小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

花粉症患者は車を運転してはいけない?

2018年04月08日 09時06分14秒 | 花粉症
 花粉症の症状が激しくなると発作的に「くしゃみ」が止まなくなります。
 すると、目の前のことができなくなり、それが車の運転中、事故を起こす可能性が発生します。
 そして事故を起こすと「有罪」になってしまうのです。
 花粉症を甘く見てはいけません・・・。

■ 花粉症ドライバー要注意 くしゃみ・涙…事故の危険
2018/4/5:日本経済新聞)より
 花粉症に悩む車のドライバーにとってくしゃみや鼻水などの症状は事故を招きかねない難題だ。実際、死傷事故を起こし有罪判決を受けたケースもある。スギ花粉だけでなくヒノキ花粉の飛散も本格化するなか、車間距離を確保し、副作用の少ない治療を選択するなど、対策を徹底して安全運転に努めたい。
 「症状が出た以上、速やかに運転を中止しなければならず、過失は軽いとはいえない」。愛媛県今治市の国道で2017年4月、花粉症のくしゃみなどの症状で追突事故を起こし、3人を死傷させた50代の男性に松山地裁今治支部は18年2月、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪で執行猶予付きの有罪判決を言い渡した。
 男性は花粉症の薬を服用していたが、運転中に目のかゆみや連続するくしゃみなどの症状が激化。前方不注意のまま対向車線にはみ出し、軽乗用車と正面衝突した。
 日本自動車連盟(JAF)も「たかが花粉症と甘く考えるのは禁物」と注意喚起する。JAF東京支部で交通安全講師を務める高木孝さんは「正常な運転ができない状態で事故を起こせば、重い責任を問われる恐れもある」と強調する。
 くしゃみは肋骨骨折の原因になることもあるほど衝撃が大きく、ハンドルの誤操作を招きかねないほか、くしゃみ1回で0.5秒、目をつぶると仮定すると時速60キロで走行中ならその間に車は8メートル進む計算になる。高木さんは「花粉症では2回、3回と連続してくしゃみが出る患者も多い。涙や鼻水などの症状も運転に影響しやすく、大変危険だ」と話す。
 高木さんは車内に花粉を持ち込まない対策として、空調で外気を取り込まないように設定を変更したり、空調のフィルターを定期的に交換したりすることを推奨。「症状がひどい時は運転しないことが最も大事。もし運転する場合も、突然の症状に備えて普段よりも車間距離を広く取り、速度も落とすべきだ」と訴える。
 一方、日本アレルギー学会専門医の池袋大谷クリニック、大谷義夫院長は「花粉症の薬は眠くなったり、集中力が低下したりする副作用にも注意が必要」と指摘する。大谷院長によると、抗アレルギー薬には眠気の副作用があるものが多く、薬の添付文書に「運転などに従事させない」「服用中は車の運転に注意」と明記されているものもある。


 その「運転中の花粉症症状(くしゃみ発作)で交通事故を起こし有罪判決」の記事を紹介します。
 治療していても、激しい症状が出たら車を止めなくてはいけないといいますが、突発的なくしゃみ発作はどうしようもないと思うのですが・・・ゆっくり安全運転するしか対策はないようです。

■ 花粉症状で交通死傷事故、高校教頭に有罪 愛媛・今治
2018/2/3:日本経済新聞
 愛媛県今治市の国道で2017年4月に乗用車を運転中、花粉症による連続したくしゃみなどの症状で事故を起こし、3人を死傷させたとして自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪に問われた県立今治北高の教頭、藤沢一仁被告(54)=休職中=に、松山地裁今治支部(満田智彦裁判官)は2日、禁錮3年、執行猶予4年(求刑禁錮3年)の判決を言い渡した。
 満田裁判官は、被告が花粉症による目のかゆみやくしゃみなどの症状が激しくなった際、容易に駐車できる場所もあったのに運転を続けたと指摘。「事前に花粉症対策の薬を服用していたとしても、症状が出てしまった以上、速やかに運転を中止しなければならず、過失は軽いとはいえない」と述べた。
 判決によると、昨年4月23日午後2時35分ごろ、今治市内で乗用車を運転中、花粉症の症状で前方注視が困難になり、対向車線に車をはみ出させ、軽乗用車と正面衝突。軽乗用車に乗っていた同市玉川町の無職の女性(当時61)を死亡させ、同乗の息子2人にも重軽傷を負わせた。
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2018年春のヒノキ花粉飛散は過去最大?

