ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

静岡県・志太榛原地域の深刻な医師不足の状況

2009年06月21日 | 地域医療

****** 静岡新聞、2009年6月20日

知事選 託す一票 県政の課題 地域医療 医師偏在の調整緊要

 焼津市の男性(79)は3月下旬、自宅から静岡市内の病院に救急車で運ばれ、病院到着後、間もなく息を引き取った。急性心筋梗塞(こうそく)だった。東名高速道路を使った搬送時間は約1時間。以前に心筋梗塞を起こした時は、地元の焼津市立総合病院で診てもらえたが、今回は素通りした。長女(55)は「近くの病院に循環器の先生がいたら助かったかもしれない」と無念さをにじませた。

 焼津市立総合病院は、5人いた循環器科の医師が昨年春までに全員辞めた。今年5月、ようやく常勤医1人が着任したが、十分に患者を受け入れる状況にはない。

 循環器を含めた内科医は3年ほど前まで30人を超えていた。今は半数以下の15人。激務によってさらに退職者が出る悪循環。内科医の1人は「どこまで頑張れば展望が開けるのか」と暗い表情で語った。

 頼りになるはずの地域の基幹病院に医師がいない―。深刻な医師不足は焼津市に限った話ではない。県内各地の公立・公的病院で続いている。県内の人口10万人当たりの病院勤務医数は112・9人で全国43位(2007年10月)。県内の地域格差も大きいままだ。

 県は勤務医の研修費用や救急勤務医手当の助成など医師確保対策は打ってきた。本年度予算の対策費は前年度の3倍近い5億6000万円。特に医学生向け奨学金は採用枠を100人に拡充し、約150人の応募があった。

 ただ、県中部の病院幹部は「医療崩壊のスピードに再生の速度が追い付いていない。その間にどんどん病院自体の体力が落ちている」と指摘する。

 病院勤務医1人がもたらす年間診療収入は平均およそ1億円。医師の流出は患者離れを招き、病院経営を圧迫する。県内市町と一部事務組合が運営する公立22病院は、07年度決算で16病院が赤字だった。繰入金として市町が235億円を投入しながら、最終的な赤字額は総額70億円に上った。

 「地域や診療科ごとの医師偏在を解消する調整が必要」。有識者でつくる県医療対策協議会は2月、知事に提言した。病院によっては医師の流出が止まらず、産科や救急医療などで新たな空白域が生まれていた。

 限られた数の医師を有効活用するには、近隣の病院間で診療機能を分担したり、ネットワーク化を進めたりするしかない。「医師配置の見直しは、病院の再編や集約化にもつながる」。そう指摘する県中部の産科医は「関係病院の合意形成は一筋縄ではいかない」と説明する。急場をしのぐため総論では賛成だが、個別具体的には自分の病院に有利に誘導したい―。設置主体の市町や、医師を派遣する大学医局の思惑も絡み、各病院とも存亡を懸けた思いが交錯する。

 県は5月、志太榛原地域の4病院をそれぞれ管理する4市にネットワーク化の素案を提示したが、全市の合意にはこぎ着けなかった。ある病院の副院長は「難しい行司役は、やはり県にやってもらうしかない。病院単独でもがいていたら、そのうち圏域の病院が総倒れになってしまう」と危機感を募らせる。

 住民が等しく一定水準の医療サービスを享受できる仕組みを県はどう描くのか。地域医療の立て直しが迫られる中、県の強いリーダーシップが問われている。

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(静岡新聞、2009年6月20日)


神奈川県の産婦人科常勤医15人増

2009年06月21日 | 地域周産期医療

最近は若い医師の産婦人科志望者が増加傾向にあるように思います。この傾向が今後も長く続いてくれるといいのですが...

****** 東京新聞、神奈川、2009年6月19日

産科医なお不足 常勤医15人増 多い若手 経験豊富な働き手必要

 県内で出産を取り扱う医療機関に勤務する常勤医師数が本年度、四百五十二人に達し、前年度から十五人増とやや上向きに転じたことが、県の産科医療調査で分かった。産科医不足の傾向に一矢を報いた形ともいえるが、医療現場の医師不足はまだ解消されたとはいえず、各自治体や医療機関は担い手確保の努力を引き続き迫られそうだ。 (中山高志)

 県保健福祉部によると、産科の常勤医師数は二〇〇七年に四百三十八人、〇八年に四百三十七人と、ここ数年横ばい傾向だった。本年度、増加した十五人のうち、十四人が女性だった。

