歌舞伎座が開場して一年がたったんですねぇ。今年も新緑が綺麗^^
早いような、遅いような、でもやっぱり早いような。
杮落しも終わったので、今月からはよりマイペースにのんびりと歌舞伎を楽しんでいけたらいいなと思っています。
ということで今月は、幕見を3本行ってまいりました。
計3600円でこんなに素晴らしいものを見せていただいちゃっていいのかと申し訳なくなるくらい、どれも大変充実した内容でした。
【壽靱猿(ことぶきうつぼざる)】
待ってましたよ~~~~~三津五郎さん!
三津五郎さんの踊り、ほんとうに好き。見ていて幸せな気分になる。
でも今回は、小猿の可愛さと又五郎さんのお茶目さにも救われました。でないとたぶん泣いてた。。
だってみっくんがとても真剣な表情で三津五郎さんの踊りを見つめているんだもの。。。
みっくんの初舞台がこの小猿だったのだなぁと思うと、三津五郎さんが小猿に見せる愛情がみっくんへのそれと重なって……もう駄目……泣。みっくんと三津五郎さんの色んなことがあった親子関係を思うとなおさら……泣。
しかしみっくん、男前に成長しましたねぇ。化粧のせいもあるのかもですが、ものすごくカッコよかった。声も多少細いところはあるけど、今回はとてもいい声でした。
本当に三津五郎さんの踊りが大好きなので、どうかどうかじっくりしっかりと治療なさってください。
そして次回八月納涼歌舞伎でお会いするのを楽しみにしています!!
【曽根崎心中】
お初の最後は心中です。「お初が"うれしい"気持ちになったら幕を閉めてと言っています。一緒に死ねるからうれしいというより、また次の人生が始まる、新しく生きるからうれしい。"愛の永遠"じゃないかと思ってやっています」。お初のその情熱、愛の強さが、演じる藤十郎を最後に、「清々しい、晴れ晴れとした気持ち」にさせるのでしょう。・・・お客様にお初をご覧いただくのではなく、「お初の幸せの生涯をやりますので、お客様もその時間をどうぞご一緒に」と呼びかけた藤十郎。「ぜひ、歌舞伎座にお越しください」と、笑顔で会見を締めくくりました。
(歌舞伎美人~藤十郎が語る『曽根崎心中』のお初)
先月に引き続き、、、、山城屋!!ブラボーです!!
忠兵衛のときもそうだったけど、扇雀さんよりも翫雀さんよりもお若いなんて…すごすぎる藤十郎さん。。。19歳に見えるよ!
しかも若いだけじゃない。もんのすごく可愛らしい!これぞ恋する乙女の初々しさ(先月の扇雀さんになかったモノ)!
最初の場面で徳兵衛を見つけて徳さま~~~!と駆け寄っていくところ、徳兵衛から嫁をとる話が出ていると聞かされたときの「えっ」っていう驚き方、でも断ったと聞いて両手をパチパチ叩いて喜ぶ無邪気さ、徳兵衛と九平次が借金の件で言い争っているところを遠くから見ているときの心配そうな様子。歩き方も、階段の上り下りも、本当の少女のよう。
そこに作られた不自然さは全くなく。
台詞のあるときもないときも舞台の上にいるのはお初で。全身、手足の先までお初以外の何者でもなくて。
曽根崎の森で、徳兵衛が刃物を手にゆっくりと近づいてくるのを待つところ。全てを受け入れるようなあの表情。聖母のような慈悲深さと、徳兵衛に対する愛情と、少女のような透明感と、しなやかな強さと、微かな哀しみと。
こんなものが観られてしまうのですから、歌舞伎って観つづけるものですねぇ。
翫雀さんの徳兵衛も、よかった。
特に九平次に騙されたと気付いた後、衆人に囲まれたときの演技、素晴らしかったです。
ただお初→徳兵衛ほどには、徳兵衛→お初への愛情は感じられなかった気もしましたが(あくまでお初ちゃん比)。
そういえばここの部分の演出(スポットライト的な照明とか、周囲を群衆が囲む様子とか)がとても現代的に感じられたのですが、チラシによるとこの作品は近松の原作をもとに宇野信夫が脚色したのだとか。
なるほど、そういう風に見るとラストの森も、暁のライティングなどどこか現代的な美しさですね。
橋之助さんの九平次。
もう少し良い人っぽくなってしまうのかなと思いきや、嫌な奴を好演されていました。
東蔵さんの惣兵衛も、左團次さんの久右衛門も、安心の出来。
ただ左團次さん、ときどき声が出にくそうでしたが、お体悪いってことないですよね。大丈夫かなぁ(俳優祭の噂ではお元気そうですが・・・^^;)
靱猿とともに、千穐楽までにもう一回観られたらいいなぁ。たぶん行けないと思うけど。。
【一條大蔵譚】
ああ、いいですねぇ。とってもいい。
大蔵卿は私の中では仁左衛門さんがダントツでそれに変わりはないのだけれど、演じる人で、あるいは型の違いでこんなに雰囲気が変わるものなのですねぇ!