2018年02月09日 06時19分05秒 | 花粉症
 春の花粉症は、おおまかに「3月まではスギがメイン、4月からはヒノキがメイン」です。
 リアルタイムの花粉飛散情報をみていて毎年感じるのは、スギとヒノキの花粉が区別されていないもどかしさ。
 とそんなタイミングで、ヒノキの花粉も調査されるようになっていたことを知りました。
 今年は多いんですね(T_T)。

※ 下線は私が引きました。

■ヒノキ花粉も過去最大 〜 雄花着花量調査結果
2018.2.8:タウンニュースさがみはら緑区版
◇ スギ同様平均を多く上回る
 自然環境保全センター(厚木市)は2月1日に、スギ(昨年12月に調査)に続き、花粉の飛散量を予測する上で根拠となる、ヒノキの雄花の着花量の調査結果を発表した。それによると、”昨年の5倍増”と予想されたスギ同様、今年の春のヒノキの花粉の飛散量は、かなり多いと予想している。
 近年スギに加え、花粉症の原因となるヒノキの花粉が増えている。ヒノキは植栽された時期が新しく、雄花をつける樹齢に達する樹木が近年増えているからだ。
 同センターは、こうした状況を踏まえ、2012年度からヒノキの雄花の着花量の調査を実施。一昨年度初めて調査結果を公表し、全国で初めてヒノキの雄花量による花粉飛散予測を行った。調査は県内40カ所のヒノキ林で実施した。
 それによると今年度、着花点数の平均値は80・8点。昨年度の34・1点を大幅に上回っている。調査を始めてから6年間の平均値は、50・1点で、今回の結果が過去最高の点数を記録した。また、40カ所の内、緑区が位置する県北部が87・8点と県内で最も高い結果となっている。
 同センターによると、「昨年夏の気象(横浜地方気象台「海老名観測所」)では、7月の平均気温は平年の108%、降水量は66%、日照時間が平年の113%と、雄花が多くなる条件となったためと推測する」と話す。一方、8月の平均気温は平年並みだったが、降水量は平年の106%と多く、日照時間も平年比95%と雄花が少なくなる気象条件だったが、過去最高の着花点数となった結果に対し、同センターは「直接の関係はまだわからないが、7月の猛暑が影響していると考えられる」と話した。
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花粉飛散調査隊「ポールンロボ」、始動準備

2018年01月26日 08時20分03秒 | 花粉症
 私は春の花粉症シーズンのリアルタイム情報を知りたいときにウェザーニュースのHPをよく閲覧します。
 これは、全国の協力者がウェザーニュースから配布された機械「ポールンロボ」を設置して情報を送るというシステム。タイムラグがないので、今の自分の症状が花粉によるものかどうか、判断しやすくなります。
 ことしもその「ポールンロボ」の発送が始まりました;

■ 花粉観測機「ポールンロボ」、全国1,000の企業や家庭に発送中!



2018年1月25日 By ロボスタ編集部
 株式会社ウェザーニューズは、花粉シーズンを目前に控えた今日、全国の花粉症の家庭に向けて、独自に開発した花粉観測機「ポールンロボ」を順次発送していることを発表した。同社は、一般ユーザーとともに花粉症に立ち向かう「花粉プロジェクト」を2005年から実施しており、今年も全国のご家庭や病院、企業に約1,000台の『ポールンロボ』を設置していく予定だという。
 「ポールンロボ」は空気中に含まれる花粉をカウントし、観測した花粉量に応じて目の色を「白」「青」「黄」「赤」「紫」の5段階に変化させる。「ポールンロボ」が観測した花粉飛散量の観測データは、スマホアプリ「ウェザ—ニュースタッチ」やウェブサイトの「花粉Ch.」にて、設置が完了した所から順次公開されていくという。
 ウェザーニューズでは、この観測データと気象データ、そして全国の花粉症の方々から届く症状の報告を合わせて、毎日の花粉予報など各種花粉コンテンツに活用していく。中でも「花粉対策アラーム」では、毎朝その日の予想飛散量や一人ひとりの症状にあった花粉対策を、臨時で大量飛散や花粉シーズンの開始・ピークの情報を、スマホにプッシュ通知でお知らせする。
 今シーズンの花粉は、2月初めに九州南部や関東を中心に飛散が始まり、西・東日本の広範囲で飛散ピークを迎えるのは、スギ花粉は3月上旬、ヒノキ花粉は3月下旬~4月中旬の予想されている。飛散量(全国平均)は、2017年夏と秋に天候不順が続いたこともあり、平年の65%、2017年の75%と少なくなるという。「ただ、強風時や雨の翌日は一時的に大量飛散の恐れがあるため、油断せず備えが必要です」とウェザーニューズは伝えている。

◇ 目を光らせて花粉飛散量を伝える「ポールンロボ」
 「ポールンロボ」は直径約15cmの球体で、人の顔に見立て、目、鼻、口がかたどられている。口の部分からは成人の呼吸量と同量の空気を吸い込み、人の呼吸時とほぼ同量の花粉を観測できるように設計されている。「ポールンロボ」の目の色は、観測した花粉の量によって「白」「青」「黄」「赤」「紫」の5段階で変化し、設置場所の花粉飛散量がひと目でわかるようになっているという。なお、今年は無線LAN対応版のポールンロボを増強し、一部にPM2.5センサーをテスト搭載している(PM2.5のデータを閲覧することはできない)。



 この「ポールンロボ」は、2017年11月13日までに設置の応募をした方の中から、選定された1,000名に送られている。
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日本の花粉飛散情報は春のスギ/ヒノキしかない。

2017年11月05日 06時22分53秒 | 花粉症
 私もこの記事の著者と同じことを以前から感じていました。
 ネット上を探しても、日本の花粉飛散情報は春しかないのです。
 3月はスギがメイン、4月はヒノキがメインとはわかっていますが、その区別さえありません。
 しかし実際には5〜8月のイネ科花粉(カモガヤ、オオアワガエリ)、秋の雑草花粉(ブタクサ、ヨモギ)も重要です。
 そしてスギ花粉の飛散も春だけではないことがわかってきています。
 何とかなりませんかねえ・・・。

