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先週末に銀座で映画「落語娘」を見ました。
内容はそれなりで良い出来だと思うのですがセリフがちょっと‥。
たかだか前座の女落語家が尊敬してやまない名人の落語家に
「私~の一番弟子の~と申します!以後、お見知り置きを!」と大ミエを切るのは‥。
ちょっといただけない。「極妻」じゃあないんだから。
落語を題材にした映画は少なくはないのですが
その中でアタシが1番にオススメするのが「のようなもの」森田芳光監督 1981年作品
題名の「のようなもの」とは落語の「居酒屋」のセリフ
「えー、できますものは、けんちん、おしたし、鱈昆布、あんこうのようなもの、ぶりにお芋に酢蛸でございます。」
から来ているらしい。ちなみに森田監督の商業映画の初監督作品です。
23歳の二つ目の落語家の志ん魚(しんとと)とその周りのやるせない毎日の物語。
この志ん魚自身が「落語家のようなもの。」なのだろう。
志ん魚役には宇都宮弁がおかしい伊藤克信(最近はTVのレポーターでたまに見る。)
その兄弟子に尾藤イサオ、志ん魚と懇意になるトルコ嬢に秋吉久美子
その他にも癖のある役者さんが大勢出演しています。
ブレイク中のエドはるみも少しですが顔を見せています。
(最近、この映画の映像がTVでちょくちょく流されますな。)
何と言ってもこの映画は脚本(セリフ)が素晴らしい!
確か、森田監督自身の脚本です。
新宿の末広亭の深夜寄席が終わり始発の時間まで若手落語家たちが街角で
途方に暮れているとそこにタクシーが通りかかり、車内には柳朝師匠と妙齢の女性が‥
柳朝師匠が車内から気っ風良く札ビラを差し出し
「これでどこか泊まって余ったら酒でも飲んで体を休めなきゃダメだよ!イイ若い者が!」
そして奥の座席から同伴の女性の顔を皆に見せてニヤリ。
「それから、アタシが山田五十鈴と一緒なのはこれは内緒!くれぐれも内緒だよ。」
ギャハハ!良いセリフだ。
兄弟子の尾藤イサオが夫婦で近所の河原に出掛けおにぎりを食べながら
「もっと、どこか遠くに連れていってやりたいなあ‥熱海とか湯河原とか‥。」
「それならお店の忘年会で行くからいいわ。私はもっと北の方に行きたいわ。鬼怒川とか水上とか‥」
うまいっ!
志ん魚が下町女子高校の落研の女の子と仲良くなり
デートの帰りにその父親に見つかり家で落語を披露するハメになり
「二十四孝」を演った後に父親から
「なってないねえ!志ん朝や談志に比べるとずいぶん下手だよ。」
「僕はまだ二つ目ですから。あの人たちは真打ちだしキャリアも違いますから。」
「君いくつ?」
「23になりました。」
「その頃は志ん朝や談志はもっとうまかったよ。」
ぐうの音もでない‥。
しまいには女子高生にもダメ出しを食らう始末。
終電も終わりアパートまで傷心のまま歩いて帰ることに。
その道すがらの風景を訥々と話しながら歩いていく志ん魚。
「30過ぎの芸者衆と40過ぎの浮気男が向島の一つ屋根の下で寝ている。」
「カラスがカアカア飛んでいく、吉原上空へ向かうのか「明烏」志ん生師匠聞いていますか?」
「人形焼きの匂いがない浅草は寂しい‥」
「思い出のはなやしきへと足が向かう、今頃どうしているだろう。」
アタシは完全にノックアウト!
そしてラスト間際のシーン。
兄弟子の真打ち昇進が決まり、そのパーティーでの終わり際の弟弟子との酔い冷ましでの会話。
「ヘタクソのまま年寄りになってしまったら兄さんどうするんでしょうねえ・・?」
「今のままって事はないさ、変わるさ。」
「落語を続けていきたいなあ。」
「うん。」
「落語が潰れることってないのですかねえ?会社みたいに。」
「潰れることはあるかも知れないけど‥その時は日本だって潰れるさ‥。」
アタシはこのセリフで顔面がクシャクシャになってしまう、泣くのを堪えて。
あまりにも切ない‥切なすぎるセリフ。
映画公開から早や27年が過ぎて落語は潰れるどころか元気だが
肝心の「日本」は潰れる寸前だぞ!
この映画はお金も掛かっていないし、派手なストーリーではないのですが
クスッと笑えて切ない気持ちになれるアタシの大好きな映画です。
機会がありましたら是非ご覧下さい。
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