今回の3週間のアジア旅は、「敗退」の旅でもありました。毎夏、お休みを利用してアジアの町をいろいろ巡るのは、現地で上映されている映画を見て、映画上映の形態に変化はないか、観客の好みは変わっていないか、等々を調査すると共に、映画に関するいろいろな資料を集めるためでした。資料は、DVD等のソフトと書籍が中心ですが、時には映画グッズを集めたりもします。もう10年ぐらい前にタイで手に入れた、トニー・ジャー主演の『トム・ヤム・クン』(2005)のポスター(下)は、今でもタイ映画について、あるいはアジアのアクション映画について話をする時に役立ってくれています。タイはほかにも、シネコンでチケット発売時にくれていたチラシや、ポスターをデザインした小さなマグネットといったグッズがあり、それを集めるのも楽しみでした。
ところが、チラシやマグネットはここ数年で姿を消し、ポスターが出回ることもなくなりました。まあそういったグッズが手に入らないことは織り込み済みだったのですが、今年はDVDが手に入らない! どうも、DVDになる作品自体が減り、さらにDVD化されても出る枚数が少ないようなのです。これはインド映画とて同じこと。シンガポールのムスタファ(巨大なスーパーマーケット。インドの物は生き物以外何でも揃う、と言ってもいいぐらい)でかなり時間を掛けて探したのですが、ヒンディー語映画で探していた昔の作品は全然見つからず、最近のヒット作が数枚手に入ったのみ。かろうじてシャー・ルク・カーン主演の『Fan(ファン)』が2種類あったのがめっけもので、どちらもインド現地版なのですが、左の「特別版」の方にはメイキングDVDが付いています。『ファン』の出来はこれからIFFJでご覧になる方が多いと思うのでノーコメントにしておきますが、ある意味意欲的な作品ではありますので、ぜひご一見を。
なお、ジャケットに貼ってあるシールで「PG」とあるのは、シンガポールの検閲済みの印。12歳未満の扱いを規定した「PG(Parental Guidance)」のほか、「PG-13」という13歳~15歳を対象としたレイティングもあり、その上は『Baaghi(反逆者)』のような作品の「NC16(No Children Under 16)」、『Udta Punjab(飛んでるパンジャーブ)』のような作品の「M18(Mature 18)」と続いて、その上が「R21(Restricted 21)」、つまり21歳以上しか見ちゃダメ、となります。インド映画は大体「NC16」止まりなのですが、今回は珍しく「M18」を発見しました。
ほかにインド映画のDVDで嬉しかったのは、ヴィジャイ・セードゥパティの主演作が4本手に入ったこと。一番ほしかった『Pizza(ピザ)』(2012)はなかったのですが、上のように、『Naduvula Konjam Pakkatha Kaanom(途中の数ページがない)』(2012)、『Pannaiyarum Padminiyum(地主のパドミニ車)』(2014)、『Orange Mittai(オレンジ・キャンディー)』(2015)、そして今年の作品『Iraivi (女神)』が手に入りました。ところが今日チェックしてみると、『地主のパドミニ車』以外は英語字幕が付いていない! 『オレンジ・キャンディー』などは初老の役でなかなかステキなのに、セリフの意味がわからないなんて、とっても残念です、とこれまた敗退気分。
このほか、シンガポールでは昨年見てぜひDVDがほしかった『新四千金(Our Sister Mambo)』も探し出せず。上の写真はチャイナタウンの象徴とも言える映画館大華戯院ですが、今では1階に土産物店が何軒か入るだけのビルに成り下がってしまいました。劇場として保存すればいいのに、とすごく残念です。シンガポールは下のようなモダンな公園やホテルはどんどん建つけど、一時期ほど町並み保存に力を入れていない感じがしました。
それから、本屋さんもどんどん姿を消しています。シンガポールとマレーシアでは、少し前まで一番大きかったのがMPHという本屋さん。ところが今回シンガポールで探して旗艦店らしき所に行ってみると、売れ筋の小説と教科書ぐらいしか置いていない本屋になっていました。マレーシア映画の研究書のタイトルを挙げて尋ねたのですが、「ネット書店の方でなら買えますのでそっちで買って下さい。シンガポール内の3店とも、店頭には置いてありません」と言われてしまいました。ネットで買えないから、わざわざ現地に来ているのにぃ。というわけで、シンガポールもマレーシアも、一番品揃えが充実している本屋は紀伊國屋書店なのでした。