■ 今年の秋の花粉症はひどすぎないか? きめ細かい花粉情報を通年で提供してほしい
(2017.11.2:家入龍太 | 建設ITジャーナリスト/株式会社イエイリ・ラボ代表取締役)
春の最盛期のような花粉症が秋にやってきた
 今年の10月中旬以降から2週間以上にわたり、目のかゆみ、睡眠時の口呼吸、止まらない鼻水とくしゃみ、のどのヒューヒュー音、そして頭のかゆみなど、まるで春のように激しい花粉症の症状に見舞われている。
 高校生の頃から約40年の歴史を誇る“ベテラン花粉症患者”の筆者だが、秋にこのような症状を経験したのは初めてだ。
 街中でも、心なしかマスクをした人を多く見かけるような気がする。試しに、ツイッターで「花粉症」というキーワードで検索してみると、昨夜は毎分5~6件の書き込みがあった。その中には、筆者と同様に花粉症の激しさに悩んだり、驚いたりする人も多くいた。耳鼻科の駐車場がいっぱいでなかなか駐車できないというレポもあり、花粉症の症状が出ている人が多いことがうかがわれた。その一方で、自分の症状の原因が花粉症なのか、それとも風邪なのかわからないといった声も少なくなかった。
しかし、花粉の飛散情報は見当たらず
 この症状はおそらく、何かの花粉が大量に飛散しているに違いないと思った筆者は、「今の日本に、どんな種類の花粉がどれだけの量、飛散しているのだろうか」をちょっと調べてみようとウェブサイトをググってみた。
 ところが、春の花粉シーズンにはおなじみの「花粉ナビ」は5月19日以降、更新されていなかった。環境省花粉観測システム「はなこさん」も、6月30日を最後に店じまいしていた。
 また、花粉観測機「ポールンロボ」を一般に配布してきめ細かい花粉情報を提供している「ウェザーニュース」の「花粉 Ch.」も現在は“CLOSED”と表示されている。
 結局、今の日本にどんな種類の花粉がどれだけ飛んでいるのかというリアルタイムな情報はわからないままだ。
通年化する花粉症の原因をリアルタイムで知りたい
 花粉のシーズンである春には多かれ少なかれ、スギやヒノキの花粉が飛び回っていることはわかるので、それなりの対策はしやすい。ところがそれ以外の季節にも、イネやブタクサなどの花粉が飛散することがあり、急に鼻の調子が悪くなったりする。もはや花粉症は春だけの問題ではなく、1年中を通じて対策が必要になっているのではないか。
 こんなときに、何が原因なのかを考えたり、対策したりするうえで、今、どんな花粉が飛んでいるのかを知ることは重要な手かがりだ。花粉情報サイトも、そろそろ通年での情報提供を検討してほしいと思う。
海外では花粉の種類別に通年情報提供の例も
 筆者はちょくちょく米国に出掛ける機会があるが、日本では何ともなかったのに、現地では激しい花粉症に見舞われることも少なくない。そこで役に立っているのが「The Weather Channel」というウェブサイトだ。
 このサイトでは1年中、各地の花粉情報を、植物の種類(樹木、草、ブタクサの3種類)と飛散量で表示する機能をもっている。
 こうした花粉情報が1年中、手軽に入手できれば春以外の季節もきめ細かく花粉対策が行えるほか、体調不良の原因が花粉なのか風邪なのかといった問題の切り分けもしやすい。
 このサイトは日本の天気情報も提供しているようだが、花粉情報のコーナーは不安定だった。日本でも一つくらいのサイトは、通年でのきめ細かい花粉情報の提供を続けてほしいと願う今日この頃である。

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2018年シーズンのスギ花粉症予測

2017年10月06日 06時34分51秒 | 花粉症
 早くも2018年シーズンの花粉飛散情報が届きました。

■ 来シーズンの花粉飛散予測は!?天気.jp



 ムムッ、関東地方は160%と多いのですね(T_T)。
 おや?
 こんなニュースも。

■ 来春のスギ花粉は多いか少ないか? 正反対の日本気象協会とウェザーニューズの予想
2017/10/11:J-CASTニュース
来年春のスギ花粉は多いか少ないか。気象予報の民間大手、日本気象協会とウェザーニューズの予想が「まっこうから対立しています」と水卜麻美アナが伝えた。こんなことは初めてだそうだが、どちらにも根拠があるというのだから、花粉症の人は「なんで?」「どちらを信じていいのか」と言いたくもなる。
今月(2017年10月)発表された予想は、日本気象協会が「多い」で、東北から近畿までの広い範囲でスギ花粉が増え、とくに関東地方は前年の2倍になるという。ウェザーニューズは「少ない」で、四国や近畿で減り、とくに関東は半分以下の地域もあると見た。
夏の暑さ、どう評価
根拠は「今年(2017年)7月が全国的に高温のため、花の成長が盛んで、花粉も増えた」(日本気象協会)、「夏前半は猛暑だったが、8月に一転して雨が多かったため、花はさほど成長しなかった」(ウェザーニューズ)という。両社の担当者はそれぞれ「自信がある」「データに基づいている」と強調している。
30年以上スギ花粉を研究している佐橋紀男さんは「たしかに7月の暑さで花は成長したので花粉が多めの傾向はあるが、日本気象協会がいうように東京で2倍まではいかない」と話す。
両社とも年内にもう一度、予想を発表する予定。来年1月には東京都も予想を発表する。


