さて、東京WSも無事終わった事ですし、今日は、ふたたびディープなポルトガル公演の話題を続行。
櫻井郁也/十字舎房ポルトガル公演報告
第三章「舞踏ワークショップ~ポルトガルの人々」(1)
【朝】
朝7時半というのに、人影はまばら。
酔っぱらいがひとり。
ぼこぼこの石畳の道には、夜宴の残照が、まだ残っています。
ロウレーでの公演を終え、僕らはフェスティバルの拠点である、この地に戻ってきました。
そして、僕は朝の走り込みをしている、その情景。
ゆる~いテンポで開店準備しているカフェのおじさんが、
ハッハッと走る僕の姿を、ものめずらしげにながめつつタバコを一服。
あの東洋人、何を急いでるんだろう?みたいな視線。
ジョギングとか、そういう習慣ないんでしょうか。
朝の散歩も見かけないし、ましてや都会の慌ただしい出勤風景なんか予想していたんだけど、
東京の朝とは、ちょっと違うみたいです。
教会の鐘がカラン・・・。
すごく斜めの朝日にとっても長い影。
路傍に寝そべっている犬さえ、何だか眠そう。
すぐそばの海辺からは、潮の香り。
これでも、れっきとした都会の朝です。
アルガルヴェの中心地、ファロ。
この街が、これから帰国まで、僕らのベースキャンプとなります。
まず、ここで待ち受けているのは6日間におよぶ舞踏ワークショップ。
いよいよ現地の人とのセッションです。
【舞踏ワークショップ in Portugal】
舞踏って、何でしょう。そこから、始めなければならない。というのが、このポルトガルでのワークショップ。エージェントによると、これが、アルガルヴェ地方、初の舞踏稽古ということです。
もちろんここはヨーロッパです。日本国内以上に舞踏への評価は定着しており、リスボンでは山海塾やカズオ・オオノも紹介済み。フェスティバルでも、僕=櫻井郁也、笠井叡先生、由良部正美さん、など舞踏家の公演がラインナップされています。
しかし、実際に踊るとなると、大変なのは眼に見えています。一晩二晩見たものをなぞった所で感動もしぼむだけでしょう。やはり身体に直接注入するわけですから、表面的な事をやるわけにはいかない。
色々考えました。推敲しました。歴史的背景、さまざまなアーティストの軌跡、思想、身体論、日本文化、僕らの生活感情・・・。英語テクストの準備やら。
でも、僕はやはり現場の人間。感性と体だけが、たよりの暮らしを営む人間です。色々考えたけど、それは自分の勉強としてそっと心の内に。最初の稽古に理屈は不実。理屈は捨て、いつもどおりにやる。そう決めました。
最初の稽古ほど大事なものはありません。はじめて練習する人にこそ、僕が一番大切にしている事を伝えておきたいんです。種を植えるようなものですから。
型破りでありつつも全身を魂と見立てた丁寧な動きこそ「舞踏」の本質です。舞踏は、産みの苦しみ、産みの喜びが、まだまだ生々しい分野。我々も舞踏家と名乗りつつ、試行錯誤はまだ終わっていません。瞬間瞬間の思い全てを話し、一緒に汗をかいて踊り、その場で生まれるカタチやイノチを共有したい。既成のジャンル紹介としてではなく、「ポルトガルの舞踏」を一緒に生み出す作業を、と思ったのです。
心に決めたのは、この6日間で最低限、全員が「踊れる」ように、という目標。できることなら、卵でもいいから、ポルトガル人の舞踏家を!
