櫻井郁也ダンスブログ Dance and Art by Sakurai Ikuya/CROSS SECTION

◉新作ダンス公演2024年7/13〜14 ◉コンテンポラリーダンス、舞踏、オイリュトミー

フジコ・ヘミング:奏楽堂コンサート

2008-04-13 | アート・音楽・その他
芸大の旧奏楽堂で、フジコ・ヘミングさんのピアノを聴くことができました。
一曲目のスカルラッティのホ長調で、いきなり腰を抜かしちゃって。ええっ、こうなっちゃうんだ!変な例えですが、名人が炊いたお米みたい。あの聞き慣れた可愛らしいソナタが教会のミサのように響いてしまう。心がグラグラです。奏楽堂は古い木造ですから、風の音も少し聴こえるし、外の車の音なんかも乱暴に入ってきます。でも、ピアノから出るエネルギーは、一瞬にしてすべてのノイズを包み込み、パウゼには、かえって心地よく趣をそえるほどに、ピアノと共存するのです。ほんとうの演奏家は、実際に演奏している譜面だけでなく、全部の音を音楽に取り入れるくらいの感覚を、僕らに与えてくれます。

思えば、むかし、ジョン・ケージの「4分33秒」という曲で、その場所にひびく色んな音を楽しむことができた体験がありました。ピアニストが楽器に向かい合ったまま、一度も弾かないで4分半ほどすごす、という曲なのだけど、ここからここまで、と決めてあるので、その4分半はすごく集中力が高まり、聴こえる音全部が音楽に感じられてしまうのです。音楽って、関係をつむぐ芸術なんだなあと思った、そのときのことが、この日は聞き慣れた古典のなかで、ふと甦ったのです。
それから、やはり感じたのは、演奏する身体の美しさ。小さな会場ですから、ほんと目の前で、息使いまで伝わってきます。こんなに接近した場所から、彼女の演奏に触れるチャンスがあったのは、ほんとにラッキーでした。全身のエネルギーがこぼれでる指先から、ペダリングの足まで、一流の舞踏家みたい。背中には、はかり知れない感情が見えます。やっぱり音楽家はダンサーと似ています。
ショパンにリスト(あのカンパネラも!)、それらを聴く者の酩酊はご想像通り。しかし、その後、いきなり雷に打たれたようなショックが来ました。
弾けるかな~なんて仰りながら、いきなり「テンペスト」を演奏されたのです。

まあ、凄くて・・・!!

スカルラッティの仰天から2時間。心の階段を、奥の奥まで転がり落ちてゆくような音、音、音。とんでもない音の滝。どうしたらいいのかわからない感情がこみあげて、涙腺がゆるんでしまいました。この曲を初めて聴いたときのような衝撃です。芸術って、激しさを通り越すと本当の静けさがあらわれて、なんだか救われるような感覚が生まれてきます。こんな演奏で踊れたら死んでもいいんじゃないか、なんて、思っちゃいました。ベートーヴェンって、人を試すと思います。弾ける人も少ないし、踊れる人となると、まだ見たこともありません。ですが、聴いちゃいましたよ。いや、一生ものの体験をいただいてしまいました。本気です。
高校生のとき、バーンスタイン/NYフィルのマーラー演奏会を聴いて泣きながら帰りました。あの音は、いまだに僕を勇気付けてくれます。ごくわずかな本物との出会いが、芸術の力を信じて生きていける根拠を与えてくれます。久々に、新しい宝が加わりました。この日の、フジコさんの音。ほんとうにウレシイ。ありがとうございます!!
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1 コメント

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ご来場ありがとうございました (ZBイベント実行委員会 松崎)
2008-04-14 12:43:30
4月9日のチャリティコンサートへご来場いただきまして、誠にありがとうございました。主催のZBイベント実行委員会委員長の松崎です。
皆様のおかげで、無事コンサートを終えることができました。重ねて御礼申し上げます。
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