 う〜ん、多いのか少ないのか、予想不能なのですか(^^;)。

 まだ秋なので、現在飛散している花粉はブタクサ、ヨモギ、カナムグラ、それとセイダカアワダチソウです。

■ 花粉症を引き起こす植物と飛散シーズンweathernews

(左からブタクサ、ヨモギ、カナムグラ)




 秋の花粉はスギ/ヒノキの花粉より小さいので、目の結膜や鼻粘膜に付着するだけでなく、期間の奥まで到達しやすいので咳も出やすいとされています。
 毎年この時期になると調子が悪くなる人は、秋の花粉症かもしれません。
 くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目の痒み、咳が2週間以上続く場合は、風邪ではなく花粉症の可能性があります。医療機関にご相談を。
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スギ花粉症舌下免疫療法の錠剤登場(5歳から使用可能!)

2017年09月28日 06時15分44秒 | 花粉症
 現在、スギ花粉症舌下免疫療法は液剤のシダトレン®のみですが、満を持して錠剤が登場します。
 従来は12歳以上しかできませんでしたが、今回「小児に対し使用可能」とのことですから、小児科医の私としては期待が膨らむニュースです。

■ 鳥居薬、スギ花粉症向け免疫療法薬の国内販売が承認
2017/9/27:日本経済新聞
 鳥居薬品(4551)は27日、スギ花粉症向けのアレルゲン免疫療法薬「シダキュア スギ花粉舌下錠」の国内製造販売の承認を取得したと発表した。シダキュアは国内で初めて成人や小児に対し使用可能となった舌下錠で、14年10月から販売していた「シダトレン スギ花粉舌下液」よりも高力価の製剤という。販売時期は決まり次第発表する。


■ スギ花粉症薬、錠剤で承認取得 鳥居薬品  小児も服用可能に
2017/9/27:日本経済新聞
 鳥居薬品は27日、舌下から吸収して服用する錠剤のスギ花粉症薬について、厚生労働省から製造販売承認を取得したと発表した。アレルギー疾患の原因になるアレルゲンを低濃度で取り込み、花粉に対する過敏性を減少させる薬。対象患者の制限がなくなり、12歳以下の小児でも服用できる。液剤の従来薬に比べて剤形を工夫して保管しやすくし、利便性を高めた。
 「シダキュアスギ花粉舌下錠」の製造販売承認を取得した。服用方法は1日1回1錠、舌下に1分間錠剤を保持した後に飲み込む。3~5年にわたって服用を続ける必要がある。
 従来の液剤型の薬は冷蔵保存する必要があったが、錠剤にすることで室温保管できるようになり、持ち運びやすくした。対象年齢も従来薬は12歳以上に限っていた。


★ 追記(2017.9.29)
 5歳から使用可能だそうです。
 液体のシダトレン®は冷蔵庫保存が基本ですが、シダキュア®は錠剤なので室温保存が可能です。
 それから、シダトレン®は舌下に2分間保持でしたが、シダキュア®は1分間でOK。

■ 日本初、5歳から使える免疫療法薬 〜より幅広い適用年齢を有する舌下錠が承認
2017年09月28日:メディカル・トリビューン
 鳥居薬品は9月27日、スギ花粉症に対するアレルゲン免疫療法薬「シダキュアスギ花粉舌下錠(以下、シダキュア)2,000JAU、同5,000JAU」の製造販売承認を取得したと発表した。同薬は日本で初めて5歳以上の小児から使用できるスギ花粉症に対する舌下免疫療法薬で、「シダトレンスギ花粉舌下液(以下、シダトレン)」より高力価かつ利便性が高いという。
室温保存が可能、服薬も容易に
 同社では、2014年10月よりスギ花粉症に対する免疫療法薬・シダトレンを販売していたが、12歳未満は適用外とされていた。
 そのため、5歳以上から適用できるシダキュアの登場により、治療できる年齢層はより広がると見られる。
 また、シダトレンは冷蔵庫内など冷所での保存が必要で、舌下に滴下後、2分間保持してから服用しなければならなかったが、シダキュアは室温で保存ができ、服用の際、舌下に保持する時間が1分間で済むため、シダトレンより利便性が高いとされる。
 厚生労働省が2011年に報告した全国調査の結果によると、日本人のおよそ25%が花粉症に罹患しており、そのうち約70%がスギ花粉症であると考えられている。"国民病"ともいえる同疾患に対し、同社は「シダキュアが治療の選択肢を広げ、患者に貢献できることを期待している」と述べている。

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スギ花粉舌下免疫療法・2年目の検証

2016年06月29日 15時21分45秒 | 花粉症
 2014年10月に認可されたスギ花粉舌下免疫療法。
 2シーズン経過後の評価は良好です。
 ダニによる舌下免疫療法にも期待したいですね。

