ルーティンの朝のイヌの散歩の途中、近所のトタン葺きの古家の取り壊しが始まろうとしていた。
ココは小学1年生から中学1年までアタシと同じクラスだったMくん一家が住んでいた家なのだよ。
Mくんの家は両親と2歳年上の兄とM田くんの4人家族。
父親は近くの会社に勤めていて母親は家で内職。
Mくん兄弟は学校から家に帰ると内職の手伝いを強制的にやらされるので1度帰ると外に出て遊びに行けない。
だからタマに友達の家にランドセルを置かせてもらい一頻り遊んでから帰宅をする。
そしてMくん兄弟は親からお小遣いを貰っていなかった。
お小遣いを貰えないから駄菓子屋やスーパーマーケットで菓子などを万引きをする。
ある日、隠していた「戦利品」が親に見つかりこっ酷く怒られた時もあったそうだが、如何せんその後も相変わらずお小遣いが貰えないので万引きを止められる訳がない。
あれは中学1年生の丁度今くらいの時期だった。
急にMくんの羽振りが良くなり学校帰りに友達(アタシを含む)に立ち食いそば等を奢るようになった。
うーむ怪しい、コレにはナニか裏があるな。とアタシは睨んでいたのだが、やはり裏があり皆に振る舞っていた金の原資は隣のクラスの女の子の鞄から盗んだ、その女の子が親から学校帰りに米を買って来る様に渡された1万円だった。
それは学校を挙げての大騒ぎとなり、年が変わって進級の際にMくん一家はどっかに引っ越して行ってしまった。
それ以来およそ45年もの間、件の家は空き家になっていたが、今回の取り壊しを目の当たりにして久しぶりにMくんの事を思い出した。