 ただ、医療機関が必要と考える人員体制や、実際の勤務数などから計算すると、全体で常勤医師が計百四十一人、常勤助産師が二百二十六人不足するという。

 一方、助産所を含めた出産取り扱い施設の数は百六十二カ所で、前年度比二カ所減とほぼ横ばい。内訳は病院と診療所がそれぞれ六十五カ所、六十二カ所で前年度と同じ。助産所は三十五カ所で二カ所減少した。

 この調査結果は、医師確保策について話し合う「医療対策協議会」で報告された。出席者からは、「医師が増えたといっても若手が多く、すぐに現場の負担軽減につながるわけではない」など、産科医療の厳しい実態を訴える声が相次いだ。

 県保健福祉部の担当者は、「産科医療の魅力に目を向ける医師が増えたことが常勤医増につながったのではないか。今後も、産科医が勤務を継続できるような取り組みを進めたい」と話している。

(東京新聞、神奈川、2009年6月19日)

****** 毎日新聞、神奈川、2009年6月19日

産科医:141人不足、医療機関が認識--県調査

 県内で分娩(ぶんべん)を取り扱う医療機関で常勤医師が計141人不足していると、医療機関は認識していることが県の調査で分かった。今年度の常勤医師数は昨年度比15人増の452人だが、県保健福祉部の担当者は「現場に不足感が強い。行政も負担軽減を図り、医師確保の取り組みを進めたい」と話している。

 今年度に分娩を取り扱う施設数は▽病院65カ所▽診療所62カ所▽助産所35カ所。病院・診療所は昨年度と同数だが、助産所は2カ所減った。分娩の取扱件数は819件増の7万533件、施設別では病院で1653件増と予想され、分娩が病院に集中する傾向がある。【木村健二】

(毎日新聞、神奈川、2009年6月19日)

****** 産経新聞、神奈川、2009年6月16日

産科医が増加 県の分娩に関する調査

 神奈川県がまとめた「産科医療および分娩(ぶんべん)に関する調査結果」によると、平成21年度の県内の分娩取り扱い施設に勤務する常勤医師数は452人で、20年度に比べて15人増加した。分娩取り扱い施設数も病院が65、診療所が62で、20年度に比べて横ばい。いずれも調査を始めた18年度からおおむね減少傾向にあったが、転じた格好となった。

 県によると、常勤医師の増加分15人の内訳は男性1人、女性14人。また、分娩取り扱い施設は、助産所が20年度から2施設減って35施設だった。分娩取り扱い件数はこれまで7万件前後で推移しており、21年度は7万533件の見込み。

 ただ、医療機関が不足していると考える人員については、常勤医師が141人、常勤助産師が226人で、県内の周産期医療体制は依然として厳しいことがうかがえる。

(産経新聞、神奈川、2009年6月16日)

****** 読売新聞、神奈川、2009年6月16日

常勤産科医141人不足 県調査

「当直減らしたい」

 県内の常勤産科医は141人足りないのに、常勤より負担の少ない非常勤産科医は必要な人数より56人多いと、医療機関側が考えていることが15日、県の調査でわかった。常勤医がさらに必要な理由として「当直回数を減らしたい」とする回答が多く、医療機関は、常勤医の激務を緩和したいと考えていることがうかがえる。県は、産科医の確保策を講じているが、目立った効果は上がっておらず、常勤医不足の解消には時間がかかりそうだ。

 調査は4月、県内の医療機関にアンケートで行った。お産を扱う医療機関127施設のうち、現状の医師数や必要な医師数については121施設が回答した。それによると、121施設の常勤産科医421人に対し、本来は562人が必要と考えていることがわかった。一方、非常勤の産科医は、必要な387人を上回る443人が勤務していた。

 常勤医がさらに必要な理由について、半数近くが「医師1人当たりの当直回数を現状より減らすため」と回答した。次いで「医師1人当たりのお産の扱い数を現状より減らすため」が多かった。

 県は産科医確保のため、出産や育児で離職した女性産科医の職場復帰を図ろうと、県立病院で再教育訓練する事業を2007年に始めたが、申し込みはない。復職を考える産科医に勤務地、当直の可否などを登録してもらい、勤務条件が合致する医療機関を紹介する「医師バンク」も昨年3月のスタート以降、就業を成立させた実績はない。

 県は「今後、現在勤務している医師らが辞めないような工夫を検討していきたい」としている。

(読売新聞、神奈川、2009年6月16日)