■ スギ花粉・舌下免疫療法,実臨床2年目を検証
2016.05.14:メディカル・トリビューン
 スギ花粉舌下液を用いた舌下免疫療法(SubLingual Immuno-therapy;SLIT)が,2014年に臨床導入されて2年目となる。SLITは,スギ花粉が飛散していない時期に投与を開始し,1〜2週はアレルゲン増量期,3週以降は維持期のスケジュールで,数年間にわたる毎日の服用が必要となることから,長期継続のための患者教育が重要となる。そこで,花粉症診療のエキスパートに,SLIT実臨床の成績から,治療継続率を向上させる鍵について聞いた。

◇ ほぼ全例が治療を2年間継続,鍵はコミュニケーション
米倉氏 SLITは最低でも2年間は継続することがポイントである。千葉大学耳鼻咽喉科診療講師の米倉修二氏によると,同大学病院耳鼻咽喉科SLIT外来の約60例は,ほぼ全例が2年目(今年2月末現在)まで継続中である。

◇ 生活が不規則な患者への対応が課題
 同外来のSLIT導入例は,2014年に約30例(2年目),2015年は約30例(1年目)である。SLIT中断に至った数例がいたが,その理由は転勤や転校であった。米倉氏は「当外来でSLITを開始したほぼ全例が治療を継続できており,他院でもSLITを継続中なので,真の意味での脱落例はいない。ただ,生活が不規則であるために受診予約を頻繁に変更せざるをえない患者ではアドヒアランスが悪い傾向にある。今後の課題である」と言う。
 この点から,「当外来では患者とのコミュニケーションを重視する。薬剤の手渡しだけにならないよう,服薬忘れがないか,どのような状況下で服薬を忘れやすいかなどを意識してもらう」(同氏)。
 ある主婦の自己管理の例を挙げると,薬剤の冷所保存が必須なことから,冷蔵庫の扉の目に付くところに薬剤の袋を貼り付けている。毎日の服薬を意識付ける工夫として,毎朝,冷蔵庫の扉を開けるたびに袋が目に入るようにしている。また,同外来では患者に花粉症の症状の記録を付けることを指導している。同氏によると,症状の評価を行った記録があれば,前年の花粉シーズンと今年のシーズンで比較できる上,コミュニケーションが活性化するという。
 同大学と協力施設は2014年10月以降にスギ花粉症に対するSLITを開始した約100例に,2015年のゴールデンウイーク明けにアンケートを実施した。その結果,満足度は70%以上で「継続していきたい」は90%以上であった。同氏は「SLIT導入1シーズン目で患者がかなりの手応えを感じている」と評価する。

◇ スギ花粉特異的IgE抗体がバイオマーカーの可能性
 永倉氏ながくら耳鼻咽喉科アレルギークリニック(東京都)の永倉仁史院長は,SLIT開始1年目に実施したアンケートと,SLITによる免疫学的変化の検証結果から,「スギ花粉特異的IgE抗体の変動は,SLITのバイオマーカーとなる可能性がある」としている。

◇ 治療開始2〜3カ月目から効果発現
 永倉氏によると,2014年10月〜15年のスギ花粉シーズンまでの有害事象は19%だが軽度で,治療を要するものはなかった。2015年の花粉シーズン後においては特になかった。
 2015年6月に,治療開始1年目の効果に関するアンケートを実施した。対象は,同クリニックで2014年8月〜15年1月にSLITを開始した115例(男性60例,女性55例,年齢12〜76歳,最年長は男性73歳,女性76歳)。その結果,服薬継続率は75%であった。服薬継続例における完全継続率は平均95%で100%の症例も多かった。服薬時刻は,クリニックが対応できる日中を勧めていることもあり,「朝食前」が48%,「朝食後」が35%と多く見られた。
 SLITの治療効果は高く,日本アレルギー性鼻炎標準QOL調査票で見たQOLの自己評価は「晴れ晴れ」18%,「笑顔」45%,「普通」28%で,前年の花粉シーズンと比べた2015年シーズンの成績も良好であった。早ければ開始後2〜3カ月目から効果が現れる可能性があるという。
 また,免疫療法により特異的IgE抗体は,
①治療開始後数カ月から増加
②治療開始後,一時増加した後で減少する
--などが知られている。そこで,アンケート対象のうち65例の免疫学的変化を検証した。その結果,スギ花粉特異的IgE抗体価は,SLIT開始時には著明に上昇,最高のクラス6(100UA/mL以上)判定が約3分の1に認められた。しかし,花粉飛散期前に上昇した特異的IgE抗体価はシーズンに入ると低下した。
 同氏は「SLIT開始初期はアレルゲンの増量により特異的IgE抗体の産生を増加させ,その後,減少するよう免疫応答が変化したためではないか」と考察した。

◇ アドヒアランスの維持が重要
永倉氏 スギ花粉症に対するSLITの治療効果は皮下免疫療法とほぼ同等で60〜70%といわれるが,用賀アレルギークリニック(東京都)院長の永倉俊和氏によると,同クリニックの有効率は成人,小児とも高かったという。治療効果を高める鍵はアドヒアランスの維持であるとしている。