松嶋屋型は最後は阿呆に戻りませんが、今回は戻って幕。大蔵卿の生き様の切なさが一層際立ちます。
とはいえこのお話、元々は大蔵卿の「つくり阿呆⇔素」を単純に楽しむ演目だったのではなかろうか、とも思うわけです。そういう他愛ない演目が、次第に演者によって後半のシリアス要素が強調されていったのではないかな、と。つまり前半は理屈抜きに役者のつくり阿呆を楽しめばよく、それ以上でも以下でもないように私は思うのです。
そういう意味では、私はやっぱり仁左衛門さんの大蔵卿がこれ以上なく観ていて楽しかった。無類の可愛さ、京の公家らしい品のよさ、心底ほんわぁ~~~~な空気。
そんな春の夢のような仁左衛門さんの阿呆に比べると、吉右衛門さんの阿呆は“ちょっと頭の足りない人間”の感じがどうもリアルで、その姿を単純に“笑って楽しむ”気分にはなりきれなかったのが正直なところ(吉右衛門さんが狙ってそうしたのか、結果的にそうなってしまったのかはわかりませぬが)。。。 ※これについては後日の4月13日の感想も参照くださいまし。
おそらく吉右衛門さんの大蔵卿は、前半は後半への伏線といった感じなのだと思います。
で、後半。
これはもうThe吉右衛門さん!大きくて重厚なお芝居をたっぷりと見せてくださいました。
台詞まわしの心地よさもさることながら、とくに一番最後に再び阿呆に戻るところ、ぞくっとするほど良かった。
生首を両手で転がしながらの笑い顔の、笑い声の、見事なこと。華やかな大きさと、その裏に感じられる悲しみ。
こんな複雑な演技、どうやったらできるんだろう。しかもそれが4階席まで届くなんて、すごいよ吉右衛門さん!
生首はボールで遊ぶようにポンポンはせず、幕の閉じ際に一回だけポーンとされていました。これもよかった。いくらつくり阿呆でも、何度も生首ポンポンは人間的にどうかと思いますもの。
しかし吉右衛門さん、昨年秋から“熱演”が続くなぁ(身替座禅は別として。あれはあれがいいのです、笑)。お孫さんができたからかな?
あまり無理されず、お体を大事にしていただきたいです。
梅玉さんの鬼次郎。
梅玉さんっていつも思いますが、歩き方が綺麗ですねぇ。
のんびり貴公子然とした梅玉さんも大好物だけど、キリっと系の梅玉さんもとても好き。
魁春さんとご兄弟で並んでいる姿は、観ていて楽しいです。弓で叩いていても、とても優しそう(ってダメじゃん、笑。いいの、好きだから!)
魁春さんの常盤御前。
常盤の悲劇的な運命と気品、凛とした芯の強さを兼ね備えていて、とてもよかったと思います。
芝雀さんのお京。
ちょっと存在感が薄めでしたが、こういうキリっと系の芝雀さんは好み。
歌女之丞さんの鳴瀬
凛として情のある鳴瀬でした。よかった。
以下、仁左衛門さんとの違いの覚書。
前半: 女子の脂云々のエロ台詞がある。靴を落とさない。傘持ちさんにお辞儀をしない。鬼次郎に気付いたときに、客席から顔を扇で完全に隠す。
後半: ぶっかえりの衣装が白地に花柄(仁左衛門さんはオレンジと白の格子柄)。勘解由の首を斬った後、首は転がってこないで、陰で布に包む。最後は阿呆に戻って生首で遊ぶ(松嶋屋型は阿呆に戻らずに、カッコよく爽やかに終了。これは仁左衛門さんに合っていました)
他にもあると思いますが、なにせ両方とも一回しか観ていないので。。
ちなみに昨年仁左衛門さんが演じられたのは純粋な松嶋屋型ではなく「松嶋屋型+播磨屋型」とのことです。
こちらは本日楽座で購入した先月の舞台写真。
私のアルバムは98%が仁左さまと玉さまでして。
はじめて買った吉右衛門さんと菊五郎さんの写真がコレて・・・^^; かなりお気に入りです、笑。
そしてまさか私が藤十郎さんの写真を買う日がこようとは。それぐらいこの忠さんは衝撃的だったのであります。昨年10月の吉野山の静、先月の封印切の忠さん、今月のお初ちゃん。こういうタイプ(ってどんなタイプ?)の藤十郎さんが私は大好きでございます。
そして最後に。
仁左衛門さん、6月歌舞伎座復帰おめでとうございます
(福助さんも、早くお会いしたいですー・・・。昨年の松竹座の自分の感想を読んでいて、福助さんの舞台が無性に懐かしくなりました。。。)
※4月13日の感想
※藤十郎が語る『曽根崎心中』のお初
※坂田藤十郎、一世一代の『曽根崎心中』お初役に挑む(ぴあ)
※藤十郎「一世一代」のお初(東京新聞)
※三津五郎 感謝の春 7カ月ぶり歌舞伎復帰(東京新聞)