体温の殻に閉じ籠っていたい朝だった。
自分と言う世界が自棄にやかましいから、
眠るに任せていたかった。
やむを得ず家を出ると、
六甲の山から進んで来た雲群に少し驚いた。
お盆過ぎの海にクラゲが大量発生することがある。
今朝の空は、それを思い出させた。
その後ろに鎮座する六甲の山並みは、
清々しくくっきりと綺麗だった。
まるで憂いを感じさせない姿に、完全なる敗北を感じた。
打ちのめされた感たっぷりに歩を進めた。
駅へ着く頃には、あさひが射し込んできていた。
金色とも橙色ともつかない色に、
すべてが美しく染まっていた。
なのに、私もその色に染まっていた事を
認識できないでいた。
私という窓からの眺めから離れることができない。
捨ててしまいたいと思っていながら、
このフレームを忘れることができない。
一心不乱の心地好さは、そこにはない。