◇ 30日以内の処方を基本に
 2014年10月にSLITが臨床導入されて以降,同クリニックで治療を開始した症例は成人160例,小児30例である。治療途中の脱落例は,成人では10%,小児では3%。それらを除いた症例の今年2月時点の治療効果は,成人では著効50%,有効30%,やや有効15%,小児ではそれぞれ60%,20%,10%であった。
 治療効果を高めるポイントとして,永倉氏はアドヒアランスの維持と,そのための患者教育の重要性を強調。「SLITを開始しても,長期間にわたって毎日の服用を継続できないのでは意味がない。患者への事前説明で,特にSLITの仕組みについて時間をかけて,正しく理解してもらうよう努めている」と言う。自ら作製したスギ花粉症対策に関するビデオを患者に見てもらうことも実施している。
 患者への適切なフォローアップも重要である。中には,数カ月もすると,治療開始時に説明したことを忘れてしまう患者がいる。再診時には治療経過を確認するだけでなく,適宜説明を繰り返すようにしている。
 SLITによる副作用をチェックするため,同氏は30日処方を基本とする。「生活習慣病の内服薬は60〜90日処方なのに,なぜ30日処方なのか」と不満の声もあるが,小児例では保護者が監視するので治療を継続させやすい。
 こうした対策を行っても,花粉シーズンが終わると受診しなくなり,そのまま治療中断に至る患者が一部存在する。思春期の患者で治療継続を面倒がって中断するケースが少なからずあり,今後の課題である。
 また,最近は小児のスギ花粉症が急増しているが,現在のところSLITの対象年齢は12歳以上に限られる。同氏は「保護者から,小児に対するSLITについて聞かれることが多い。できれば,幼児から実施できるようになってほしい」と期待する。

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「舌下免疫療法で重篤な副反応はなし」

2015年05月26日 04時31分58秒 | 花粉症
 昨年秋解禁になったスギ花粉症舌下免疫療法。
 実際に行った症例報告が第116回日本耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会でなされ、頻度は多いけど治療を中止するほど重篤なものはなく安全な方法であることが示されました。

 興味深かったのは、胃腸症状が出た際は飲み込み法から吐き出し方へ変更することによって解決したということ。
 食物アレルギーの急速減感作療法を行う小児科医からは、治療中の胃腸症状が好酸球性胃腸炎に繋がる例が報告されており、スギ花粉症舌下免疫療法の講習を受けた際に「飲み込み法」が採用されたことに違和感を覚えた私です。
 この情報をもっと啓蒙していただきたいですね。

■ 舌下免疫療法で重篤な副反応はなし ゆたクリニックからスギ花粉症207例の実臨床経過を報告
[2015年5月25日:MTProより]
 スギ花粉症に対する舌下免疫療法(SLIT)は,昨年10月に実臨床に導入された。ただし,副反応の懸念からSLITを躊躇する医師は少なくない。ゆたクリニック(三重県津市)は,花粉飛散期の今年3月末まで観察できた207例の経過を検討したところ,副反応の頻度は口腔内・喉の症状,鼻症状,耳の症状などを中心に頻度は約4割であったが,大半は重篤でなく,1カ月以内に消失していたことを報告した。今回の検討結果は,SLITの導入開始から今春の花粉シーズンにおける経過などを,いち早く発表した実臨床報告として注目されるものである。

舌のぴりぴり感,口腔内の痒みが多く,舌下後数分~数時間で消失
 同クリニックでは,SLITを導入したスギ花粉症患者には,症状や自宅におけるSLIT施行状況,副反応に関する舌下免疫療法の最新問診票に記載してもらい,再診時に医師が口頭で確認することにしている。
 今回,同問診票からSLITのスギ花粉アレルゲンエキス増量期,維持期,花粉飛散期における副反応の詳細を明らかにして今後の対応を探ることを目的に,承認された昨年10月以降にSLITを導入した207例を対象に今年3月末までの経過を検討した。その結果,副反応報告は207例中84例(40.5%)から寄せられ,
・口腔内・喉の症状は207例中56例(27.1%),
・鼻症状は29例(14.0%),
・耳の症状(痒み)は20例(9.7%),
・眼の症状は14例(6.8%,そのうち眼の痒みは13例)
などであった。
 口腔内・喉の症状で特徴的であったのは,
・舌のぴりぴり感22例(10.6%),
・口腔内・喉の痒み17例(8.2%),
・口腔内・喉の違和感15例(7.2%),
・舌下の腫れ12例(6.0%)など,
 鼻症状では
・鼻水(鼻汁)19例(9.2%),
・くしゃみ13例(6.3%),
・鼻閉7例(3.4%)
 などであった。その他では,胃腸障害が7例(3.4%)であった。
 これらの副反応のほとんどはWorld Allergy Organization(WAO)分類ではgrade1であった(ただし,症状的にはgrade1だが,患者の自己判断で抗ヒスタミン薬を服用した症例が数例あり,分類上はgrade2となるため)。舌下後,数分~数時間で消失していた。
 SLITのスギ花粉アレルゲンエキス増量期は207例中52例(25.0%),維持期は61例(29.3%)と頻度は高いが,花粉飛散期は4例(2.5%)は低かった。増量期で10例以上の報告があった副反応は,舌のぴりぴり感15例,鼻水17例,くしゃみ11例,維持期では口腔内・喉の痒みと舌下の腫れがそれぞれ13例,まぶたの腫れ10例であった。