くやしいので、MPHの隣のお店で昼ご飯をヤケ食いしました。ここはクレイポット、つまり香港でポーチャイ飯という土鍋炊き込みご飯の有名店らしく、お昼はサラリーマンとOLでものすごい混みよう。日本語もあちこちから聞こえていたので、シンガポール勤務の日本の方々もランチを食べに来ていたようです。おいしくてボリュームがあったのですが、何せ熱かった~~~。これがホントの「焼け食い」ですねー。
もう一つついでに、シンガポールの飯屋ネタを書いておきます。昨年のブログにも紹介したのですが、インド映画専門の映画館レックスの近くには、とってもおいしくて繁盛している潮州料理の庶民的レストランがあり、今年も楽しみにして映画の前に行きました。ところが、もう12時だというのに閑古鳥が10羽ぐらい鳴いているような状況でびっくり。左が今年、右が昨年です。
首をかしげながら注文して食べてみると、んんん、何か味が違うぞ。どうやら経営者が変わったようで、味は落ちるは何だか声が耳障りな少姐がいるは、で、昨年の活気に溢れたおじさん&お兄さんの景気のいい声が飛び交う食堂はもはや幻となっていました。おいしいご飯でも「敗退」してしまい、悲しかったです。
反対に、すごくおいしい料理が食べられたのは、香港を発つ直前のこと。エアポートエキスプレスの九龍駅でタイ料理を食べようと思っていたらお店が消えていて(ロンガン・ジュースがおいしかったのにぃ)、仕方なくその並びのレストランに入り、そういえば香港で飲茶をしていなかった、と点心を3つ注文したのです。「山竹狗肉」は普通の味でしたが、上の写真の叩きキュウリ(唐辛子の千切りが入った、台湾でよくある小皿料理)とエビ春巻きがもぉぉぉのすごくおいしくてほっぺが落ちそうに。今回の旅のピカイチでした。市中の庶民的酒樓に比べると値段は1.5倍ぐらいしましたが、また香港に行ったら食べよう!と固く決心して日本に帰ってきた次第です。確か、「桃花源」というお店でした。
マレーシアでは念願のサテも食べたし(もうちょっと高級なお店で食べたかった。サテ・アヤムもサテ・カンビンもいまいちの味)、
シンガポールでは甘味屋さんにも入ったし(これで150円は安い!)、
もち、インド人街のミールスも食べたし(量が多すぎた~。次からはミニにしよう)、
香港では蛋仔(右)と挟餅(左)のおいしい店も見つけたし(左のカップは珍珠ナイ茶、奧の果物は泰國柚)、まあ成果(?)もあった今度の旅でした。
いやはや、東京と劣らず暑い地域を精力的に活動されておられて、敬服しています。
CD・DVD店が徐々に減少しつつあるのは、私も感じています。
バンコクでは、滞在中MBKには必ず一回は立ち寄るので、SF-cinemaとともに、CD・DVD店にも立ち寄ります。
低層階、上層階と2店あった店は、いつしか低層階のみになり、昨年は売場面積が1/3に減少していました。
お店のスタッフによると、音楽CDは、オムニバスを中心にネット配信と、USBチップでの発売が増えて来ていることと、CD自体の売り上げも減少、DVDも売り上げ減少傾向とのこと。
サャームスクエアーにあるリド・シネマの入り口で、良く見かけるDVDのワゴン売りでも、タイ人の若い人がDVDを探している様子は、あまり見かけませんでした。
ほんと、年の割には歩き回りましたねー(笑)。
しかし、その直後の3日間カンヅメ仕事(大学の集中講義で1日5コマ×3日という苛酷なもの)で元気も使い果たし、別の仕事があった昨日を除いて、木曜日も本日も昼寝に次ぐ昼寝でした。
「消えつつあるもの」エドモントさんもやはり同じように感じておられるのですね。
ちゃんとMBKのお店(多分、あのさそりマークの所)で調査してらっしゃるのが素晴らしいです。
リド・シネマの前のDVDワゴンセール、まだやっていたんですね。
インド映画のタイ語吹き替え版なども売っていて、こんな作品がタイ語に、と驚いたり納得したり。
これまで映画ファンは、「映画を所有したい」という情熱でもって、1970・80年代はビデオ、1990年代はVCD、2000年代はDVD、最近はBDとソフトを買ってきたのですが、今の人は一度見るだけでいい、ということなのかも知れません。
映画雑誌も消えていくし、コレクターの時代は終わったのかも。