徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

「エンテロウイルスD68」による麻痺

2016年08月16日 07時29分24秒 | 小児科診療
 昨年秋、風邪を引いて喘息発作を起こす患者さんが多く、小児科医の間で話題になっていました。
 その後、犯人は「エンテロウイルスD68」と判明し、このウイルスは神経も犯すこともわかってきました。
 このウイルスに対するワクチンは現時点で存在せず、特効薬もありません。

■ 子供が原因不明の手足まひ、8割が症状残る
(2016年8月10日 読売新聞)
 昨年夏以降、手足に原因不明のまひなどが起きた子どもが相次ぎ、一部の患者から「エンテロウイルスD68」が検出された問題で、日本小児科学会は、まひが表れた患者のうち8割に症状が残ったとする中間報告をまとめた。
 中間報告によると、手足のまひが起きた患者のうち、ウイルス性の脊髄炎が原因とみられる54人を分析した。
 まひが完全に治ったのは5人のみで、33人は改善が一定程度でとどまり、11人は改善が見られなかった。
 手足のまひ以外に、4人に意識障害、11人に手足に感覚障害が起きた。8人は顔面まひやのみ込みの悪さを覚えていた。
 45人の画像分析では、全員に脊髄に異常が見られ、このうち20人は脳幹にも異常が確認された。


 昨年秋のニュースです;

■ 麻痺が残るエンテロウイルスD-68 流行のおそれ 感染研
2015年10月16日:Hazard lab
乳幼児や子供がかかるとぜんそくのような症状から、筋肉の虚弱やまひを引き起こす「エンテロウイルスD-68型」が国内でも流行のおそれ
 昨年、全米で1000人以上が感染した“謎のウイルス”と呼ばれる「エンテロウイルスD-68型」の感染が、先月、東京や埼玉県内で相次いで確認されたと、国立感染症研究所が15日発表した。
 「エンテロウイルスD-68型」はぜんそく症状を引き起こす呼吸器疾患で、海外では昨年8月、米国で大流行し、今年1月までに全米で1153人が感染し、このうち14人が死亡したと報告されている。
 乳幼児や子供が発症しやすく、大人では症状が無かったり、軽傷で済む場合が多い。発熱やくしゃみ、鼻水などの軽症から、気管支炎や肺炎、呼吸困難に至り、重症化すると筋肉が虚弱化し、脳神経機能に異常をきたす場合もあり、麻痺が残るケースもある。
 国立感染症研究所によると、東京都内では9月に小児総合医療センターに気管支ぜんそくのような症状で入院する患者が急増。このうち生後11カ月の女の子や2歳の男児など4人の子供の鼻水や気管内から「エンテロウイルスD68型」が検出された。
 さらに埼玉県内でも、医療機関に入院した11カ月の男の子や5歳の女児など8人からウイルスの陽性反応が報告された。いずれも気管支ぜんそくや急性気管支炎で入院し、このうち11カ月の男の子は、9月7日に右半身に弛緩性まひの症状が現れて入院。9日から10日にかけて左足にもまひが進み、退院後も右側には後遺症が残ったという。
 エンテロウイルスD-68型は、国内では2010年と2013年に120例以上の感染が報告されたが、今年は今月13日までに全国で51例発生している。ウイルスに対するワクチンは今のところ無く、国立感染症研究所では、予防のためにこまめな手洗いと塩素系の消毒剤による消毒が有効だとして注意を呼びかけている。

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