腫れ継続例には抗ヒスタミン薬内服,胃腸症状には吐き出し法を指示
 副反応の出現期間別に分析した結果,83.3%が1カ月以内(1週間以内34.5%,1~2週間未満25.0%,2週間~1カ月未満23.8%)に消失していることが分かった。副反応が2カ月以上継続したのは5例で,症状は喉の違和感や痒み,口の痒み,胃腸症状であった。また,年齢,スギ花粉特異的IgE抗体,服用率では副反応の有無に有意差はなかった。
 以上から,副反応に対する同クリニックの方針は,舌下や口腔内,下口唇の腫れに対しては,
①腫れが30分以内の場合は経過観察
②腫れが継続する場合は抗ヒスタミン薬内服
-としており,現在は全例で消失している。また,胃腸症状に対しては飲み込み法から吐き出し法に変更したことで改善または消失に至っている。
 最後に,小川氏は「同クリニックにおける副反応報告は,添付文書に記載されている頻度よりも高かったが,重篤なものはなく,アレルゲンエキス量が多い海外の副反応報告よりも少なかった」と述べた。

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東国原英夫氏、花粉症産業の裏事情を暴露

2015年04月07日 22時14分14秒 | 花粉症
 花粉を飛ばし続けるスギがなぜなくならないのか、以前から不思議に思ってきました。

■ 「花粉症は環境問題である」(2008-09-02の当ブログ)

 それに答える内容を、TVタックル(春から深夜帯?)で東国原氏が言ってくれました。
 「やっぱりそうだったのか!」と喉のつかえが取れた私。
 裏事情の一端が垣間見えた瞬間でした;

東国原英夫氏、花粉症産業の裏事情を暴露「対策しようとすると圧力がかかる」
(ライブドア・ニュース:2015年4月7日)
 2015年4月6日放送の「ビートたけしのTVタックル」(テレビ朝日系)で、元衆議院議員の東国原英夫氏が、花粉症産業の裏事情を暴露した。
 番組では、花粉症の原因である「スギ植林」を取り上げた。戦時中、資材を必要とした国は大量の木を伐採し、その結果、樹木のない丸裸の山だけが残ってしまった。そこで戦後、政府は「成長が早い」「まっすぐな材木が採れる」という理由から、スギを大量に植林し、現在も34億円もの税金を使って、毎年1500万本のスギを植えている。
 VTR後、参議院議員の山田太郎氏は「スギは植えても良いことなんてひとつもない」と主張し、スギをすべて伐採することを訴えた。すると東国原氏は「木材自給率がゼロになってしまう」と山田氏の意見にストップをかけたのだ。
 東国原氏が知事を務めていた宮崎県は、23年連続でスギ丸太の生産量が日本一。東国原氏も、知事時代に宮崎県のスギを猛アピールしていたという。
 東国原氏は、花粉症に悩んでいる国民の声を聞こうとしないと指摘されると、「改善はしていこうという努力はしてます」と弁解しながら、「言わせてもらいますけど。花粉症の産業で儲かっている人もいらっしゃいますからね」と切り出した。
 東国原氏の発言に、阿川佐和子は「花粉症になったほうが経済効果があるってことですか?」と驚きの声をあげ、スタジオもざわつき始めた。
 東国原氏は「誤解のないように言っておきますよ」と前置きしたうえで、「花粉がないように植林しましょうとか言うと、ウラで圧力がかかるんですよ」と、花粉症産業の裏事情をぶっちゃけたのだ。
 山田氏から「(圧力に)負けなきゃいいじゃん」とツッコミを受けると、東国原氏は「負けたからここにいるんですよ」と切り返して笑いを誘った。
 一方で、スギ植林肯定派である自民党参議院議員の山田俊男氏は、「いやいや、(圧力は)一切かかってない」と東国原氏の発言をキッパリと否定。「スギを植えなければ山が崩れる」「スギは日本の木造建築に適している」と主張し、議論は最後まで平行線をたどった。


 「山が崩れないために」植林するなら、広葉樹の方が適しているはず。
 ならば「なぜスギを植えるのか?」の理由は言わずもがな、ですねえ。
 ひとの弱み(花粉症という病気)につけ込むシステムが国全体に覆い被さっている、日本。
 ヤレヤレ…。
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「舌下免疫療法がわかる本」(大久保 公裕 著)

2015年01月31日 08時13分29秒 | 花粉症
日本経済新聞出版社、2014年発行
副題:花粉症は治せる!

