あらためて衝撃的だった、というのは変な言葉使いかもしれないが、ついそんな風に言ってしまうほど感情が高まったのが、土門拳の写真展だった。恵比寿の東京都写真美術館がやった「古寺巡礼展」である。
僕は奈良に生まれ育ったから、この人の写真は幼児より何度も見たし、そこに写されている仏サンや仏閣の柱も屋根も毎日の暮らしで接していたから非常に身近で、匂いまで思い出す。そしてあの後ろの方に限りなく開かれた暗闇も、季節や空気と同じような重さで身体に入っている。けれど、それでも、あらためてイマこの歳になってこの東京で一気にあの写真群と土門拳の言葉に改めて触って、ゾゾっとするほどの電流が眼から全身に流れ込んだのは、想定外だった。
あの写真群を直接目の当たりにするのだから、土門拳の凝視の凄まじい力が伝わってくるのはもちろんだし、彼が凝視した被写体の奥に鳴り響く無音の音楽が聴こえてきて悩ましいような心理空間が生まれてくるのだ。さらに、添えられた土門自身の言葉が実に鮮烈で、僕の胸の最深部に混濁しているものを、突き刺し、かき回す。また、徹底的な凝視の果ての一撃たるシャッター音を想像すると、これはもう背筋がシャキッとする。つまり、全身で感情したのだ。
ふと、いま私たちには私たち自身の魂の根を知るべき時が来ているのでは、と思うことがある。そんな個人的な時代感にも重なり、いまこのタイミングで、この展示が計画されたこと自体が、実に面白いとも思った。
コンテンポラリーダンス、舞踏、オイリュトミー
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