そう決めたら、わずか6日、時間はありません。
初日から本気で踊ってもらおう、と思いました。そうする中で産まれるものをこそ、大事にしたいし、異国の踊りとして通過するのではなく、文化の違いを乗り越えて、なんとか「人間の踊り」として動いたという実感をもってもらいたい。
ひらめく限りの言葉をしゃべりながら、踊ったり、音をならしたりする僕。アシスタントのYUUKOが英語に、英語が出来る人は、ポルトガル語に直す。助け合いながら、20人あまりの肉体がゆらぎ、波打ち、床を這っていきます。いよいよ、アルガルヴェ初、6日間にわたる舞踏ワークショップの始まりです。(つづく)
櫻井郁也/十字舎房ポルトガル公演報告
第三章「舞踏ワークショップ~ポルトガルの人々」(1)
【朝】
朝7時半というのに、人影はまばら。
酔っぱらいがひとり。
ぼこぼこの石畳の道には、夜宴の残照が、まだ残っています。
ロウレーでの公演を終え、僕らはフェスティバルの拠点である、この地に戻ってきました。
そして、僕は朝の走り込みをしている、その情景。
ゆる~いテンポで開店準備しているカフェのおじさんが、
ハッハッと走る僕の姿を、ものめずらしげにながめつつタバコを一服。
あの東洋人、何を急いでるんだろう?みたいな視線。
ジョギングとか、そういう習慣ないんでしょうか。
朝の散歩も見かけないし、ましてや都会の慌ただしい出勤風景なんか予想していたんだけど、
東京の朝とは、ちょっと違うみたいです。
教会の鐘がカラン・・・。
すごく斜めの朝日にとっても長い影。
路傍に寝そべっている犬さえ、何だか眠そう。
すぐそばの海辺からは、潮の香り。
これでも、れっきとした都会の朝です。
アルガルヴェの中心地、ファロ。
この街が、これから帰国まで、僕らのベースキャンプとなります。
まず、ここで待ち受けているのは6日間におよぶ舞踏ワークショップ。
いよいよ現地の人とのセッションです。
【舞踏ワークショップ in Portugal】
舞踏って、何でしょう。そこから、始めなければならない。というのが、このポルトガルでのワークショップ。エージェントによると、これが、アルガルヴェ地方、初の舞踏稽古ということです。
もちろんここはヨーロッパです。日本国内以上に舞踏への評価は定着しており、リスボンでは山海塾やカズオ・オオノも紹介済み。フェスティバルでも、僕=櫻井郁也、笠井叡先生、由良部正美さん、など舞踏家の公演がラインナップされています。
しかし、実際に踊るとなると、大変なのは眼に見えています。一晩二晩見たものをなぞった所で感動もしぼむだけでしょう。やはり身体に直接注入するわけですから、表面的な事をやるわけにはいかない。
色々考えました。推敲しました。歴史的背景、さまざまなアーティストの軌跡、思想、身体論、日本文化、僕らの生活感情・・・。英語テクストの準備やら。
でも、僕はやはり現場の人間。感性と体だけが、たよりの暮らしを営む人間です。色々考えたけど、それは自分の勉強としてそっと心の内に。最初の稽古に理屈は不実。理屈は捨て、いつもどおりにやる。そう決めました。
最初の稽古ほど大事なものはありません。はじめて練習する人にこそ、僕が一番大切にしている事を伝えておきたいんです。種を植えるようなものですから。
型破りでありつつも全身を魂と見立てた丁寧な動きこそ「舞踏」の本質です。舞踏は、産みの苦しみ、産みの喜びが、まだまだ生々しい分野。我々も舞踏家と名乗りつつ、試行錯誤はまだ終わっていません。瞬間瞬間の思い全てを話し、一緒に汗をかいて踊り、その場で生まれるカタチやイノチを共有したい。既成のジャンル紹介としてではなく、「ポルトガルの舞踏」を一緒に生み出す作業を、と思ったのです。
心に決めたのは、この6日間で最低限、全員が「踊れる」ように、という目標。できることなら、卵でもいいから、ポルトガル人の舞踏家を!
そう決めたら、わずか6日、時間はありません。
初日から本気で踊ってもらおう、と思いました。そうする中で産まれるものをこそ、大事にしたいし、異国の踊りとして通過するのではなく、文化の違いを乗り越えて、なんとか「人間の踊り」として動いたという実感をもってもらいたい。
ひらめく限りの言葉をしゃべりながら、踊ったり、音をならしたりする僕。アシスタントのYUUKOが英語に、英語が出来る人は、ポルトガル語に直す。助け合いながら、20人あまりの肉体がゆらぎ、波打ち、床を這っていきます。いよいよ、アルガルヴェ初、6日間にわたる舞踏ワークショップの始まりです。(つづく)