話題の「スギ花粉症舌下免疫療法」を扱った本です。
著者はこの治療法のご意見番の一人、大久保先生(日本医科大学耳鼻科教授)です。

一読して舌下免疫療法の基本的なことを一通り知りたい方には、よい内容だと思いました。
新書版で量もそこそこなのでお勧めです。

医師の私が興味深く読んだのは、
・舌下免疫療法が効かない人には理由がある(「鼻過敏症」が多い)
・「鼻うがい」の具体的方法
・なぜ「舌下」免疫療法なのか
・スギ花粉症は100年後にはなくなってしまう
などの項目でした。

<メモ>
自分自身のための備忘録。

■ スギ花粉症の治療満足度は40%しかない。
 その一因は、花粉症の持つ「多様性」。

■ 花粉症患者の「モーニングアタック」
 花粉症患者では、朝起きた時に立て続けにくしゃみが出て鼻水が止まらない「モーニングアタック」という症状が出る人もいる。しかし、夜間布団に入っている時には花粉をそれほど吸い込んでいないはず。
 こうした患者の多くは、さまざまな刺激に鼻の粘膜が過敏に反応してしまう「鼻過敏症」(過敏性非感染性の鼻炎)を併せ持っていることがわかってきた。症状は花粉症と同じだが、アレルギーとは別のメカニズムで起こっている。以下のものがある;
血管運動性鼻炎:毛細血管の拡張/収縮運動を支配している自律神経、特に副交感神経の働きが異常をきたすことによる
味覚性鼻炎:熱々のラーメンやスパイスの効いたカレーなど刺激の強い物を食べた時に鼻水が出る
冷気吸入性鼻炎:スキー場など寒い場所を訪れた時に鼻がムズムズする
乾燥性鼻炎:エアコンや暖房などで部屋の湿度がカラカラに低下した時に起こる

■ 「鼻サイクル」(鼻づまりは左右の鼻で片方ずつ起こる)
 鼻閉の軽症の段階では、左右の鼻で片方ずつ起こる傾向がある。これは「鼻サイクル」という現象で、自律神経の働きによって自然と左右交互の鼻の粘膜が腫れるため。両方の鼻が詰まって呼吸に支障をきたさないようにするために体に備わった働きといえる。

■ 「鼻うがい」の方法
 「鼻うがい」とは、鼻の中に入った花粉などを刺激の少ない温めた「生理食塩水」で洗い流す方法。
・使用する水は「生理食塩水」:
 水道水は刺激が強く鼻症状を悪化させる場合があるので、生理食塩水(500mlの湯冷ましに、小さじすり切り1杯弱の食塩を溶かす)がお勧め。生理食塩水は鼻の粘膜にやさしく、しみることがない。
・生理食塩水の温度は20~30℃が適切:
 温かすぎても冷たすぎても鼻の刺激になる。
・うがいの方法:
 まず生理食塩水をペットボトルなどの口までいっぱいに注ぎ、片方の鼻の穴にあてる。そして、リラックスした状態で「あー」という声を出しながら鼻に注ぎ込むと、生理食塩水が自然に喉へと流れていく。もう一方の穴にも注ぐ。その後、軽く鼻をかむとスッキリする。
・洗いすぎに注意
 1日に数回程度で止めておく。やり過ぎると症状を悪化させるため。

■ 花粉法に対する免疫療法の歴史
枯草熱(hay fever):1870年代にイネ科の花粉が枯草熱の原因の一つであることが科学的に証明された。イギリスの医師ヌーン(L. Noon)は1911年に「枯草熱に対する予防接種」という論文を発表し、イネ科植物の花粉をすり潰したエキスを注射することで症状を緩和することができたと報告した。
◇ 日本でも1969年にスギのエキスが発売され、イネ科植物やブタクサの仲間による花粉症およびハウスダストなどが原因で起こるアレルギー性鼻炎などの病気に免疫療法を用いることが始まった。
◇ 日本医科大学による研究:這うし出す都による通年性アレルギー性鼻炎患者では、やがて花粉症を発症することが多いが、ハウスダストに対する免疫療法を行った患者では、花粉症を発症する割合が非常に少なくなることがわかった。

■ 舌下免疫療法の効果
 花粉症の症状がなくなったり、大幅に症状が軽減したという患者が80%、全く効果が得られなかった人は10%以下。
 これまで治療手段の少なかった重症の患者でも、舌下免疫療法を行うことで、症状の悪化を一定の段階で頭打ちにする効果がある。くしゃみ、鼻水などの症状がある程度出はじめても、治療前と比べて、季節中にどんどん悪化してしまうことが少なくなる。
 効果が得られなかったケースは、そもそも効果の得られにくいタイプの患者(前出の「鼻過敏症」)であった可能性が高いことがわかってきた。
 この治療法は、主にスギ花粉に特異的に反応が強い人に対する治療である。

■ スギ花粉を過量内服すると・・・
 2007年に、スギの若い雄花を採取し、粉砕加工してカプセルに詰めた健康食品を食べた40台の女性が、呼吸困難などのアナフィラキシーショックを起こし、一時重体になった。「たくさん使用したら早く効果が現れるのでは」などと自己判断で誤った使用法は厳禁である。
スギ花粉入りカプセル服用後にアナフィラキシーショックを呈した症例
厚生労働省と和歌山県が花粉加工食品との関連が疑われる健康被害事例を公表
都道府県等から報告されたいわゆる健康食品に係る健康被害事例について

■ スギ花粉症は100年後になくなる?
 世界の花粉症の多くは自然の植生が原因で起こっており、日本のスギ花粉症のような植林による花粉症は医学的にも非常に珍しいケースである。
 現在、原因となるスギ林は、国や地方自治体によって、すでに植林が中止されるなど調整され始めている。
 少なくとも2050年頃までは、スギ花粉の飛散量は増加し続けるが、2050年をピークに少しずつ花粉飛散量は減少し、その70年後、つまり今から100年後にはほとんどなくなると専門家は推測している。
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