今日(11月26日)は、ものすごく静かな映画と、ものすごくうるさい映画を見ました。BGMがまったくなかったのでは、と思う中国(+アメリカ、フランス、シンガポール)映画『空室の女』(2024)と、BGM&効果音がフォルテシモで入っている中国(+フランス、デンマーク、カタール)映画『家族の略歴』です。どちらも家族を描く映画で、何だか合わせ鏡の間にいるような気がしました。今回の上映作には『黙視録』といい、家族がテーマとなる作品が多いのでは、という感じです。
『空室の女』
2024年/中国、アメリカ、フランス、シンガポール/98分/原題:Some Rain Must Fall 空房間裡的女人
監督:チウ・ヤン
出演:余艾洱(ユウ・アイアル)
ある学校の体育館でバスケットボール大会が開かれている時、娘を迎えにやってきた主婦ツァイはたまたまそれて足元に来たボールを投げ返したのですが、それが運悪く老女に当たり、老女は病院に運ばれていきます。老女の家族からは賠償を要求され、窮地に立たされるツァイでしたが、片や家庭では夫と離婚協議中であり、同居している姑は認知症が出始め、通いの家政婦を忌み嫌うなど、いろんな問題が彼女にはのしかかっている最中なのでした...。カタログによると(カタログはPDFでアップされていますので、こちらをご覧下さい)ツァイは40代とのことですが、どう見ても60代の人に見えてしまいます。画面は静謐できれいなものの、見ていて息が詰まるような作品でした。
監督のチウ・ヤンは少年のような感じの人で、神谷ディレクターの最初の質問「どうしてこのような映画を撮ったんですか?」に対し、「答えようとするととても長い話になるんですが」とことわって、言葉通り長い話をえんえんとする、しかも会場の観客に向かってではなく、通訳の樋口(渋谷)裕子さんに話し込む感じで語るという、何というかすれていないというか子供っぽいというか、こういうQ&Aとかには慣れていない感じの初々しい監督でした。写真を付けておきます。
『家族の略歴』
2024年/中国、フランス、デンマーク、カタール/99分/原題:Brief History of a Family 家庭簡史
監督:リン・ジェンジエ
出演:祖峰、郭柯宇、孫浠倫、林沐然
こちらも、幕開けが校庭の鉄棒で懸垂をしているシュオの後頭部を同級生のウェイが投げたバスケットボールが直撃、というシーンから始まりますが、映画の感じは『空室の女』とは正反対で、メリハリのある作品になっていてホッとしました。ところが、この事件をきっかけにウェイがシュオを豪華マンションの自宅に連れていき、両親に紹介したところからだんだん雲行きが怪しくなっていきます。ウェイはゲームとフェンシングには力を入れるものの、勉強はまるでダメで、研究職の父と元CAの母はだんだんとけなげで勉強好きのシュオに興味を引かれるようになります。シュオは母が亡くなったあと、父の家庭内暴力にさらされていると言い、確かに体には無数のあざがありました。そしてシュオの父が急死すると、ウェイの両親はシュオを養子にすることを考え始めます...。という、やはりなんだかなー、の展開になっていきます。俳優陣の演技力とも相まって、ラストまで引っ張って行かれるのですが、そのラストが「?」で、これも後味がいまひとつでした。
リン・ジェンジエ監督ともう一人女性が登壇なさったのですが、ゲストが書いてある資料にはお名前がなく、聞き取れずじまい。神谷ディレクターもお声が私のメニエール病耳にはつらいレベルですし、通訳が樋口さんではなく若い方だったのでこれまた聞き取りにくく、メモをあきらめました。マイクにちゃんと向かって、はっきりと発音して下さる方って、本当に少ないんですね。補聴器も検討しないといけなくなるかも、ですが、今回はごめんなさい、ということで。監督のお写真を付けておきます。