業をストップさせる決定的な方策の一つである。県当局、与党県議団は、6月議会での改正を目指してほしい。