能を見た英国人がえらく感動して、それを自国にもって帰り
教会用のオペラとして、再現しようと試みたそうなんです。
我々が知りうる海外の物を日本で再現しようとするのとは逆パターンですな
しかも制約がかなりある伝統芸能...能
1956年の事だったそうです。
で、当然ストーリーを神の救済にアレンジしたり(原本はかなりわびさびですし)
能面になぞらえての仮面劇にし
音楽面でも指揮者を大胆にも外す等、能楽の雰囲気を少しでも出そうと
かなりの敬意を払って取り組んだそうですが
私が一番興味を持った所は
つまり、...方角感という部分のいきさつ
まあ、ご承知の通り、能には基本的に方角は無い訳です(舞台設定が殆ど幽界)
そこで、まず、...日本的な舞台感に置き換える作業を
歌舞伎の隅田川の舞台設定を参考にしたそうで
内容は単純に言えば「川を渡る」..という簡単な事
で、当然日本人の感覚は東の都から西の京へ向かい川を渡るという話ですから
舞台に向かって客席から、右手(上)から左手(下)に渡るという感じ
従って川は舞台中央から舞台前方へ縦に流れるという舞台設定ですな
でしたが....英国人は方角無しも、東から西も
まさにDNA的にww...NGだったそうです
まあ、いわゆる宗教的約束の地
メッカとも言える方角はヨーロッパに於いては南
(日本人は京、すなわち西ですが)
なにかしっくりこない訳です
上演するのも教会という事も関係していたんでしょうかね
つまり
物語りが向かうところはバチカンであり、英国からみればそれは南に位置する訳で
従って展開は必然的に北(舞台前方)から南(後方)に設定し直されたそうです
ということで舞台設定はどうなったか...
幕が上がった時、川は舞台の上手から下手へ横に流れていた...という話でした。
簡単に申せば「京に向かう」をお客様に理解して頂くには
向かうのは西では無く、南である方が理解しやすいって事ですな
まあ、外国で日本伝統芸能となれば
細かい配慮も必要って事かもしれません
無意識の奥に刻まれたDNAには逆らえませんもの。